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市中戦

 優斗は喫驚する。


 カオススライムは、ベースダンジョン深部にて出現するBランクの魔物だ。

 その特徴は色。そして大きさだ。


 カオススライムは、通常のもとのは違い全身が黒一色に染まっている。

 また通常の数十倍もの体積を誇ると言われている。


 その特徴から、優斗は相手がカオススライムではないかと推測した。


 その推測を裏付けるかのように、気配察知で感じる存在感は以前見た、黒いだけのスライムとはわけが違う。

 これまで優斗が相手してきた中でも、最上級クラスだった。


(どうしよう……)


 優斗は屋根の上で、スキルボードを取り出した。


 優斗はまだ、剣術しかBランクの水準に達していない。

 現在のステータスでBランクの魔物と戦うのは少々危険である。


(ミスリルゴーレムもBランクだったけど……)


 あの時の優斗は、戦闘を選ばずとも確実に死んでいた。

 ボスを倒さなければインスタンスダンジョンから出られないからだ。

 だからこそ、遥か格上のミスリルゴーレムと戦えた。


 しかし、現在は違う。

 無理に死地へ踏み込むよりも、優斗は安全かつ確実な手段を執りたかった。


(どうする……)


 優斗はスキルボードを睨みながら考える。


○優斗(18)

○レベル29→30

○スキルポイント:10→15

○スキル

└全能力強化Lv4

・技術

 ├剣術Lv5┬

 ├魔術Lv2

 ├気配察知Lv2

 ├回避Lv2

 └テイムLv1

・魔術

 <ライトニングLv2>

 <身体強化Lv1>

・特技

 【急所突き】【破甲】


 スライムには物理攻撃が通じない。

 ミスリルゴーレムを倒した時のように、特技で押し切るのは不可能だ。


 だからといって魔術を上昇させても、現在の優斗ではさしたるダメージは与えられない。

 何故なら初級魔術には、限界があるためだ。


 たとえばエリスのヒールは、どれほど魔力を込めても重傷者を救えない。

 重傷を治癒する能力が、ヒールにはないためだ。


 それと同じように、優斗が修得したライトニングにどれだけ魔力を込めても、抵抗力が一定以上ある魔物には通じなくなってしまう。


(ライトニングのレベルを上げて中級が覚えられるならそれでいいんだけど……)


 試しに、優斗はライトニングのレベルをあげるために必要なポイントを確認する。


「じゅ……ッ!」


 ライトニングをレベル3にするためには、10ポイント必要だった。


 レベル3にしても、確実に中級魔術が出現する保証がない。

 そんな状況で、10ポイント使用はかなり危うい博打である。


(それなら魔力と魔術を底上げして、ライトニングの威力を高めた方が良いよなあ……。絶対にダメージが与えられないわけじゃないし)


 優斗が考えている、その時だった。


「――てやっ!!」

「っ!?」


 広場に裂帛の声が響いた。

 その声に、優斗は驚き慌てて地上を覗き見る。


 そこには、テミスがいた。

 かつて優斗に決闘を申し込んだ、Dランク冒険者だ。


「どうしてテミスさんがここに……」


 テミスの攻撃は、ぶよぶよの体にあっさり遮られた。

 その攻撃に、カオススライムが気がついた。


 テミスに向かって、地面を這う。

 間合いに入ると、その体を大きく持ち上げた。


「――まずい!」


 テミスが攻撃される。

 そう思うと、優斗の体は自然と動いた。

 優斗は地上に舞い降りて、スライムの背後から斬り掛かる。


「――しっ!!」


 急所突きと破甲が重なった攻撃が、スライムの体を深々と切り裂いた。

 しかし、スライムはなんの痛痒も見せない。


 ――斬撃はダメージにならないのだ。


「テミスさん、どうしてここに!?」

「巫山戯たこと聞いてんじゃねぇ!!」


 カオススライムからの攻撃を警戒する優斗に、テミスが叫んだ。


「力ない者を護るのが、力ある者の使命だろっ!」


 テミスの言葉に、優斗は心臓をガツンと殴られた気がした。

 気高い心意気に触れ、全身が熱くなる。


「助太刀しますっ!!」


 優斗は叫んだ。

 身体強化を全力で展開する。

 同時に、戦場全体を視野に収める。


 ぬるぬると、スライムの全身から触手が出現した。

 それらが一斉に、テミスと優斗に向かう。


「ぐっ!」


 一本の触手を受けたテミスの体が、僅かに後ろに流れた。

 優斗は触手を回避し、また切断しながら、テミスをカバーする。


 集中力を、極限まで高める。

 一秒が永遠に引き延ばされる。


 スローモーションになった世界。

 優斗は全体を、俯瞰する。


 触手を回避しながら、自分と、テミスに向かう触手だけを切断した。


「……ふぅ」


 触手の波を捌ききる。

 カオススライムは一度に、複数の触手を発射する。

 だが、連続攻撃が出来ないのか、続けて攻撃する雰囲気が感じられない。


「――ライトニング!」


 ――ッダァァァン!!


 優斗の掌から、閃光が放出された。

 それがカオススライムの体躯に接触する。


 スライムは、僅かに体を震わせる。

 だが、それだけだった。


「やっぱり……」


 さしてダメージが与えられないことは、想定済みだ。

 優斗は落胆することはなかった。


 その代わり、手詰まりが確定した。

 優斗の手札ではカオススライムが倒せない。


(一体どうすれば……)

7月2日に拙作「劣等人の魔剣使い」が講談社様のKラノベブックスより発売されました。

是非ご購入をお願いいたします!


また6月25日より、スマホアプリ「マガポケ」にて、劣等人の魔剣使いのコミカライズがスタートしております。

こちらも合せて、宜しくお願いいたします。

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新作「『√悪役貴族 処刑回避から始まる覇王道』 を宜しくお願いいたします!
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