不真面目な4人
チュンチュンと小鳥のなく声で目が覚める。なんと清々しい朝なのだろうか…窓からさす太陽の光、今日は快晴、気持ちの良い朝を迎える。ベッドの上で夢半ばにぼんやりとしていると母の怒号が飛ぶ。
「起きなさい奏汰!!」
怒れる母の声は未だ覚醒しきらない俺の脳をたたき起こす。寝ぼけ眼の気の進まない重い体は布団に沈んでいく。しかしそれを許す母でもない。
「もう優ちゃん来てるわよ!」
「…早くない?」
「いつまで寝ぼけてんのよ、もう7時半すぎてるのよ?早くしないと遅刻するわよ」
母の言葉に壁掛けの時計を見ると確かにもう家を出なければならない時間になっていた。そしてカチカチと音を立てていたはずの目覚まし時計ただ静かに秒針を進めることを止めていた。寿命、電池がご臨終なさっていたらしい。
「……寝過ごした!!!」
状況を理解するや否やベッドから飛び起き、パジャマを脱ぎ捨て制服に着替える。かつてないほど急いだ。鞄を手に取り階段を駆け下り足を踏み外し盛大な尻もちをつく。角に強打した俺の尻は恐らく4つに割れてしまったことだろう…いってぇ。ズキズキと痛む尻を労りつつテーブルの上に置かれていた牛乳を飲み干し食パンを半分に折り頬張り
「むぐっごふっ」
噎せた。が、そんなことを気にしている余裕はない。滑るようにして玄関までの廊下を走り玄関の扉に突進するように飛び出る。
「ふぃっふぇひはぁふ!!」
「汚い!」
行ってらっしゃいの代わりに母からの罵声を受ける。確かに汚いかもしれないけども!もうすこし息子に優しくあっていいんだよ母上…心から染み出すシルはきっと階段から落ちた痛みによる冷や汗だよ。もしくは雨。家中だけど。あわただしく家を飛び出れば家の前には小さな人影。
「おはようございます、寝坊したんですか?」
ハニーブラウンの髪を揺らし、困ったように笑うのは俺の家の隣に住む俺の友達。ジェスチャーで少し待ってと伝えてパンを飲み込む。
「よし、おはよう優」
「寝坊するなんて珍しいですね、徹夜でゲームでもしてたんですか?」
「まぁ…はい…」
くすくすと控えめに笑う優。怒らないなんて優しいな…母さんとの会話を思い出してじんわりと浸っていたのもつかの間
「寝坊すると後の2人を待たせちゃうんですからねー?」
あ、これ実はちょっと怒ってるやつだ。笑顔の裏には小さな怒りが見えた。本音はきっと「奏汰くんの分際で僕を待たせるとか何様ですか?」って思ってる。ここが住宅街じゃなかったら俺は土下座して謝ってたね。でも俺にだって羞恥心くらいあるから後でする。
「待たせてしまいすみませんでした…」
「あ、もう家の前で待ってますね」
スルーの上に追い打ちかけられた。心に来るっ…
少し先では優の言う通り、少し先の家の前で俺らを待っているクールなイケメンがいらっしゃった。
「おはよう、遅かったな。奏汰が寝坊したのか?」
「おはよう寛人、その通りなんだけどなんで俺が寝坊したって真っ先に疑うの?」
「優はしっかりしているからな。お前と違って」
その通りではあるんだが言葉にされると腹が立つな…その通り過ぎてなにも言い返せないんだけどさ。
「どうせゲームでもして夜更かししたんだろ?」
「お前だってするだろ夜更かし!」
「俺は朝早いから寝坊しても遅刻はしない」
無駄にいい顔していいやがって。俺だって、本当は朝早い方だし。目覚まし時計がご臨終さえしていなければ。
「お前なんでそんな早起きしてんの?」
「ゲームのイベント回してるに決まってんだろJK」
「おぉ、JKJK」
「はいはいJK、いきますよー」
寛人とふざけ合っていたら10mも離れたところから声をかけられた。…そんな遠く離れなくても。他人のフリどころか他人の距離感だよこれ。10m先で呆れた顔の優と一緒に立っている両手に黒い手袋をはめた金髪の男がこちらに手を振っている。
「おはよ!かなちゃんってば寝坊しちゃったの?ゲームのし過ぎはよくないよ!」
