硝煙と残雪の中で
テルメデを後にして数時間後。まもなく朝日が見える頃だろうか。そんな時間帯。
--ま! --兄さま! ファル兄さま! 起きてください!
呼ばれて、ファルはまどろみの中から目を覚ました。
「ファル兄さま!」
「……なんだなんだレイちゃん、起きたから起きたから」
ふぁあっとアクビをして、ベッドから抜け出す。ちなみに服装はあまり金属のないツナギだ。いわゆる部屋着である。
「で、何かあったのか? レイちゃん」
「ええ! とりあえず艦橋まで来てください!ファル兄さま、喜ぶと思いますよ」
そう言い、キラリンと光を残して消えるレイ。やれやれと、ファルはサンダルをひっかけ、ゆっくりと艦橋へ向かう。
廊下に出ると、空気の冷たさに若干驚いた。早朝と言うこともあるだろうが、北方の国、パシ・ヘスタが近づいてきているのが最もたる理由だろう。
テルメデ辺りは春爛漫としていたが、パシ・ヘスタはまだ片足を冬に残している状態なのだ。
「来たぜー」
「兄さま、ほら! 外!」
何やら興奮気味のレイに促され、ファルは窓から外を覗いた。
「お? おお!? ありゃあ……! レイちゃん回線開こうぜ回線!!」
「もう開いてますよ!」
聞くや否や、ファルはヘッドセットを装備し、軽く咳払いをしてから大きく息を吸った。
そして。
「もーしもしもしもしぃ! 元気してたかぁ義弟!」
『義兄さん! 』