十一話 『重力魔法の現実』
お金の件を補足します。銅貨100円、銀貨1000円、金貨1万円、レアコイン10万円、です、日本に例えると。
「お~、ここがギルドか!」
レンガ造りの3階建ての建物で、いかにもな重厚感を醸し出している。
「おい、そこどけ」
「ん? あぁ?」
いかつい冒険者に無理やり扉の横にどかされた。いかにも冒険者って感じだな。
「取り敢えず入りますか」
ドアを開けて中に入る。中は大きなホールになっていて、天井にはシャンデリアが付いているような高級感のある、ホテルのようだった。すごーー!
まず冒険者登録をするために受付に向かう。できるだけきれいなお姉さん……そんな欲望などないぞ! 俺には!
「こんにちは、あるいはこんばんは、王都の冒険者ギルドです! 今日はどんな御用でしょうか?」
「……すみません、その挨拶に突っ込んでいいですか?」
「ギルドの伝統的な挨拶です。最初に聞いた方によく突っ込まれますね」
「そういうもんなんですか。あ、今日は冒険者の登録をするために来んですが、できますか?」
「はい、分かりました。ではですね~」
受付のテーブルの下から何かを取り出す。板のようなものだ。
「はい、これはアビリティプレートというものです。ここにはあなたの情報が書かれていて、身分証明書にもなります。ここに血印を押してください」
「分かりました」
貰った針で指の先をチクッと刺し、血印を押す。なんかの契約みたいだな。
「はい、オーケーです。あなたは今この瞬間から冒険者になりました! おめでとうございます!」
「随分と簡単になれるんですね」
「冒険者はなってからが大変なんですよ。あ、ではでは次にランクの説明をしなければいけませんね」
「お願いします」
「まずですね、冒険者は5つのランクに分かれています。S、A、B、C、Dです。これは次のランクに上がれる実力だとギルドが判断した場合に昇格し、逆に降格もあり得ます」
「ほうほう」
「さらに魔獣にも同じランクが付けられており、例えば魔獣のA級と冒険者のA級が同じぐらいの強さです」
「ふんふん」
「あとはパーティーについてですが――」
「おう、門の後輩じゃねぇか! また会ったな!」
……誰?! 門……門……
「ああ! あの先輩もどきじゃねぇか!」
「もどきっていうなよ! 実際冒険者としての先輩じゃねぇか!」
「……不本意ながら確かに」
「だろ? じゃあ先輩としてこの美人のお姉さんに代わって俺がパーティーについての講義をしてやろうじゃねぇか」
「それ私の仕事なんですが!」
聞いてやれよ、先輩もどき。ガンスルーじゃねぇか。
「パーティーってのはチームだ! 説明終了!」
「早すぎますって!」
「大体分かった」
「あー、一つ言い忘れてたわ。俺と後輩はパーティーを組めねぇ。ランクが二つ以上違う奴らは組めねぇ決まりだ。あとパーティーランクは一番下の奴に合わせられる!」
「大丈夫だ。俺は先輩もどきとは組む気ないからな」
「ぐはっ!」
「辛辣ですねー」
「では、ご説明ありがとうございました」
「はい、頑張ってくださいね!」
「どういたしましてってやつだな!」
先輩もどきには言ってねぇんだが。これ言ったら泣かれるかもしれないから流石に言わないけど。まあ取り敢えず依頼より何より、まずは仲間を探すところからだな。
★ ★ ★
掲示板のところにパーティーメンバー募集の貼り紙がしてあるパーティーは何も貼ってないところより受け入れてもらえる可能性が高いらしい。良さそうなところから声かけてくか。
「あのー、すみません。掲示板でメンバー募集をしてたスターズってここですか?」
「ああ、そうだよ。あ! もしかして君ここ希望?!」
「あ、はい」
「おおっ! 皆、集まってー!」
「あぁ? こいつがウチに入りたいってやつか?」
「うん。君、魔法は?」
「重力魔法です」
「ブッ! クフフッ! じゅ、重力魔法って典型的なカス魔法じゃねぇか!」
「あー、ごめん、君。ウチはトップ目指してるから……無理だね」
「……はい」
