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第12話:接近

 ピピッピピッピピッ。少し高めのアラームが部屋に鳴り響く。


「う、うぅぅぅん」


 寝返りを打つ体。


 アレ?なんか明るいぞ?


 すぐに部屋が明るいことに気付くが、昨日、すぐさまベッドに入ったのを思い出し、電気をそのままにして寝たのを思い出した。


 さて、スマホはドコかな〜。


 手探りで枕元を探すがどこにもない。


 今度は布団の中をまさぐる。


 ムニュ。なんだか暖かく柔らかい物が手に触れる。


 ん?なんだ?コレ?


 手で探りながら物体の正体を探る。


 ぬいぐるみ?いや、俺の部屋にはない。舞の部屋になら、ベッドを囲うぐらいに大量にあるが。


 さらに探る。


 物の形に沿って、手を滑らせる。


 すると凹凸のようなものにぶち当たる。


 試しに凹凸を掴んでみる。


 ムニュ。さらに柔らかい。だが、なんだろう。心地いい気持ちに襲われる。


 数秒の間、それを触り続けると何か聞こえてきた。


「・・・ンッ・・・ちょ・・・もうちょっと、優しくして」


「!?」


 声が聞こえたのと同時にバッと布団をはがした。


 すると、そこにはテンマがいた。


「な、な、な、なんでテンマが、コ、ココに!?」


 驚きを隠せない俺は顔を真赤にした状態で問う。


「ん〜と、夜這い?」


 少し赤らめているテンマが正直に答える。


 言葉にならない声で動揺する。


 そんな俺を見て小悪魔的な笑みを浮かべたテンマが一言。


「でも、まさかそっちから夜這いしてくるとはね。エッチ・・・・・・」


 するとテンマは俺の左手に手を添える。


 左手?アレ?なんでそんな所に俺の左手が?


 自分の頭が追いついてないことで、自身の左手が置かれている状況の判断が遅れる。


 さっきのあの柔らかい物って。まさか。


 思わず先程感じた柔らかさを確かめるために、いや、無意識的に確かめるためにもう一度左手に全神経を集め、繊細かつ、優しく、力が入る。


 ムニュ。


「んあっ」


「うわぁぁぁ、ゴメン!!」


 すぐさまテンマの胸から手を離した。


 そう。何を隠そうとも俺の左手は女の子の神秘の象徴とも呼べる2つの丘の片方に触れていたのだ。


 自身の左手の手のひらを見る。


 感触の余韻が未だ残っている。


「なんか手の動かし方がエッチ」


「・・・ち、ちがう!こ、これは、その、確かめてだな」


「確かめるだなんて、もっとエッチ」


 テンマは片方の腕で胸を隠すようにしながら上半身を横に向ける。


 その仕草に羞恥がさらに込み上げてくる。


 思わずテンマから目をそらす。


 そして、なんとも奇妙な沈黙が訪れる。


 どうすれば!何か!何かないか!?


 いくら思考を巡らそうとも、先程の温もりに感触、柔らかさが頭から離れない。


 話をそらす?ダメだ!あからさますぎる!気持ちよかった!じゃあ、言い訳するか?いや、むしろ現行犯逮捕じゃねーか!心地良かった!それじゃ、コレ詰んでねーか?まだ左手に感触が!