「お前ら揃いも揃ってなんで俺がゲームで寝坊したって断定してくるんだよ!」
「だって」
「奏汰以外」
「寝坊して遅刻しちゃう人いないもんねー?」
ねー?じゃないよ、なんで満場一致してるんだよ、寝坊くらい誰だってす……優と寛人がしてるのは見たことないな。
「徹って寝坊したことないっけ?」
「髪のセットに時間かかっちゃうから俺は早起きなんだよー」
前髪を赤の丸い飾りのついた子供がつけてそうなヘアゴムで結んでおでこをさらしてるだけだろ、1分で終わりそう。
「毛先をアイロンしたりさー」
「女子かよ!?」
そこまでしてるとは思わなかった。それは時間がかかりそう…ごめんな、1分で終わりそうとか偏見言って。
「トリートメントしたり…」
「いや女子かよ?」
「金髪に染めてる以上ケアはしっかりしないと!」
「まず染めるなよ…校則違反だろ」
「入学当初からずっと金髪だから大丈夫だよ」
入学当初からずっと注意され続けてるだろ。内申点下げられてるくせに。少しくらい懲りろ。
「んで、なんでお前寝坊したわけ?徹夜でゲームしたってめったに寝坊しないくせに。なんか調べごとでもしてたのか?」
「半分正解。最近俺らさ、オンラインゲームとかやってないじゃん。しかもずっとやってたゲームはもうクリアした。であれば新しいゲームを探そうと思ったわけだよ」
目覚まし時計が鳴らなかったからってのもあるけどな。そこは置いておこう。ちょっと夜更かししたのもほんだし、夜更かししてなかったらきっと寝坊もしてなかった。……多分。
「なるほど、それで?」
「面白そうなゲームみつけたんだよ~!その名も『arcana casus』ジャンルはアクションRPG、冒険系のゲームで職は打射法補助の4種類、キャラメイクは自由度高目で種族も豊富。基本プレイ無料!どうよ!?」
無言でスマホを取り出すな、歩きスマホは危ないだろ。そしてなんか言え、調べてるんだろうけど何か言ってくれよ。ちょっと怖いだろ。
「…なるほどな、面白そうだ。俺は賛成」
「僕もいいと思います」
「3人がいいっていうなら俺が嫌がるわけないじゃん?」
「さすがお前ら、じゃあ今日帰ったらさっそくやってみるか!」
そして時は放課後…なんてことなく各々教室へ向かう。まあ同じクラスなんだけどな。早く放課後にならないかな。
「そういや今日身だしなみ検査じゃなかったか?」
「おっと…」
反応をしたのは寛人。徹は我関せずといった風だがお前が一番見た目がアウトだよ。
「やばいな…今日透明ピアスじゃないんだが」
困ったように呟いてるが学校にピアスつけてくる方が悪いんだからな。そもそもこいつが透明ピアスしてることなんて見たこともない。
「初めてピアスを開けたのは?」
「小学生」
「そして今や穴の数」
「11かな」
徹と寛人の問答。語尾に音符が付きそうなほど楽し気に言いやがったぞこいつ。前聴いたときは9だっていってたのにいつのまにまた増やしたのか…
「見てくれよ、最近買ったピアス」
「かっこいいね、とてもよく似合ってるが学校につけてきたお前が悪い」
「いや待てよ?外して後で付け直せばいいのか。教師の目を欺く程度造作もない…」
「前髪が目の下まであるくせによく言うよ」
「皆さん不良ですね」
呆れたようにそういう優だけど眉毛にかかっててもアウトなんだよ。まったく…
「優等生の風下にも置けない奴らだ!」
「うるさいぞ劣等生」
「ばかやろ、お前劣等生とかいうんじゃねえよ、成績は一応優秀だよ」
「じゃあ今回は勉強会なしか??」
「すみませんまたお世話になります」
テストの度に勉強会開いて教えてもらってるからこその成績です。バカじゃないんだ、要領がちょっとわるいだけ……徹なんて馬鹿っぽいのに理数の成績がずば抜けていいんだよな…なんなんだよ、お前キャラ的に言えばおバカキャラであるべきだろ金髪のくせにっ!!
