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第7話:夕空


気付いたら、時間が経っていた。

これは宇宙外生命体の仕業に違いない。

そう思いたい作者であった。

 真っ暗な道に俺はいた。


 歩こうともせず、かといって退くこともない。単に突っ立ってるだけ。


 静かに道を眺める。


 下から前方に続く道を順次に見てみると、前方の少し先のほうで道が途切れていた。


 そして、奥には闇しか見えない。真っ黒な闇だ。


 何もかも飲み込むような、そうブラックホールとでも言おうか。


 それに近いものがそこにはあった。


 後方を振り返る。一本道が続いていた。なんの歪みも見られない。


 目を細め、軽く唇を噛む。口の端からは赤く染まった液体が流れた。


 俺はまた前方を向く。


 一歩、前へ進む。


 そして、一歩、一歩、鉛のような足を進め始めた。


 だが、幾度となく歩き続けても、道が途切れる所にはたどり着けなかった。


 近づくことさえも出来ていないようだ。


 諦めて足をまた止める。


 前方に見える闇を見た。


 近いように見えて実際は遠くにあるそれ。


 目に物体のような形は見られない。


 ただ、そこにあるものを俺は知っていた。


 それは―――――――――。








 頭に強い衝撃を受けた。


 ゆっくりと目を開ける。誰かの顔がアップで表示された。


「うおッ!?」


 一気に目を見開く。


 瞬間、もたれていた鉄柵に頭をぶつけった。


「……う…痛ぇ」


 俺は頭を摩りながら今の状況を確かめようと、周囲を見る。


 学校の屋上にいるのが分かる。


 寝ぼけている頭がぼんやりと働き出す。


 平宮実玖の弁当を食べた俺は、満腹感に酔いしれていた。


 そして、うとうとしていたのを覚えている。


 その後、俺は眠ったのだろう。


 簡単な仮説を立てる。


「それにしても」


 今も尚、顔を下げようともしない少女Aを見た。


 顔が目の前にある。


 それに近すぎてイマイチ顔の表所が読み取れない。


「誰だ、お前?というより以前に、下がってくれ。顔が近すぎてまともに話せん」


「おっと、これは失礼。君の寝顔がつい可愛くてね」


 後方に飛ぶように離れる。


「よっと」


 着地と同時に、フワリとスカートが揺れる。


「私は一年C組の小野田真おのだまこと。言っておくけど男じゃないよ?見た目通り、れっきとした女の子だから。よろしく」


 ニッコリと笑いエッヘンと胸を張る。


 いや、そんな自信満々に胸を張られてもな〜。


 一年C組、それは亜美と麻里、そして、平宮実玖と同じクラス。


 つまり、俺もまた一年C組だったりするわけだが。


「じゃあ、小野田。俺に何用だ?」


 そうなのだ。俺はコイツを知らない。なので相手も同じに違いないのだ。


 だが、初対面の奴が目の前に、それも俺の寝顔を見ていた。


 俺に何かがあった、と考える普通の反応だな。


「用?………別にこれといってないけど?」


 ………さいですか。


「それと私は苗字じゃなくて名前で呼んでいいから」


「じゃあ、何で起こしたんだ?真」


「起こした……あぁ、起こしたのは私じゃないよ。君を起こしたのはアレ。それともう一つ真ってのは止めて欲しいな〜。あだ名で呼んで」


 一々、注文の多い小野田真がひとさし指で何かを指す。


 ボールだった。ソフトで使うボール。それが屋上に落ちていた。


 俺は片手を地面について立ち上がり、まだ痛む頭を抑えながらボールに近づく。


 落ちていたボールを軽く持ち上げる。やはり、ただのボールだった。


 ボールをお手玉のように扱い、聞いてみる。


「これが俺に?」


「そう。まずボールがカキーンって打たれて、屋上にヒューってやってきて、君にドガーンとぶつかって、そんでコロコロと転がった」


 微妙な擬音と体でボールを表現する。


 これがまた微妙な出来なので俺は苦笑いを浮かべた。


「で、それで俺は起きたのか……マコ」


「うん、そうだけど……マコは気に入らない」


 起きた理由は分かった。だが、今度は何故コイツが目の前にいたのかが気がかりだ。


「じゃあ、何で意味も無く俺の顔を眺めていたんだ?」


「可愛かった、から?」


 ニッコリと笑うマコというあだ名が嫌な真。


 即答か。


「それと、たまに言う寝言が可愛さを何倍にして………」


「ストッゥゥゥゥゥプッ」


 さっきの俺の寝顔を思い出す真に、すぐさま止めに掛かる。


 何故か、口の端から涎のようなものが見え、ありもしない妄想を見ているかのようだった。


 これを野放しにしていると、何を言うか分からない。


 まぁ、現状を整理するか。


