ギルドクエスト
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クラトスと戦った後。
優斗は落胆しつつも、神殿内のギルドへと向かった。
今後、もっと強くなるためには、クエストの攻略は欠かせない。
しかしそれと同じくらい、防具の新調も欠かせないことだった。
「はやくお金を貯めないと……」
「ユートさん。お、お金ならわたしが出す、です」
「いや、それはほんと、良いから。エリスは自分のためにお金を使って、ね?」
優斗はエリスの申し出をやんわり断る。
いくらエリス自らの申し出であろうとも、12歳の少女にお金を出してもらうことは出来ない。
ならば、自分でお金を稼ぐ他ない。
優斗は掲示板の前で依頼を探す。
「ユートさん。お金を稼ぐなら依頼よりも、インスタに行くか、魔石を集めた方が良い、です」
「うん。そうは思うんだけど、たとえば魔石を集めながらクリア出来る依頼がないかなぁって思ってさ」
具体的にどういうものがあるかは、優斗にはわからない。
だが、たとえば魔石を集めながらクリアを狙える依頼があるのなら、そちらの方が金銭効率が良い。
ざっと依頼を眺めていた優斗は、ある依頼に目が留まった。
「――これはっ!」
「えっ、なにかありました、です?」
掲示板を見るために、エリスがひょこっと背伸びをする。
優斗が見ている依頼は、『水源調査』というものだった。
クロノスには、いくつかの水源から水が引き込まれている。
依頼は、その中の一つを調査するものだった。
優斗が目に留まったのは、この調査が気になったためではない。
依頼主が気になったためだ。
「ユートさん。この依頼が、どうしたんです?」
「うん。これ、僕が愛用してるパン屋さんからの依頼なんだ」
「あ、ああ、アレ、ですか」
エリスが渋い顔をして、口をもごもご動かした。
優斗は彼女にも、ダンジョンで50ガルドパンを分け与えたことがある。
これを機に50ガルドパンの信者を増やそうと思ったのだ。
しかしエリスからは芳しい反応が得られていない。
――残念だ。
さておき、依頼である。
優斗はこれを運命だと考え、依頼書を手に取った。
「ゆ、ユートさん。ちょっと待つ、です」
「ん、なに?」
「報酬を確認したです?」
「してないけど?」
なにをそんな、当たり前のことを。
そう思って、優斗がカウンターに向けて歩き出すと、エリスが服を掴んで来た。
「待つです、待つです! ユートさんは、お金を貯めるために依頼をチェックしてたはずです。なら、この依頼はあり得ない、です!」
水源調査の依頼は、報酬金額が1000ガルドと書かれていた。
普通の依頼と比べて、かなり格安である。
だが、優斗にとって金額は問題じゃなかった。
「僕が愛顧しているお店からの依頼なんだ!」
もしこの依頼を請け負わずにお店が潰れてしまったら……。
(僕は餓死してしまうかもしれない!!)
そう考えると、優斗はいてもたってもいられないのだった。
「それに、ガルド以外にも報酬はあるから大丈夫だよ」
「…………」
優斗の言葉に、エリスの目から輝きが消えた。
この依頼には、ガルド以外に報酬があった。
希に、こういう依頼は存在する。
たとえば漁業関係の仕事を請け負った時は、ガルド以外に生魚が貰える。
農業関係の仕事を請け負った時は、新鮮野菜が貰える。
今回の依頼では、50ガルドパンが100個貰えると書かれていた。
「5000ガルド分だよ5000ガルド分! パン100個で100食分だ! これは、かなり美味しい依頼だよ!」
「そ、そうですか……」
優斗が力説すると、エリスから先ほどの勢いがすっかり失われたのだった。
○
依頼を引き受けた優斗らは、早速水源の調査に向かった。
幸いにして、水源はもっとも近いもので、クロノスの中にあった。
「ギルド員は『水の味が変わって、パンの味が落ちた』って言ってよね」
「あー、だからマズ――」
「ん?」
「い、いえ。なんでもないです! パン、美味しいデス!」
エリスがぴくんと肩を振るわせた。
そうだよねーと、優斗は笑みを浮かべる。
(喜べエリス。今日の昼食は50ガルドパンだぞ!)
依頼は『水源を調査し、可能ならば原因を除去しろ』というものだった。
原因がなんであるかはわからないが、優斗は必ず成功させなければと、燃えていた。
クロノスの一角に、壁に囲われた池がある。
これが、依頼にある水源だ。
普段は鉄格子に鍵が掛けられていて、誰も近づけないようになっている。
優斗らはギルドから預かった鍵を使って、鉄格子を開放した。
「この水源は、クロノスが出来た当初から使われてるものなんだよ」
「へぇ、そうなんですね」
かなり昔に整備されたため、水源の周りに敷き詰められたレンガはずいぶんと苔むしている。
壁に囲われた中心部に、その水源があった。
ひっそりと、地面から水が湧き出ている
湧き出た水は水路を伝って、クロノスに行き渡る。
しかし、全体ではない。
区画毎に、水路を流れる水の水源が違うのだ。
ここの水は、主にパン屋のある区画に供給されている。
「うーん。見た所、濁ってるとかはないよね」
「はい、です」
「他に原因があるのかな?」
優斗は水源をのぞき込んでいた顔を上げ、あたりを見回した。
この場は湿気が多いのか、水場に近いところだけでなく、全体的に緑色の苔がレンガを覆い尽くしている。
その中に、優斗は奇妙な物体を発見した。
「……ん、あれは?」
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