「かなちゃんが分かりやすいようにちゃんとまとめてあげるからねー」
いつもそうやって俺のためにノート作ってくれる心優しい子だよ…徹様様、足向けて寝れないね。
「徹の優しさが心にしみる…」
「奏汰くんは自力で頑張るという言葉はご存じないのでしょうか?」
見た目に反して一番厳しいのが優だよ、ごめんなさい!!だが正論だから返す言葉もない。でもなんだかんだ教えてくれるから優しいんだよなぁ。
「授業もちゃんと聞いてノートもとってるのに何でできないんだろうな?」
「授業は寝てノートはいつも俺のうつしてるくせに一番成績がいいお前は何なんだよ!」
「ほら…俺天才だからさ」
何やらせたって人並み以上に完璧にこなす方は凡人の心がお分かりにならない…心折れるわ。しかも返ってきたノートに解説書いてあるんだぜ?助かるんだけどさ。納得がいかねぇ。
とかなんとか雑談しているとガラガラと音を立てて滑車がまわり扉が開く。教室に入ってきたのは俺らの担任、名前は松山たける、通称たけちゃん。
「席につけー。HRの前に身だしなみ検査だ。そこのイロモノ集団、覚悟しろ」
たけちゃんひどいぜ、イロモノなんて。というか俺だけめっちゃ身だしなみ完璧じゃないか?まって今めっちゃ目ぇあったなんか言われる。
「まずは石城、爪を切るのは良いがなぜこんな艶があるんだ?」
「艶出しネイルじゃないですよ、磨いてるだけです」
「なんで磨いたんだよ女子か」
「主夫ですかね」
「はぁ?」
何言ってんだこいつみたいな顔されてしまった。たけちゃんはともかくなんでお前らまでそんな顔すんだよ、お前らにはされたくないわ。お前らだけにはな。まあネイルじゃない証明をして俺はクリア、まじ優等生だわ。
「柴田、お前は前髪が長いっていつも言ってるだろ?」
「最近切ったんですけどね?」
「もうちょい短くしてこいよ」
「学生には髪型の自由もないんですか!?」
「学生らしい髪型をだな!」
「そんなの学校側の押し付けです」
「校則と言ってくれ!」
「校則は…」
「「「破るもの!」」」
「じゃかあしいわ!」
身だしなみ検査で恒例のやりとり。ノリのいいたけちゃんが俺らは大好きです。
「三浦は髪を黒くしろと毎日言ってるだろ」
「光の反射で金髪に見えるだけです!」
「なわけあるかっ!そのヘアゴムも違反だ」
徹のトンデモ言い訳にたけちゃんが突っ込む。問題ある光景だけどクラスではもう慣れ親しんだやりとりでみんなが笑って傍観する。俺らの奇行に付き合ってくれるたけちゃんほんと大好き。苦労かけるけど。
「なんでですか!?ボンボン可愛いじゃないすか!」
「誰もお前に可愛さなんて求めてねぇよ!」
「ッスよね」
ヘラヘラ笑って特に反省した様子もない。深い深いため息が漏れる。
たけちゃんそのうち胃に穴あきそうだね。因みにたけちゃんは俺らが1年の頃から担任でした。来年もよろしくね。
「黒峰も、前髪長くなってんじゃねぇか…」
「そのうち切ります」
「そのうちじゃ困るんだよなぁ?」
「卒業するまでには」
「まだ2年だろ先がなげぇわ!」
たけちゃんは深ぁい溜息を吐いて全員の身だしなみ検査を済ませた。いつもご苦労様です。そしてもう一度深ぁい溜息を吐いて半分諦めたようにたけちゃんは口を開く。たけちゃん、あんまり吐きすぎると幸せ逃げちゃうよ。
「イロモノ集団はもう少し学校生活に溶け込んでくれ…」
「めっちゃ溶け込んでますよ」
「浮きまくってんだよ!どこにいるか遠くから見てもわかるくらい目立つんだよ主に金髪とかな!?」
