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第3話:呆気


そういえば、風邪を引いています。

なのでオカシイ部分があるかも知れませんから、ご了承を。

あぁ。一応言っておきますが、言い訳ではありませんよ?

「フゥ、なんとか間に合ったか」


 俺は落ち着きを取り戻し、胸を撫で下ろした。


「お前、ほんとギリギリだったよな」


 横から聞こえてくる声。


 うん?と横を振り向く。


「よっ、久しぶりだな。三日ぶりか」


「……誰?お前?」


 冷たい一言に傷つく水谷みずたに


「ガーン……って、嘘だろ?」


「あぁ、冗談だ。谷水」


「ってか、間違ってるし。逆だ!逆!」


「逆?」


 少し考えるように手を顎にやる。


 数秒後、平手の上に握り拳を置くようなポーズをした。


「そうか」


「おっ?やっと、思い出したか?」


「あぁ、やっと分かったぞ。にたずみ」


「そっちの逆じゃねぇ〜〜!!」


 水谷は頭を抱えるようにくねくねと動く。


 それが気持ち悪かったのか、四方八方から冷たい目線で見られ始める。


 一旦、俺は他人のフリをした。


 数分間それは続き、水谷自身もやっと状況を察したのか、小さく縮んだ。


 それからそっと俺につぶやく。


「俺って浮いてた?」


「あぁ、馬鹿みたいに浮いていたぞ。やったな」


 俺は親指を立てる。


 水谷は顔がこれ以上ない位に引きつっていた。


 多分、俺の学園生活がぁぁぁ〜〜!!などと考えているのだろう。


 今は体育館の中にいる。ステージの上には“入学式”などと書かれた布が飾られていた。つまり、今日は俺達の入学式なのだ。


 入学式当日に遅刻なんてしたら、色んな奴に目を付けかねんからな。


 喧嘩は上等だが……いや、むしろ歓迎?でも、普通に学生生活を送りたいと思った。


 この頃になって普通という日々が一番だと思ったわけ。普通=平和だからな〜。これが俺にとっての方程式。


「そういえば、なんでいつものように、怜奈さんに起こしてもらわなかったんだよ?俺なら大歓迎なんだけどな〜」


 絶望していた水谷が正常に戻り、普通に話しかけてくる。


 切り替えが早い奴は良いよな。いや、コイツの場合は単なる馬鹿か?


「ん?今、俺を馬鹿にしてなかったか?」


「イヤ、シテマセンケド?」


 だが、馬鹿は馬鹿でも野生の勘だけはあるようだ。


「怜奈姉さんね……あん人苦手だわ、俺」


「そうか?ただお前のことが好きなんじゃね?だから、あんだけベタベタとくっ付いてくるんだろ?」


 そうなのだ。白石怜奈しらいしれいな姉さんは事実上ブラコン。何故か標的が俺だけという最悪な状態にある。


 だが、シスコンである兄貴のような自称はしていないものの、明らかにブラコンというのは目に見えている。


 別に俺は怜奈姉さんを嫌いというわけじゃない。むしろ従姉としては好きだ。


 でも、それ以上の感情がない。ハァ、いい加減にしてほしいものだ。怜奈姉さんにも。


 怜奈姉さんのことを考えると頭が痛くなってくる。


 頭を横に振り、別のことを考えた。


 ふと、さっきのことが甦る。あの少女のこと。


 あれから少女はお礼を言って、すぐさま走っていってしまった。


 ぶつかったのは明らかに俺の不注意だ。


 だから実際は、お礼を言われることなんて何もしないというのに。


 ハァ、複雑だ。


 俺が色んなことで苦悩していると、やっと長々と校長の話しが終わった。


 かれこれ三十分だったか。長いにも程がある。


 そして、最後に生徒会長の一言―――――――!?


 忘れていた。この学校の生徒会長と副会長を。


 そういえばこの人達だったな。怜奈姉さんに兄貴。


 ステージ上を優雅に、そして、堂々と歩く姿は誰もが見とれる。容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群。それが怜奈姉さん。


 その後ろにはメガネを掛け、自信に溢れている顔を持ち、黙っていればモテそうな男。それが兄貴。


 この二人が生徒会を纏めているらしい。それもまだ二年であるこの人達。そこがまた凄い。


 だが、こんな二人にも弱点というものが存在する。


 それは俺と舞である。


 怜奈姉さんは俺の前では、擦り寄ってくるように甘えてくる。それを引きは離そうと俺は大変だ。


 兄貴は舞の前では、鼻の下を伸ばし危ない目付きで見てくる。


 舞自身が気付いているかは別として、俺がいつも殴っては蹴り飛ばしている。舞は世間で言う天然であるから、危なっかしい所が多すぎだ。


 だが、それを取ってしまえば完璧といっても過言ではない。


 それほどまでに優秀だというのに………ハァ、人生を棒に振っているようなものだ。


 怜奈姉さんがマイクの前に立ち止まった。その後ろには兄貴が控えるように立つ。


 そして、そっと口を開く。


「私がこの学校の生徒会長、白石怜奈です」


 シーンと静まり返った体育館に響く。


 一見、大人の女性らしい落ち着いた口調だが、どこかしら威厳に満ちていた。


「今年、入学した方々、おめでとう。私はHG……もとい、校長のように長々と話す気はさらさらありません」


 HG?ふと、口からこぼれた言葉に疑問を持つ。


 だが、そんな些細なことは俺しか注目していなかっただろう。


 何故ならここにいる全ての人が、怜奈姉さんの美しくも鋭い眼光にやられていたのだから。


 それは俺の友人である(?)水谷や先生方も例外ではなかった。


「私が言いたいのはただ一つ」


 怜奈姉さんが一息吐き、静かに目をつぶる。


 体育館にとめどない緊張がはしる。


 そして、ゆっくりと目を見開いた怜奈姉さんは、こう宣言した。


「この私が生徒会長である限り、普通の学生生活が送れないことを了承していただく」


 体育館に緊張していた空気が一転、はぁ?というハトが豆鉄砲を食らったかのような顔を誰もがした。


 まぁ、俺はというと怜奈姉さんらしいな〜、なんて思っていた。


「いや、決めるもなにも、私に従うしか選択権しか残ってない。だから、ここでは私が絶対ということで、よ・ろ・し・く」


 言いたいことだけ言って、怜奈姉さんはステージ上を後にした。


 最後に残ったものと言えば、男女生徒先生問わず、怜奈姉さんの最後の色目にやられていた者達の末路だけだった。


 俺は溜息を吐いた。


「大丈夫か?この学校?」


 怜奈姉さん一人でこの有様の生徒先生を、どこか哀れむように見る俺。


 だが、よ〜く見渡すと怜奈姉さんの色目にも負けていない奴らも少なくは無かった。


 思っていたより、普通の奴もいるのか。少し安心する。


 ステージ上を見た。兄貴と目が合う。


 兄貴は“呆れた”という風に首を振っていた。


 そこで俺はふと思う。









 案外、怜奈姉さんと兄貴――――あんまし変わらんぞ?

本当は書く気はなかったんですが、一言だけ。

HGってのはここだけの話し“ハゲ”っての略です。

まぁ、分かりきってますがね。

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