第2話:運命
走り続けて、十数分。
そんなこんなあったものの、そこの角を曲がれば学校までは一直線だ。
ふと、脳裏に昨日やったギャルゲーの初めの部分が甦る。
「ハァハァハァ、クソッ。遅刻までギリギリじゃねぇか」
学校までの道のりを、主人公が行きよいよく走る。
その途中、角を曲がろうとした主人公。
だが、そこで誰かとぶつかってしまった。
主人公と誰かはしりもちをつき、主人公は打ちつけたとこを摩りながらも直ぐに立ち上がる。
細目で開いた主人公は、相手も倒れたことを知り、思わず手を差し出した。
「悪りぃ、ちょっと急いでいたんでな」
主人公は相手をよく見ている。少女だった。それもうちの学校の制服を着ている少女。
少女は俯きながらも差し出された手を見て、一瞬ビクッと震えた。
数秒間、様子を見た少女は差し出された手に、自分の手を伸ばす。そして、またビクッと震えた。
だが、俺は何の迷いもなく目の前にある手をにぎる。
「引っ張るぞ」
一声掛けて、少女は頷く。
主人公が立ち上がるように引っ張ると、思っていた以上に軽く、スッと立ち上がった。
手を離すと少女はパッパッと制服を調えた。
それから俺と向き合い、俯き加減であった少女は少し顔を上げる。
綺麗、或いは可愛いと言うべきであろう、そんな少女はそこにはいた。
主人公と目と目が合う。少女の顔は薄く朱に染まっていた。
また少女は恥ずかしそうに俯いた。
少し、挙動不審な少女はそっと口を開く。
「あ、あり、ありがと……ん、ありがとうございます」
一瞬、時間が止まったような気がした。
そして、胸の中がザワッと騒ぐのを感じた。
後にそれが何を指しているのか、今は知らずに学園生活を送ろうとしていた。
といった具合のベタなシチュエーションが脳裏を横切る。
その時、俺は淡い期待をしてしまった。
角を曲がれば、恋が待っているのではないか。
現実では一切ありもしないこと。それを望んでしまったのだ。
足を一歩、一歩と踏みしめることで、角が迫ってくる。
もし、そこに恋が待っているのなら、俺はどんな人が良いだろう。
昨日のギャルゲーのような、少し人見知りのおとなしめの子か。
或いは、学校でまた再会して「お前は、朝ぶつかってきた男」などと言ってくるツンデレ?
そのどちらかが好みだ。
などと考えている内に、無意識に曲がってしまっていた。
妄想の中にいる俺は、現実が見えていなかったらしく、誰かぶつかってしまう。
ぶつかった衝撃で、二人とも尻餅をつくように倒れる。
「イテテテ……げっ、しまった」
現実逃避しかけていた俺は、現実的な痛みですぐさま現実に戻り、倒れた相手を見る。
どこかの女子生徒だった。ショートカットのその少女は俯き、そのまま固まっている。
「あちゃ〜、本当に起こるとはな」
少し後悔するように、相手には聞こえない程度につぶやく。
そして、手を差し出した。
「ほら、掴まれ。遅刻すっぞ」
現実世界に戻った俺は遅刻というものを思い出した。
今日はヤバイ、特に今日だけは遅刻は出来ないのだ。それだけの理由はあるわけ。
俺がここにいるということは、この子もギリギリなのだろう。なんとなく思う。
少女は差し出した手を見る。
少し首を傾けた。フワリと髪が揺れる。
「今日は急がないとヤバイだろ?互いにな」
俺は少女の手を強引に手を取る。
少女はビクッと震えたようだが、それはお構いなしだ。
なんせマジで時間がギリギリなんだから。
「引っ張るぞ?」
少女は頷く。
加減は分からないが、手助け程度に引っ張ってやる。
そしたら勢いあまって今度はこちらの方に倒れる形となった。
俺は両肩を手で押さえるように支える。
その時、香水か何かは知らんが、どこか甘いにおいがした。
何故か胸が騒ぐ。
それから嫌な予感がした。
目の前にあるこれは何者だろう?
心の疑問、本能が俺に告げる。
これは関わってはならない者。
「―――――」
「………?」
華奢な体つきの少女は、体に伴った声を発した。
小さくて聞こえずらかったが、確かに聞こえた。
お礼を伝える言葉。
“ありがとう”と。
さてと、読んでくださってどうだったでしょうか?
まぁ、そこら辺は評価していただいて、と。
次回は前書きを書きます。




