表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

受付帖3

作者: 神野さくらんぼ

キッチンの引き出しを開ける。


そこには、ナフキン、栓抜き、箸置き、コースターなどがシンデレラフィットしたニトリの小分けボックスにお行儀よく並んでいる。


1番手前の輪ゴム置き場の隣に場違いな物が綺麗に収まっていた。

そこにあるべきではないシャウエッセンが。


二度見ならず三度見をしてようやくシャウエッセンと理解したほどだ。

そこですかさず写真をとり、グループLINEに報告する!


みて!こんなところにシャウエッセン!


すると我も我もと犯した罪の自慢大会が始まる。


今回の優勝者は、お味噌汁の鍋の蓋を開けたらお椀が浮いていたという大罪を持っていた晴子に決定した!


一緒に老化する友人ってありがたい。


保冷されていなかったシャウエッセンに謝罪しながらゴミ袋に入れ、さらにいくつかの袋を大きなビニール袋にまとめてきっちりと結ぶ。


今日は週に2回の燃えるゴミの日だ。

ゴミを出しつつパート先に向かう、滝沢みさき45歳。


***********************


本日のお客様

小田切様


40代男性お一人様


息子さんとの二人暮らし用の戸建てをご希望


作務衣に草履、タオルをおでこの辺りに巻いている。

普段受付の私たちとお客様が会話をすることはほぼないが、彼はしきりに話しかけてくる。


ショウルームにはいくつかの絵画が書かられているのだが、一枚の絵の前で腕を組み


なつかしいなぁ。


と割と大きな声でつぶやく


そこでもう一人の事務員武田さんが


絵を描かれていたんですか?


と愛想良く相槌をうつ。彼女は人と話すのが好きなタイプで彼もいつも武田さんの方に向かって話している。


いや、まったく。


絵を見たまま笑うでもなく真顔で答える。


・・・・。


流石の武田さんも次に繋げる言葉が見つからず

仕事にもどった。


そんな小田切様は、息子さんの意見がとても重要のようで

事あるごとに、俺はいいけど息子がなんと言うか…

と営業を困らせている。


一度書類上で仮契約を交わしたものの、翌日になって息子さんの反対のため流れた事もあった。


ようやく親子の意見が一致したところで、今度は小田切様の姉の意見が合わないとの事でなかなか話がすすまない。


その度にお店に訪れて色々な話をして帰る。


そう。彼は家を買いに来るというより、不動産屋に交流をしに来ていたのだ。


そう判明した時、なんだかとても愛おしく思えた。


不動産屋は家を買うだけの場所ではなかったのだ!


良いおうちが見つかりますように…

それまで何度でもご来店お待ちしています。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