 寝顔を見ていて、顔の表情、寝言さえも知っている真。


 そこから見て、そんな数秒ってトコじゃないだろう。


 だから、もっと見ていたに違いわけで。少し羞恥が湧く。


 自分の顔が少し引きつるのを隠すように、ボールが飛んできたであろうグラウンドを見る。


 色々な部活が目に入る。陸上にソフトボール。他にサッカーやその他もろもろ。


 俺はこういうものを見ると柄にもなく「青春してるな〜」など思ってしまう。


 心はオジサンなのだろうか?ふと自分が思ったことに傷つく。


「ん?今って何時だ?」


 グラウンドよりも遠く、水平線に太陽が沈み掛けていることに気付く。


 空は夕暮れに染まっていた。


「エッ?えっと〜、五時過ぎだったかな?」


「………マジか?マコット」


「マジだよ……あと、マスコットみたいで、それヤダ」


 う〜ん、帰宅部として有り得ない時間帯にいるな、俺。


 それ以前に、夕方じゃねぇか。


 さっきまで青空が広がる昼だったというのに、時間を無駄にしたな、俺。


 確か、今日は昼を食べたら下校になっていたので、授業とかは大丈夫のはずだ。


 まぁ、別に良いか。暇だしな。


 何かが吹っ切れ、鉄柵に体を預けるようにして、外の風景を眺める。


 この頃、風景らしい風景を見ていなかった気がする。


 何故なら、目の前にこんなのにも綺麗だというのに、今まで見たことがなかったからだ。


 目のちょうど良い抱擁になる。口が思わず綻びた


「綺麗だな、シン」


「まぁね。私、芸術とかそういうもんには疎いけど分かる気がするよ。クロト」


 どうやらシンというあだ名を気に入ったらしい小野田真は、俺と同じような形で隣にいた。


 二人で静かに眺める。


 だが、その静かさをブチ壊す音が屋上に鳴り響く。屋上に行く扉が開いた音のようだ。


 俺達二人は屋上の扉を見る。一人、そこにはソフトのユニフォームを着た女子生徒がいた。


 急いで走ってきたのか、息が上がっていた。


 一旦、その女子生徒は周囲を見る。


 ここには俺達しかいなかった為か、こちらに向かって走ってきた。


「えっと、君!ここにボールが飛んでこなかった!?」


 俺に向かって喋りかける。


 一度、思考を巡らせた後、自分の手を見る。手にはボールが握られていた。


 今の今まで存在を忘れていた俺は本当にオジサンになってしまったのだろうか?と本気で心配した。


 俺達の前まで走ってきた女子生徒はハァハァと息を切らせ、前かがみになって膝に手をついた。


「ボールってこれのことか?」


 ボールを差し出す。


「あぁ、ありがとう……って、君、クロトじゃない?」


 ボールを受け取ろうとした女子生徒は俺を見てあだ名を言った。


 俺は首を軽く傾げる。


「誰?」


「ええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??あんなに愛してくれたのに!!」


「マジ!?」


「んなわけねぇだろ!!!今、初めて会っただろうが!!」


 思いっきりボケをかます女子生徒に、目をキラキラに輝かせ興味津々に聞くシン。俺は全力で突っ込む。


 俺は溜息を吐き、ほらよっとボールを軽く投げる。


 女子生徒はサンキュとお礼を言った。


「ってか、何で俺の名を知ってんだ?お前」


 ボールの感触を確かめていた女子生徒は「へ?」と抜けた返事をした。


「名前って、知って当たり前だよ?クロトと私、一緒のクラスじゃん」


「あぁ……それで、名前なんだっけ?」


 今更、俺とコイツは同じクラスメートだった、などというオチを聞き飽きた俺は、リアクションは止めて普通に名前を聞いた。


「私?私はかぐや。緑川みどりかわかぐや」


 初耳だったが、ここは驚かずに反応しよう。


「おう、そうだったな。かぐ………」


「かぐやだったのか〜初耳だな」


「まぁ、声に出して名前言ってないからね」


「……そうだったな」


 俺が返事しようとしたがシンが横から入り込んできた。


 そのお陰で知ったかぶりは避けられたようだ。多分。


 シンとかぐやはまるで知り合いかのような口調で喋る。


 まぁ、二人は同じクラスメートなので何ら不思議はないが、名前を知ってなかったぞ?


 だがしかし、全くの他人というわけでもないので、顔見知りといった所だろうか?


 二人の話題について行けない俺は、もうすぐ沈む太陽を眺める。


 ひっそりと日の光は、屋上にいる俺達を時間の限り、照らし続けていた。









 さてと、帰るかな。

不定期ですが、今後とも読んでもらったら嬉しいです。

では、また会いましょう。

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