運び屋
抱き着いてくるのはアンリのこと。
ポチはヤトのこと。
○月×日
朝、魔王様と一緒に宿屋をでて、あの女からの襲撃を阻止した。
魔王様に抱きつく前に、がっちりガードした。
来るとわかっていれば守るのはたやすい。しかし、結構なスピードで抱き着いてきたので痛かった。
なぜか女はニコニコしながら帰った。余裕の表情というやつか。明日も負けん。
魔界から荷物が届いた。届けに来たのはポチだった。
頼んでおいた、種と鍬を魔界から持って来ていたので受け取った。
それとこの村へ来る途中、リンゴがあったのでとってきたらしい。
エルフに追いかけられたが振り切ったようだ。よくやった。
魔王様は仕事中だったがポチに挨拶させた。その時に、ちらっと畑をみたが、すごい広大だ。
あと、種と鍬を魔王様に渡した。
鍬はミスリル製だと言って渡すと、魔王様はちょっと止まった。
私としてはオリハルコンとかアダマンタイトの方が良かったのだが。
顔を引きつらせていたが、ありがとう、と言ってくれたので問題はなかったようだ。
また、種についても聞かれたので、マンドラゴラの種です、と答えたら、また魔王様は止まってしまった。
アルラウネの種とかのほうが良かったのだろうかと心配したが、大事に育てるよ、と言ってくれたので、これも問題なかった。
魔王様お仕事の邪魔をしてはいけないので、ポチをつれて村をまわった。
雑貨女と受付女に紹介すると、名前を聞いたとたんに顔をしかめた。あとで知ったが、どうやら名前と容姿が合っていなかったらしい。
今日、ポチはこの村に泊まるようなので、一緒に宿屋に戻った。
親父さんがポチを見ると、手に持っていた水の入ったコップを落とした。私の足に水がかかった。
その後、ものすごい勢いで土下座して、ポチにウェイトレスをやってくれと頼んできた。
私もポチもかなり引いた。
宿代、食事代タダ、ということでポチはウェイトレスの仕事を引き受けた。
この時気づいた。ポチは猫の獣人だ。
昨日、親父さんが私にやってくれと言った、猫耳やら猫語がポチには標準装備だ。
ポチは愛想がないので、大丈夫かと思ったが、店はかなり繁盛した。疲れた。
客からは、クールビューティーとか言われていた。今は運び屋をやっているが、元暗殺者だから分からんでもない。
ウェイトレスの仕事が終わった後、ポチに長期契約を結びたいと親父さんは言っていた。
魔王様の許可なくそういうことは出来ないので、返事は明日までまってほしいと伝えた。
部屋に戻ると魔王様がまだ起きていたので、ポチの件について話した。
良いんじゃない、と言っていた。軽くないでしょうか、魔王様。
ポチも頷いて、明日から一緒にウェイトレスをすることになった。
先輩としてしっかり教えてやろう。
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