表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/96

100万Gを目指して!

 まさかこんな形でクリアするとは思っていなかったが、優斗は防具を新調した。

 ならばクエストをクリアしたはずだと、スキルボードを取り出す。


>>レベル28→29

>>スキルポイント:5→10


「よしっ、やっぱりクリアしてたか」


 他人がお金を払った場合、クリア不可だったらどうしようなどと考えたが、幸い杞憂に終わった。

 ボードに指を滑らせインベントリの確認を行う。


「剣のクエストをクリアしたときは、鞘が手に入ったから、今回も多分なにかあるはず……っと、おっ、あったあった」


 予想通り、クリア報酬がインベントリに収納されていた。

 その報酬に触れ、名前を表示する。


「んん? 『黒鉄糸ウェア』……?」


 表示された名前に、優斗は首を傾げた。

 素材である黒鉄については、優斗も知っている。

 黒鉄はDランクからCランクにかけての冒険者が愛用することの多い、安価で強靱な金属だ。


 その金属を繊維状にして、ウェアにしててあげられているのだ。

 優斗はインベントリを操作して、黒鉄糸ウェアを取り出した。


「おお……ほんとに、黒鉄なんだ」


 現われたのは、黒いウェアだった。

 手触りがかなり硬質だ。黒鉄だろうことがわかる。


 だが、力を込めると通常の衣類と同じように、簡単に歪む。


 黒鉄糸ウェアは鉄を素材にしながら、衣類の柔軟性を持った、非常にユニークなウェアである。


「これなら、コートの下に着用出来るな。素材が黒鉄だから、防刃効果も期待出来そうだ」


 早速優斗はコートの下に、黒鉄糸ウェアを着用する。

 着心地は、悪くない。

 黒鉄を用いられていることもあって、ややずっしりとしているが、動きを阻害するほどではない。


 逆に、その重みに、命を守ってくれるだろう信頼を感じる。


「……よしっ」


 準備が整った。

 優斗は試着室を出て、仲間の二人と合流するのだった。



「それじゃあ、準備はいい?」


 優斗はエリスとダナンに確認する。


 プルートスを出た優斗らは、まっすぐ神殿にある生成の間へと向かった。

 これからDランクのインスタンスダンジョンに挑む。


 Dランクのダンジョンは、クリア確定報酬がおおよそ5万ガルドになる。

 百万ガルドにはほど遠いが、千里の道も一歩から。

 どんな形であれ、歩み出さなければ、目的地へは近づかないのだ。


「大丈夫、です」

「ああ、問題ないぜ」


 二人の合図を受け、優斗は手にしたキーを扉に差し込んだ。


 ギギ、と音を立てて扉が開かれる。

 その扉に向けて、優斗が飛び込んだ。

 続けてダナンが、少し遅れてエリスもダンジョンに突入した。


「今回は……、火タイプのダンジョンだね」


 優斗は赤色のダンジョン壁を見て、そう呟いた。


 Dランクからは、ダンジョンが属性を持つようになる。

 以前、優斗がクリアしたCランクのインスタンスダンジョンは、土タイプだった。


 土タイプでは主に、耐久力の高い魔物が出没した。


 今回は火――火魔術を用いる魔物が現われるダンジョンとなる。


「たしか、通常の魔物はブラックハウンドだったかな?」

「ああ、そうだぜ」

「なら大丈夫そうですね」

「だからって油断はすんなよ」

「はい。ありがとうございます」


 ダナンの忠告を素直に受け取る。

 冒険者にとって、油断や慢心は致命的な結果に繋がる。


 優斗は再度、気持ちを引き締め直すのだった。




「――しっ!!」


 インスタンスダンジョン、最後のボスを切り倒し、優斗らはダンジョンの攻略に成功した。


「みんな、お疲れ様」

「ああ、お疲れ」

「お疲れ様、です」


 道中は、ベースダンジョン11階の焼き直しになった。

 変化したことは、優斗が炎のブレス攻撃を食らっても、ダメージどころか暖かささえ感じなくなったことくらいだ。


 新しい防具が、優斗の身を守ってくれている。

 高い防具って凄いんだなぁと、優斗は感心するのだった。


 ドロップした素材を集め、優斗らは神殿に戻る。

 一度休憩を入れている間に、優斗はクリア報酬のチェックを行った。


「たしか、Eランクのダンジョンを攻略したときは、ミスリルが手に入ったんだっけ……」


 しかし、あれは緊急クエストだった。

 今回は通常のクエストであるため、そこまでの品物は期待出来ない。


 スキルボードを取り出し、ステータスを確認。


>>スキルポイント:10→11


 難易度がそこまで高くなかったためか、レベルは上昇しなかった。スキルポイントも1アップと低調である。


「僕はもうCランクだし、あまり上がらないのも仕方ないか……」


 クエスト一覧を表示し、優斗は『Dランクのインスタンスダンジョンを攻略せよ』が消えているのを確認する。

 それと同時に、新たに『Cランクのインスタンスダンジョンを攻略せよ』が出現しているのを発見した。


 続いてインベントリを表示した優斗は、クエスト報酬を見て拳を握った。


「インスタCの鍵だ……よしっ! Cランクのクエストにチャレンジ出来る!」


 Cランクの鍵だけでも、10万ガルド相当だ。

 Dランクのダンジョンで手に入れたアイテムを換金すれば、ほぼ15万ガルドが手に入る計算になる。


 優斗にとっては、かなりの大金だ。

 けれど、まだまだ百万ガルドには遠い。


「この調子だと、Cランクのダンジョンをクリアすれば、Bランクの鍵が手に入るのかな? Bランクの鍵は、売れば25万ガルドくらいになるから、15万ガルドと鍵を販売したお金で、40万ガルドか……」


 それでもまだ、ゴールは遠い。

 しかし優斗はさして落胆していない。

 何故なら今日1日で、もしかしたら40万ガルドが手に入るかもしれないのだから。


 これまでの優斗では、考えられないほど高額の日当だ。

 また(決して単純計算出来るものではないが)2,5日活動すれば手が届く。

 そう考えると、百万ガルドが目前のように思えてきた。


 すべては、タクムを救うために。

 それを考えると、胸の中から力がこみ上げてきた。


「よしっ、頑張ろう!!」


 気合を入れ直し、優斗はCランクのインスタンスダンジョンに備えるのだった。

7月2日に拙作「劣等人の魔剣使い」が講談社様のKラノベブックスより発売されます。

イラストは「かやはら」様。本当に素晴らしいイラストを描いて頂きました。


是非ご購入をお願いいたします。


また6月25日より、スマホアプリ「マガポケ」にて、劣等人の魔剣使いのコミカライズがスタートいたします。

こちらも合せて、宜しくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作「『√悪役貴族 処刑回避から始まる覇王道』 を宜しくお願いいたします!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