 理性と欲望のいり混じりつつも、なんとか突破法も考えるも欲望リード。


 一人で頭抱えて、唸り声上げている俺を見たテンマはクスッと笑う。


 そう小悪魔的に笑う。


 小さく、囁くような声で言う。


「アナタがもう一度触りたいなら・・・私は構わない」


「・・・・・・!?」


 テンマに視線を戻す。


 心なしかテンマが愛おしく思えた・・・気がした。


 そう思った瞬間、部屋中に先程と同じ音のアラームが鳴り出した。


 ふと我に返った俺は、そのまま布団から逃げるように脱出する。


 スマホの方まで走っていきアラームを切った。


 数秒間の沈黙が訪れるが、意を決し、テンマの方向へと足を向ける。


 目の前まで来ると、テンマは静かに目を閉じた。


 俺はというとゆっくりとテンマの顔へと近づいていく。


 ゆっくりと、慎重に、音も立てずに近づく。


 そして、お互いの身体の一部同士が触れ合う。









 バシッ。


「イッ・・・イッたぁぁああ!!ま、まさかの想定外・・・」


 テンマが怒鳴る。


 そう、俺は完全に油断しているテンマのオデコにデコピンを食らわせた。


 それも自身が最強の威力を誇る両手での合体技であるデコピンをだ。


 当然、それを食らった者は否応なしにオデコが赤く染まる。


「テンマが俺を辛かった罰だ」


「べ、別に辛かったわけじゃないんだけど・・・私、本気だし・・・」


「もう一回、食らいか?」


「ごめんなさい!もうやりません!!」


 相当痛かったのか、首と手を全力で横に振り、青ざめた顔をする。


 仕方がないとため息一つ吐き、ドアに人差し指を向けて言う。


「出てってくれ。これからバイトなんだ」


 するとキョトンとした顔を向けてくる。


「バイト?こんな時間から?」


「あぁ、新聞配達だよ」


「なるほど。大変だ〜」


「・・・・・・バカにしてるなら、もう一度」


 両手で今一度、我がウチに伝わる伝家の宝刀デコピンを構える


「違う!違うから止めて!!出ていく!出ていてくから勘弁して!!」


 そうか、残念だ。と肩を落とす。


 急いでベッドから飛び降り、小走りでドアへと向かう。


 俺の横を横切る際に何か呟く声が聞こえてきた。


「作戦失敗か〜残念」


 小さくて聞こえなかった。まぁ、大したことではないだろう。


 ドアノブに手を掛ける。


 ガチャ。


 扉が開いて飛び出していったテンマを見送った後、バイトに行く準備をする。


 とは言っても、着替えて必要最低限の物しか持っていかないので、言うほど時間は掛からない。


 特に忘れ物がないのを確認してから外へと出ようとするも、一度部屋の中央に立ち止まる。


 クイクイ。左手を動かす。


 未だ忘れられないあの感触。


「・・・・・・気持ちよかったな」


「私の胸の話かにゃ?」


「うわっ!?」


 突然の声に驚く。


 すると、テンマがドアの少し空いた隙間からコチラの様子を伺っていた。


「いや、これは、その、あの、えっーと」


 突然過ぎて焦りで頭が回らず、うまく言葉が出てこない。


 そんな俺を見ながらニヤニヤと笑う。


 そして、決めのセリフを一言。


「エッチ」


「う、うっさい!!出てっけ!!」


「分かってるよん。まっ、仕事頑張ってね」


 手をヒラヒラとさせて、再びドアがしまる。


 マジかー。見られたー。つーか、チョー恥ずかしい。マジ穴があったら入りたい。


 顔を両手で覆うように押さえつけて俯く


 自分の顔が真っ赤なのだろうと分かるぐらいに熱を帯びて暑い。


「ああ、そうそう!!」


 また突然の声に体全体がビクッと反射反応を起こし、またドアの隙間からコチラを伺うテンマを見る。


 すぐさま片方で口のニヤけを隠し、あえて目をそらしながら話し出す。


「な、なんだ、テンマ。まだ用か?こちとら忙しいんだが」


 少々早口になってしまったが問題ない。


 ニヤケ口さえ隠せれば問題ない。そう問題ない・・・・・・はず。


 ふふふ、と笑うテンマ。


 ヤバイ!バレた!?マジでこれ以上自分が羞恥に耐えられない!!


 変な汗が出始める俺をよそに、テンマは口を開く。


「私のこと・・・・・・テンマって呼んでくれて、ありがとう。クロト」


 思いがけない言葉が返ってきたことで、思わずテンマの顔を見る。


「素直に嬉しかったよ」


 そこには裏表もない天使と言えるだろうか。そんな彼女の無邪気で素敵な最高の笑顔がコチラに向けられていた。


「じゃっ、こ、これで以上!さらば!!」


 ドアを締めるのを忘れ、ドタドタと舞の部屋へと走り去った。


 俺はというと自室の床へと座り込んでいた。


 決して疲れたわけではない。


 たった一つの理由で足から崩れ落ちたのだ。


 それは・・・・・・・・・。


「・・・な、なんなんだよアレ。あんな笑顔されたら、誰だってアウトだろ」


 俺がテンマに惚れている。


 やはり、この気持ちは真実のもの・・・・・・なのかもしれない。

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