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砂漠の国の雨降らし姫〜前世で処刑された魔法使いは農家の娘になりました〜【書籍発売中・コミック配信中】  作者: 守雨


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40 イゼベルさんの矜持(1)

「アレシア。そなたの力についてはマークスから聞いておおよそのところを理解した。文字通りの恵みの雨、癒やしの雨を降らせるが、自らそれを制御できるわけではないのだな?」


「はい、陛下。自由に降らせることはできません。ですが私はこの力でこの国の人々の役に立ちたいのです。なのでファリル王国に目をつけられているのなら守っていただきたいと願っております」


「アレシア、僕が昨夜のうちにヘルードとその護衛たちに尾行をつけた。彼らはもう簡単にはあの農園に近づけないはずだ。農園の周囲にも護衛たちを配置しよう。ヘルードたちがいる間は彼らが勝手な真似をしないようにする」


「では、もしですが、正式にファリルから私に関して何かしらの要望が出された場合はどうなるでしょうか。そのうち『雨』の存在以上のことを探り出されないとも限りません」


 イザヤル国王陛下がそれに答えた。


「そのことだが、現在ファリル王国側がどこまで君のことを知っているかだ。雨を降らせることだけなら、ファリルは水の豊かな国だ。雨もよく降る。君が自在に雨を降らせられないのであれば、それほど重要視されないだろう」


「ですが父上、もし雨に含まれる力のことを知られたら、アレシアを渡せと武力行使をチラつかせてくるかもしれません」

 

「問題はそこだが、今までその布の世話になった者たちの口から秘密が漏れる可能性は?」


 そこでイゼベルさんが初めて口を開いた。


「三年間は誰も秘密を喋らなかった、としか申し上げられません。そもそも私が絹を届けた者たちは、私の身元も絹布がどこで織られたかも知りません。アレシアの雨と絹布の因果関係を全員が全く知らないのでございます」


「イゼベル殿、それなら今後一番注意が必要なのは一人で絹布を持ち運んでいるあなただな。農園に通っているあなたを尾行すれば、あなたが訪問する家の人間が突然健康を取り戻したことも気づかれてしまうだろう。どうだ、一人暮らしならばしばらく王宮で暮らしては。一人暮らしの家に警護の者を配置するより目立たないし安全だろう」


「陛下、それはあまりに申し訳なさすぎます。それはご勘弁を」


 しかし両親も国王一家も皆が「それが一番安全で確実」と口を揃える。


 イゼベルさんは

「やめてくださいよ。とんでもない」

と繰り返し断った。だが「絹布を持って病人怪我人の所への訪問は今では生き甲斐だからやめたくない」と言う。


「絹布を持って訪問する際は平民に身なりを変えた護衛を付けよう。それ以外は安心して王宮で暮らすといい」

「たまには私の話し相手になってくださいな。絹布のことや市井で見聞きした事などを聞かせてもらいたいわ」


 国王夫婦が息の合った会話で話をまとめてしまい、イゼベルさんの王宮暮らしは決定しそうに思えた。しかしイゼベルさんは断固とした強い調子でその提案を断った。


「大変恐縮ではございますが、それはお断り申し上げます」

「イゼベルさん!」


 思わず私が問い詰めるような声で名を呼んでしまった。


「イゼベルさん、あなたがいなかったら絹布を運ぶ人がいなくなってしまうわ。イゼベルさんのように相手に疑われずに布を使わせてもらうにはハキームじゃ無理だし、私たちじゃ絹の出どころを知られてしまう。絹を運ぶ時以外は王宮で守っていただいた方が安全よ」


 私の声にイゼベルさんがほんのり苦く笑った。


「こんな年寄りの膝を治してもらったお礼にと始めたことだけどね、王家のお世話になるのは辞退いたします。私にも守らねばならない矜持がございますので」


「しかしイゼベル殿、我が王家は我が国の国民を守る義務がある。そなたが運ぶ絹布の価値を知れば、ファリル王国の者がそなたを狙うことは十分にあり得るぞ?」


「もし狙われて絹の出所を教えろと責められたら、私の覚悟を見せてやりましょう。命と引き換えにしても絹の秘密は守ります。ですからどうぞご安心くださいまし」


「イゼベルさん、どうしてそこまで嫌がるんですか?王宮の中でも気楽な身分の人たちの住む区域に部屋を用意していただけばいいじゃないですか」


「アレシア。そうはいかない事情があるのさ。私がここで我が身可愛さに陛下のお世話になったら、ファリル王国で死んだ旦那と息子に申し訳が立たないからね」


 黙ってやりとりを聞いていたマークス王子殿下がそれを聞き咎めた。


「イゼベル殿、あなたの夫と息子の過去に我が王家が関係していると言うことか?」


 イゼベルさんは真っ直ぐマークス王子殿下の顔を見て「はい」と答えた後、無表情なまま目を逸らして言葉を続けた。


「不敬と(とが)められることを承知で申し上げます。殿下のお爺さま、先代の国王陛下が私の夫と息子をファリルへの捧げ物として送り届けたのでございます。そしてファリルで使い潰されて夫と息子は死にました。残された私はこの国の役人から『お前の夫と息子は役目の途中で脱走した役立たず』と罵られました」

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書籍『砂漠の国の雨降らし姫1・2巻』
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