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第9話:彼女

ふと気付くと4年の月日が流れていた。

時が経つのは早い。こうやってお年寄りとなるのだろう。

だが、そんなことどうでもいい。

ただ今だけは私はストーリーを紡ぎたいと思う。

「んで、いつまで付いて来る気だ?」


 学校から出て三十分ほど経っただろうか。


 日は暮れ、見渡す限り暗い帰り道を歩いていた俺は電灯の真下で立ち止まり、クルリと後方へと向きを変える。


 数メートル先からコツコツと靴の音が聞こえてくる。


 次第に音が近づき、ふと止まる。


 数秒間の沈黙が訪れる。


 突然、沈黙が破られた。






「舞ちゃぁぁぁぁあああん、大好きなお兄ちゃんだよ!!!」


「誰が大好きなお兄ちゃんだ!?このロリコン変質者がぁぁぁ!!」


 兄貴(要注意危険人物)に力の限り拳を繰り出した。


 見事に顔面へと拳がめり込み、そして、ゴミ捨て場に頭から突っ込む。


 なんとも言えない絵面となった。


 俺は苦笑いを覚え、もう一度先程の場所を見る。


 電柱の近くで蹲っている人がいる。


 ハァと溜息を吐きつつも傍へと近寄る。


「ほらよ……えっーと、キミーツ」


 ガタガタと震える少女に手を差し出す。


「バカ……でも、ありがとう」


 手を握り締めてくる手は小さくて、少し力を入れると壊れてしまうのではないかという程に繊細に思えた。


 朝の経験を生かしてある程度力をセーブして引っ張る。


 だがどういうことか、少女は俺に寄りかかるような形となる。


 少女が自分の胸の中に顔を埋めている。


 ヤバイ、心臓の音が高鳴る。顔も真っ赤であろう。


 思わず少女から一瞬眼を離すが、スッとまた眼を戻す。


 眼が合った。


 少女は頬を紅く染めている。


 そして、静かに眼を閉じた。


 えっ!?マ、マジで!?いや、ゴミが入った……なんてことはありませんよね~。


 動揺が止まらない。あらゆるものを考えては否定して、幾度も考え尽くし頭が爆発した。


 これまで生きてきてここまで脈の速さが倍速したことはない。


 だが、覚悟を決める時が来たのだ。


 男として。そう男として。日本男児として。


 自分も静かに目を閉じようとした瞬間。


「お兄ちゃん、お帰り~。遅かったね~」


 声がした。それも妹の舞である。


 咄嗟にお互いが距離をとる。


「あ、あぁ、ただいま。そそそ、そっか。家の真ん前だったんだな。アハハ」


 乾いた笑いとともに顔が引きつる。


 舞は首を傾げる。


 少女はというと。


「チッ、計画が失敗した。調整が必要か」


 ……聞かなかったことにしておこう。


 いや、きっと気のせいだ。最近は空耳が聞こえて敵わない。そう…ただの……思い込み。


 舞をジト眼で見つめる少女に対して、眼が点になっている舞。


「えっーと、どちら様ですか?」


「あー、そうだった。えっーと……」


「彼女です」


 キッパリと言い切るコッカー・キミーツ。


「えっ!?そ、そうだったんですか!!これは失礼いたしました!!どうぞどうぞ中へお入りください」


「苦しゅうない」


 舞が殿様まがいの不審者を中へと通す。


 って、俺は何をボーと突っ立ているのだ。


 名前すら知らない彼女…じゃなくて、どこぞ馬の骨とも分からない女を通すなんて。


「ちょっ、待って」


 バタン。扉が閉まった。


 えー、置いてけぼりって……マジで?


 カシャ。


 えー、今鍵閉めたよね。完璧に閉めたよね。お兄ちゃんが入ってこないように閉めたよね。いつもだったら、鍵閉めないのを知ってるよ。舞が鍵を閉めたのを初めて見たよ。もう泣きたい。


「ならば俺と共に泣こうぞ。弟よ!!!」


「うるっせぇぇえええ!!!」


 いつの間にか復活した兄貴を蹴り飛ばした。


 奇遇にも偶々通り掛かった野犬の群れに兄貴が飛ぶ込む形になる。


 案の定、野犬達は兄貴に襲い掛かった。


 今宵は綺麗な満月に星に悲鳴がある。


 平和っていいな。


 そういえば名前すら知らない子と俺は何をしていたんだ。


 急に先程の出来事がフラッシュバックしてきて、紅かった顔がさらに濃く色が浮き上がる。


「でも、おしかったな」


「何がおしかったのかな?クロト」


 ビクッと体が反応した俺は声がした方に振り返る。


 いつの間にやら我が家の玄関が開いており、隙間からキミーツが顔を出していた。


 顔がにやけており頬が紅い。


「なんでもない!!」


 キミーツの顔を見ずに玄関の扉を開く。


 横を通りすぎた時、甘い匂いがした。


 その瞬間、自分の頬に何かが触れる。


「えっ?」


 彼女の方へと振り向く。


 顔が近い。


「……作戦成功」


 彼女は笑った。


 その天使とも悪魔とも見える笑顔に俺は見惚れた。


 正直に言おう。


 俺は少女に不覚にも惚れてしまった。

いつになるであろうか分からない終わりを求めて私は彷徨う。

それが駄作であることを知っていても私は歩く。

価値がないと言われようとも私は歩く。

それが一つの世界を創りだした者の使命だと思うから。

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