1話〈前編〉
陽が傾き、教室はオレンジ色に染められている。
遠くのグラウンドから聞こえてくる野球部の練習の音以外聞こえてこない。
そんな教室で俺は見た。
こちらを気付いて困ったように笑う学級委員長を。
委員長は黒い翼を生やしていた。
やってしまった。明日提出の課題プリントを教室の引き出しに入れたまま忘れてくるなんて。
しかも担当教員は鬼の中島だ。
課題を出し忘れた時の恐怖を思うと、学校へのもう一往復なんて朝飯前だ。晩御飯前だけどな。
そんなしょうもない事を考えていると気付けば教室に着いていた。
その時視界に映った光景を俺は一生忘れないだろう。
突然入ってきた俺に驚いてビクッと肩を揺らす人物。
背中に黒い、全ての光を吸い込んでしまいそうな翼を生やした我がクラスの委員長・秋葉コウだった。
俺が驚きや恐怖やその他様々な感情に押しつぶされて固まっていると、秋葉は困ったように笑いだした。
「忘れ物でもしたの?マル君」
自分の名前を呼ばれてやっと我に返った。
「あ、あぁ。秋葉は勉強でもしてたのか?真面目だな。流石うちの委員長」
気付けばそんな素っ頓狂な事を口走っていた。
しかしそう言われた秋葉はプッと吹き出した。
そしてそれを見た10人に9人は恋に落ちてしまいそうな笑顔でこう言った。
「ワタシさ、こう見えて秘密があるんだよね」どの口が言うのか。
「マル君はさ」秋葉は楽しそうに笑いながらそう前置きした。
「ワタシが世界の中心だったらどうする?」
読んでくださりありがとうございます。学校物のセカイ系なんて時代錯誤かもしれないですが書いてみたかったんです…笑 もしよろしければ感想を頂けると幸いです。