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後日談

 その後の話だ。


 冒険者の噂話で、優斗は自分がインスタンスダンジョンに飛び込んだあと、千刃のクラトスが動いていたことを知った。


 彼が動いた理由は、優斗も納得出来るものだった。

 冒険者の活動の多くは、明文化されていない暗黙の了解の上に成り立っている。


 その了解がなければ、誰も気軽にパーティが組めなくなってしまう。

 神殿前で毎朝行われているパーティ募集の光景も、なくなってしまうに違いない。


 それはとても寂しいことだと、優斗は思う。


 冒険者は、様々な目標を抱えてダンジョンを探索する。

 名声を手に入れる。強い魔物を倒す。レアな装備を手に入れる。お宝を手に入れて億万長者になる。


 けれど、それだけがダンジョンの醍醐味ではない。


 その時々で、違う仲間と探索すれば、同じ風景を歩いても、違う発見がある。

 それも冒険の醍醐味だ。


 そんな風に考えられるようになったことに、優斗は気がついたのだった。




 太陽が昇り、大通りが労働者たちで活気づき始めた頃。

 優斗は武具店プルートスを訪れていた。


「それでぇ? ミスリルゴーレムにフルボッコされたユートさぁん。いまさら良い防具が欲しいって、ちょおっと危機管理が足りないんじゃなーい?」

「……面目次第もありません」


 ミスリルゴーレムとの一戦についてマリーに話した優斗は、しばらく彼女からお灸を据えられることになった。


 もし優斗が強い防具を装備していれば、エリスに無駄な負担を掛けずに済んでいたのだ。

 マリーの言葉は非常に正しい。


「で、でも、生きて帰って来たから、そこまでユートさんを怒らなくても……」

「……んー」


 優斗の隣にいるエリスを見て、マリーがあたかも獲物を狙う蛇のように瞳孔をすぼめた。

 自らが食べられるネズミ側だとでも思ったか、エリスが「ひうっ!」と怯えて優斗の影に隠れた。


「ユート。ずいぶんとその子と仲が良いじゃない」

「あはは……。これから一緒に、パーティを組むことになってさ」

「はぁ!? ちょっと、聞いてないんですけど!!」


 マリーがカウンターを両手で叩く。

 いや、言う必要あるの? と優斗は首を傾げる。


「ああ、アタシは10年来の〝幼なじみ〟でしょう!? そ、そういうことは教えてくれたって良いじゃない!」


 マリーがずいぶんと幼なじみという部分を強調した。

 たしかに、と優斗は思う。


 優斗はマリーに助けられることが多々あった

 特に武器や食事は、マリーに頭が上がらない。


 新しい仲間についても、彼女に伝えるべきだったか。

 優斗は口を開こうとした、その時だった。


「これからユートさんと、ダンジョンで〝長時間一緒に過ごす〟パーティを組みます、エリスです。宜しくお願いします、です」


 エリスが優斗の腕をぎゅっと抱きながら、マリーを見据えた。

 何故か〝長時間一緒に過ごす〟という部分がやけに強調されている。


 たしかにパーティはそういうものだが、そこを強調する意味はなんなのか……。


 マリーとエリスが、互いに笑顔を浮かべながら見つめ合っている。


 二人とも美少女と称されるような、綺麗な顔をしている。

 その美少女が二人笑顔で見つめ合っているというのに、優斗は強い寒気を感じていた。


(なに……この空気……)


 まるでこの店内だけが厳寒期に突入したかのようである。


「あ、あー、ちょっと用事を思い出したので僕はこれで」

「ちょっと待ちなさいよ!」

「ユートさん、待つです!」


 がしっと二人に引き留められ、優斗は背中に冷たい汗を流す。

 ここで、これ以上何をしろと?


 優斗は脂の切れたブリキのように、ギギギと首を回す。


「まだ防具が決まってないじゃない」

「そうです。ユートさん。今日はわたしと一緒に防具を選ぶです」

「っふ。素人が出しゃばらないで。武具に関してアタシはプロよ? ユートに防具を選んであげるのは、アタシの役割だから」

「パーティメンバーとして、わたしが選ぶです。ユートさんの財布はわたしが握ってあげるです」

「なんでアンタがユートの財布を握るのよ!!」

「パーティの回復術師(サポート)として、当然の役割です!」

「関係ないから。全然関係ないから!」


 ぎゃーぎゃーと、マリーとエリスが声を上げる。


(わー、二人とも仲が良いなー)


 優斗は現実逃避する。

 しかし、それは決して許されなかった。


「ユート!」

「ユートさん!」

「防具はアタシが選んでいいわよね!?」

「防具はわたしが選びますです!」


 あたかも強盗のような二人の眼力に、優斗は早々に白旗を振るのだった。

以上で一部2章が終了となります。

明日より二部が開始です。


ここまで応援してくださったみなさま、ありがとうございます。


評価ポイントは作者のガソリンになります。

お時間がありましたら、この下にある評価欄から作品を評価してください。


何卒宜しくお願いいたしますm(_ _)m

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