「ふひひサーセンw」
教員にふひひサーセンwとか言える徹、尊敬しないけど凄いと思う。これ許されてるのかわかんないけど本当によく許されてるよな…
「悪いと思ってないだろ…」
「はい!」
「内申点絶対下げてやるからな…じゃ、本題だ。委員会決めるぞ」
急すぎるぜたけちゃん。ちらりと横を見遣れば全員目を背けた。だよな、俺もパスだ。面倒だもんなー。席について窓の外を眺めて決まるのを待つつもりでいたがそうはいかないらしい。
「今年度の風紀委員のことなんだが、石城、黒峰、三浦、柴田。お前らが選出されているから頼んだぞ」
「「「「はい?」」」」
とんでもないこと言いだしたぞこの教師。校則破りの問題児を風紀委員に?守るどころか乱しまくりだよどうしてそうなった。
「風紀って、俺たちに任せちゃうんですか!?」
「校内の風紀をただすための組織ですよね…?」
「人選間違ってますよ」
「俺らが一番風紀乱してるのに!」
「拒否権はない、頑張り次第では内申点見直しも考えてる。つかわかってんならなおせ。んじゃ、放課後頑張れ」
風紀ってこんな簡単に決まるものだっけ…各クラス4名?え?俺らでいいの?
……あ、いいんだ。教師陣で勝手に決めたんだ。あ、成績で。もっと優秀な奴いたのに…あ、救済処置の意味も強いですかそうですか。
「ゲームする時間ンンンン!!」
「………」
「先生!ヒロくんが息してません!」
「え、えっとこういう時は…ざ……ざ、ざ、ザ●キ!」
「それ即死魔法!」
「ザオ●ク!」
騒ぐ俺らをガン無視してHRは終わりを告げた…
風紀ってあれだろー?取り締まる側の人間だろー?嫌だわぁ。俺ら秩序乱す側だもん。なんとか寛人を蘇生させたものの
「まずい…HPが3%を下回っている…」
生き返るのかこれ……ザオ●ク使った上でこの残量…毎秒攻撃くらってんのかこいつ…
「俺のことは…いい……お前らだけでも…に、げ……」
「ひろとぉぉおおおお!!…俺は寛人を治癒するために放課後は残れない。後は任せた……」
寛人の命は必ず助けるからな!!俺のMPが切れかねないけど!!そもそも俺RPGやるときは剣士って決めてるから蘇生魔法とか使えねぇわ!ドラ●エは寛人がやってるのうしろで見てただけだったしな…
「さっそくサボる気か。放課後ちゃんと風紀室行けよ」
「えぇ……辛い…」
「去年お前ら委員会活動サボッたろ。報いだと思え」
「返してよ俺らの青春!」
「今が青春真っ盛りだろうが…あぁ、放課後サボったら放課後呼び出して反省文書かせるぞ」
「わぁい風紀の集まりすっごい楽しみぃぃぃ!!」
反省文で時間がつぶれるくらいなら出席した方がましだ!!くっゲームしてぇ……勉強するより遊びたい年頃だもん。高校2年生だもんっ!!
うだうだ嘆いていても残酷にも時間は着々と流れていきあれほど待ち遠しかったはずの放課後が憂鬱に変わり、ついに迎えてしまった放課後。
校舎にある3つの扉。
1つ、校長室
2つ、生徒会室
3つ、風紀室
他の扉と違う重みがある部屋。その中で最も生徒に敬遠される扉は3つ目の風紀室。俺らは今、その扉の前に立っている。お叱りを受ける為ではなく、何かの手違いで風紀委員にされてしまった為に会議の参加を余儀なくされた。
「行くぞ…」
ノック4回、返事があるまで待機…
「どうぞ」
「失礼します」
扉を開けて一礼、席……ソファしかねぇ!いつみてもやべぇな風紀室!!豪邸の客室かよ!
