十三話 『大切な仲間たち』
「ほな、さっさとギルドの方に戻らなあかんわ。あのすまし野郎の顔が見てみたいわ」
「OK!」
「ん、すぐ戻る」
「お前……体よ」
「こんなん掠り傷や。治癒してもろたし全然大丈夫やで」
心配するなって意味で言ったんだと思うんだが、俺の渾身の一撃を掠り傷扱いか……複雑な気分だ。
★ ★ ★
「今戻ったで」
「ああ、戻ってきたのかラルフ」
「えらい怖い顔してんなぁ。女の子たち逃げてってまうで」
「うっさい、余計なお世話だ」
「はいはい」
なんで着いた瞬間に喧嘩してんだこの二人は。しすぎだろ。
「あ!アーロン君じゃないか!試合見たけど凄かったね!あのー、そこで折り入って話があるんだけど……」
「何だ?」
「あの、さっき断っておいて何だけど、僕のパーティーに入らないかい?ラルフのパーティーよりずっと楽しくて、危険じゃなくて、女の子たちもいっぱいいるよ!ぜひ!」
「…………」
絶句してしまった。これが勇者?人間の未来終わってね?ちょっといくら何でもわがまますぎんだろ。ラルフの方を見ると絶句はしているが俺を止めはしない。俺の判断に任せるってことか。
でも……奥で残りの二人が『殴れ!』みたいなジェスチャーしてる。これは……従うしかないじゃん!
「『ゼログラビティ』……『ヘビリティ』」
鉄球ほどじゃないが、重くして――
「ぶわっ!?」
勇者の顔面を殴り飛ばす。ははっ。つい笑顔に。これじゃあサイコパスみたいじゃないか。でもあの3人はもっと爆笑してる。
「お前、よくも――」
「一つ、俺は恋愛しに冒険者になってない」
「あのさ――」
「二つ、俺は逆に危険な方がいい」
「話を――」
「三つ、お前と一緒で楽しめるとは思えない」
「このっ――」
「四つ!一度煽られながら断られたパーティーにはいそうですかと入るわけねぇだろ!こっちのパーティー見習いやがれ!」
3人は腹抱えて大爆笑してんだが。俺も笑いながら踵を返してあいつらの方へ。勇者はもう追いかけてこなかった。
★ ★ ★
「ほなアーロン君があいつのパーティーを派手に断ってきたとこやし、まずはちょっとした歓迎会と自己紹介やな。ここのもんなんでも頼んでええで!奢るわ!」
ギルドでは飲食ができる。半酒場だが、俺みたいな未成年はジュースも飲める。
「じゃ、頼むわリーダー。俺は安定のオレンジジュースと……この謎肉ってやつ頼む。」
「私も奢ってもらえるんですカ?」
「俺は?」
「ん~ええで!俺のお財布大解放や!」
「Thank you!」
「ありがと」
頼んだ料理が運ばれてくる。オレンジジュースは普通なのに、なにこれ。謎肉ってホントに何なの?興味本位で頼んだが失敗だったな。……なんで緑色なんだよ、肉だろ?
「謎肉言うのはギルドに今日入ってきた魔物の肉のことや。旨い日もあるが今日は……ハズレやな」
「ハズレなのかよ!」
「じゃあ皆自己紹介からやな。じゃあまずは俺からや!俺の名前はラルフ・ランド!出身はオランタリア共和国で魔法は光属性の、光の速さで物を動かせる魔法や!よろしく頼むで!」
光の速さか、通りで見えないかったわけだ。あれ?でも……。
「光の速さで投げたら死ぬんじゃないか?」
「いやいや、あくまで速さだけやねん。威力は俺が投げたのと一緒。簡単に言うと時間短縮ってことやな」
「なるほどな。あと属性ってなんだ?」
「便宜上分けられるもんを分けてんねん。重力魔法は無属性やな」
「サンキュ。次は……」
「私でス!My name isアリス・ベルモット。I’m fromユナイト英国、and……魔法はCollect、収集でス!Nice to meet you!」
「英国だから英語か……なるほど理解した。というか収集ってなんだ?」
「収集って言うのはですネ、他人の魔法を見たら自分のものにできるんでス」
え!それめっちゃ強くね!?
「But、その魔法の最底辺しか使えないんでス。火属性だったら炎弾ぐらいしかつかえませン」
「なるほどなぁー」
「次は俺だね。俺の名前はシン、ただのシン。出身は帝国で魔法は隠密……気配を隠すやつ。よろしく」
「おう、よろしく」
めっちゃ影が薄いのは隠密と関係あんのかな。
「ほな、あとはアーロン君やな」
「ああ、俺の名前はアーロン、ただのアーロンだ。出身は帝国で、魔法は重力魔法、重力を操る。よろしく!」
「「「よろしく!」」」
今思ったけど俺とシンの自己紹介の共通点がかなり多いな。似せたわけじゃないけど。
「じゃあ今日はこのままで明日から冒険者としての仕事やな。まずはパーティーランクをCに上げることが先決や。全員Dやからな」
「分かった」
「OK」
「了解」
「最終的に俺らは迷宮に潜るで。そのために王国に来てん。Cにならんと迷宮に入られへんからな。」
「迷宮にはなんかあんのか?」
「別にないけど迷宮に行ったら生死のやり取りやからな、強なるで」
「このパーティーの目的はなんだ?S級になることか?」
「ちゃうちゃう。最高のパーティーになって、勇者しか倒されへんゆーてる魔王を倒すことや!やから名前はオーサムベスト!」
「魔王を倒すの楽しみでス!」
「あの勇者の鼻っ柱折ろうよ」
こいつらは、本気で魔王を倒そうと思ってるのか。伝説が間違ってると、証明するつもりなのか。
馬鹿でしかないと思う。100人に聞いたら99人無理っていうだろ、でもやろうとするこいつらは……その残りの1人の集まりか。
面白そうって思う俺も、どうやら残りの1人みたいだな。