「あの、掲示板に書いてあったトゥートップってここですよね?」
「うん、希望?」
「はい」
「君、魔法は?」
「重力魔法――」
「はい却下。帰ってください」
「ストロングスってここですか?」
「ああ?! 何だテメェ、ウチ希望か?!」
「そうですが」
「魔法――」
「重力魔法です」
「テメェウチ舐めてんのか! 遊びは砂場でやれ!」
計7件、全部魔法言った瞬間に断られたんだけど。は? どういうことだよ。お前らは俺じゃなくて魔法見て決めてんのか。あと残ってんのは……勇者パーティーぐらいじゃん。あ! ただ流石に勇者様なら俺を見てくれるよな、多分。
「すみません、勇者様ってあなたですよね?」
「え? 呼んだ?うん、勇者って言うのは僕のことだね。」
「掲示板でメンバー募集の貼り紙してあったの見たんですけど、俺をパーティーに入れてくれませんか?」
「なるほどなるほど。おーい、皆! いったん集まって!」
「「「はーい!」」」
ってこいつ……残りの三人全員若くてかわいい美少女揃えてんのかよ。ちょっと引くぞ。
「この人が僕たちのパーティーに入りたいって言ってるんだけどどう思う?」
「別にいいんじゃなーい? ライト君いれば最強だし~ぃ。」
「いや、強さを見極めるべきだと思う。」
「べ、別にライトに従うわけじゃないけど、ライトの決定は私のそれよ!」
何この空間……俺は恋愛アピールの出し物か。
「じゃあ皆、僕がこの人を面接して決めるよ。」
「ん~」
「異議なし」
「それでいいわ」
「じゃあ君、魔法は何だい?」
「重力魔法だな」
「ブフッ!」
「ッッ! ……失礼」
「ククックク」
「あはっ……ごめんっ、少し、取り乱したね」
何自分笑ってないアピールしながら爆笑してんだ。マジで感じ悪いな、どいつもこいつも。
「知ってるかい? 勇者って言うのは100年ごとに現れる魔王や、1000年ごとに現れる魔獣王を唯一討伐できる存在なんだよ。僕たちはそれを目指してる。だから、小金稼ぎや、遊びのためにやってるんじゃないんだよ。君のためにもはっきり言うとね、弱い人はいらないってことなんだ。いくら体が強くても魔法には勝てないからね」
「ああ、そうかよ」
「ごめん、論理的に説明したと思うんだけど。疑問があったら言って?」
「疑問じゃねぇ、事実を言うだけだ。……お前、いい人面してるけど言ってることさっき俺が断られた冒険者たちと一緒だからな? むしろ勘違いしてる分だけマイナスだ」
「あんたねぇ!」
「いいんだ、彼も自分が強いと思って冒険者になった、ちょっと勘違いしている負け犬の遠吠えだから」
こいつ、殺してやろうか。ここまで清々しいとむしろ驚嘆の意を表明するぞ。
「おいおい、勇者様、お前は昔から全然変わらへん、子供理論のままやなぁ」
踵を返そうとすると、ギルドの奥から奇妙なしゃべり方をする人を筆頭とした3人組が出てきた。
「……何の用だ、ラルフ」
「殺気なんていきなり出したらあかんで。乱暴やな」
「何の用だって聞いてるんだけど」
「んん~? 自分全然こいつのこと見てへんなー思て。こらいかなあかん、ってな」
「見てるんだが。その上で出した結論だ」
「ホンマに? じゃあ、こいつの名前言ってみーや。一回も聞いてへんやろ?」
めっちゃ煽るじゃん。
「……名前なんて関係ないだろ」
「めっちゃ関係あるで、なぁ?」
「Of course!」
なぜ謎言語!?
「そりゃあ、ね」
「ほら見い」
「だから何が――」
「Do youknow? ダイヤの原石は素人じゃ分かんないんですヨ?」
「せやから俺らが発掘しよ思てん。重要なのは魔法やなくて……強さやろ?」
「あのー、話が読めないんだが」
「取り敢えず流れに乗っときなよ。ラルフのこういうのは結局何とかいい感じになるから」
「え、えぇー」
こいつは影うっす!気配が全く感じ取れないんだが。
「自分名前は?」
「あ、俺? 俺の名前はアーロン、ただのアーロンだ。」
「ほな、ギルドの闘技場行くで。アーロン君は俺と模擬戦や」
「…………マジで? 何でそうなった?」