既に他のメンバーは揃っていたようで俺らが最後だったようだ。視線に晒されなんか気まずいので自己紹介で場の雰囲気を和らげようと思う。大きく息を吸ってっ
「問題児筆頭!2年A組石城奏汰!」
「同じく2年A組黒峰寛人」
「一度見たら忘れられない流星が如く問題児!2年A組三浦徹!」
「唯一の良心、2年A組柴田優です」
ちゃんと乗ってきてくれるお前らが大好きだ。
ファーストインパクトはそこそこ、風紀委員の皆様方の反応はあまりよくない、当然だな。2年の反応がすこぶる薄い。3年がもはや頭抱えてる!やったぜ!唯一人、苦笑いを浮かべるのは委員長様。
「まぁ座れ」
促されてソファに座る先輩の膝の上に座る。重なるように4人で。
「狭いです先輩」
「…何故そこを選んだ」
「「座れと言われたので」」
「ソファに座れ、ソファに」
ちなみにこの先輩にはよくお世話になっています。…指導的な意味で。
「集まってもらったのは他でもない、風紀の仕事についての説明と役割についてだ」
先ほどのことを無かったことにした先輩。見事に微妙な空気感。もうちっと砕けようぜと思うのは緊張感なさすぎ?真面目なのはいいことだけど固すぎても初めての人が恐縮しちゃうでしょ?まあ俺ら1ミリも恐縮してないけどさ。
「本来なら風紀は3年通して同じ人間が務めることになるんだが…もちろん異例もある」
俺らのことですね。
「よく聞いておけよ」
「その前に1つ提案があるんです」
話が進む前にやらねばいけないこともある。それは俺らの意思…
「…どうした石城」
「2年A組の風紀変えた方がいいと思います」
「…真顔でいうか、それを」
「適任が他にいるでしょう!だって去年の奴らは!?」
「激務に草臥れて辞めた」
嘘だろそんな理由で辞めれんの。俺らも辞めたいわ。
「根性無しが!巫山戯るな!俺らの放課後を返せ!!ゲームしたい!」
「本音が漏れすぎだ」
ゲームしたいです。
「教師達からの推薦ということ、そして名誉挽回のチャンスであることの自覚はあるか?」
俺内申点別にそんな悪くないし…寛人とか徹なら美味しい話なのかもしれないけど。
「風紀になると授業免除とか特典もあったりするんだがな」
この委員長なかなか折れないな。そして授業免除別に要らない。
頭を抱えて項垂れると誰かが反発した。
「俺は反対です!こんな不真面目なヤツら風紀に適しているとは思えません!!」
敬語だし、1年風紀は7月選出だし…2年だよな。苦笑いしているのが3年、俺らを睨むのが2年、と…まあそう思って当然だよな!いいぞもっと反発してくれ。
「彼の言う通りです!さあ!変更を!!へーんこう!へーんこう!」
「却下だ。俺の一存では決められることでもない。いい加減あきらめて受け入れろ」
一蹴して委員長は書類を配る。スルースキルもなかなか高いな委員長…書類の内容は風紀の特権と役割について。特権は授業免除、マスターキーの所持許可、授業中でも風紀関連の連絡である場合にのみスマホ使用許可、特定の場合にのみ武力行使許可etc…そして風紀専用スーツの発行。いるかこれ。金の無駄じゃないか?そして武力行使とか恐ろしいこと書いてあるし。んで役割は風紀の取り締まりだな。どの行事においても風紀の仕事が最優先とする、か。改めてみると風紀って割と特別待遇なんだな…
まぁただ、「常に正しくあれ」っていうのがなぁ…既に正しくないのがいるんだよなぁ、金髪とかピアスとか。
まぁいいか、風紀優先つったって行事の見回りとかってことだろ?クラスのお仕事しなくていいなんてラッキーとでも思っておくことにしよう。
「とりあえず書類仕事があるからそれを片付けるための授業免除だということを理解しておけ」
……なんだと?
「一瞬で終わらせりゃ後は自由時間か」
「最高じゃないっすか!」
つっても下っ端の俺らに重要な書類なんてこねぇよな。いぇい!と、思っていた時期が俺にもありました。
「今の最優先事項は新入生歓迎会についてなんだがな…生徒会がまだ案を出していないので乗り込みに行くことだ」
にっこり笑ってそうおっしゃったのです。風紀と生徒会って仲が悪いって聞いてたけど大丈夫かな。何故か俺らまで連れられて生徒会室へ向かう。委員長と副委員長だけじゃダメなんですか。
委員長が立ち上がるのと同時に他メンバーも立ち上がる。そして委員長の歩く後ろを整列して一糸乱れぬ行進を開始した。なに、どこの軍隊ですか?1番後ろをなんとも不思議な気持ちでついて歩けばすれ違う人に変な顔をされた。俺だってわけがわからないよ。こんな状況の中、徹だけは楽しそうに行進に続いている。無邪気か。
不意に行進が止まり、前方を覗くと生徒会室の文字が見えた。
「入るぞ」
ノックもなしに蹴破る委員長。風紀って言う割にガラ悪いな委員長。
「な、またお前か!扉くらい静かに開けろ!」
「んなことよりだ、さっさと新入生歓迎会の催しを決めやがれっての」
会長と委員長は、顔を合わせれば喧嘩喧嘩の犬猿の仲…ではあるが喧嘩する程なんとやら?3年連中は生暖かな目で見ていた。
「決めた端から却下していく奴が文句を言うな!ならばお前が決めろ!」
「それは生徒会の仕事だろうが!ダンスパーティだの宴会だの巫山戯た案ばっかりだしやがって」
「だが毎年同じようなことやっても詰まらないだろう」
「だからってぶっ飛びすぎだろ!ダンスパーティとか誰が得すんだよ」
「じゃあなんならいいんだよ?」
「急にそんなこと言われてもな…」
あ、委員長が負けそうだ。ここは1つ庶民が助け舟を出してやろう。
「「鬼ごっこでよくね?」」
寛人と被った…
「なwかwよwしwかw」
「笑うな」
「不快だ」
「「いっぺん死ね」」
くっそ、またしても…
「息ピッタリwww」
笑うなというのに笑い続ける徹を締め上げつつ切り出す。
「鬼ごっこならば大掛かりな仕掛けもいらねぇし、学校でできる」
「各クラス鬼を数名決めて、鬼ではない人には名札でも付けて、鬼がそれを回収する」
「鬼ごっこなら学年関係なく楽しめるし運動できるしいいんじゃないかなーってのが俺らの考えですよ」
「逃げ切った景品とかあるとサボりもなさそうですね」
未だに言い合いを続けていた会長と委員長は顔を見合わせて頷いた。やっぱ仲良しでしょ。噂って案外とあてになんねぇな。
「なるほどな、鬼ごっこか…誰にでも馴染みもあるし悪くは無いな」
「寧ろそれでいこう。そうと決まれば風紀は見回りの経路確認だ。景品と小道具は生徒会に任せる」
「仕切んな!俺らはまず教師に提出する書類をまとめるぞ。頼めるか書記」
「任せて」
生徒会室を後にして風紀に戻り、監視カメラに映るモニター監視役と見回り役と分担。監視役は3年の先輩6人、残り26人で見回りをすることとなった。
監視カメラの死角や設置していないところまでしっかり経路を確認し、それぞれ分担する。2人ずつチーム分けして、異変があれば連絡し合う。
そんな感じに纏まり全てが終わったのはなんと18時過ぎ。反省文書いてた方が早く終わったんじゃないかってレベル。
ゲームやるのは20時になりそうだ……