特訓
○月×日
今日は雑貨女に色々と教えてやった。色々と面倒だった。
朝、魔王様を仕事に送り出した後、雑貨屋へ向かった。
途中で商人たちに会った。今度会うときはリンゴを仕入れてこい、と伝えた。
雑貨屋に着くと、『臨時休業。探さないでください』と店の入り口に張り紙がしてあった。
探索魔法で調べたら、宿屋にいた。宿屋から来たのに気付かなかった。
宿屋の一階、酒場で雑貨女は飲んだくれてた。オレンジジュースで酔うのだろうか。
宿屋の親父さんもおかみさんもちょっと困っていた。開店前だし邪魔だ。
仕方ないのでここで一から説明してやった。
『魔法行使不可』があるから魔法が使えないこと。
『魔法行使不可』がLV5になれば、『魔法無効』になること。
『魔法行使不可』をLV5にするには、全属性の攻撃魔法を受けること。
あとは魔眼でみた結果を説明した。
スキル『魔法付与』を持っていること。
スキル『高速スキル』を持っていること
全属性の魔法スキルを持っていること。
ほかにもスキルはあるけど、ダメなスキルなので、言わなかった。空気読んだ。
聞いていた雑貨女は信じていないようだった。
親父さんやおかみさんも信じていない様だった。魔王様の言葉を疑うとはいい度胸だ。
仕方ないので、練習できそうな川辺に連れ出して特訓してやった。
まずは、そのへんの石ころに魔法を付与するイメージをさせる。
その石に魔力を通してから岩にぶつけるといった特訓だ。
一回目から成功させやがった。火の魔法を付与して、岩にあたるとちょっと石が燃え上がるレベルだが。
雑貨女が、信じられない、といった顔でこっちをみた。尊敬するが良い。
なんで魔法が使えるのか聞いてきた。仕方ないので説明してやった。
『魔法行使不可』は、自身が魔法を行使できないだけで、自分以外が魔法を行使するのは問題ないこと。
『魔法付与』は、魔法じゃなくて言葉通りスキルであること。
『魔法付与』された石の魔法が発動しただけなので、自身が魔法を発動したわけではないこと。
『高速スキル』があるから、瞬間的に『魔法付与』が使えること。
説明が終わると、雑貨女は泣き出した。何故だ。
様子を見ていたおかみさんが雑貨女を抱きしめていた。おかみさんに鼻水がついた。
あとは、『魔法付与』スキルを何度も使えばLVが上がって、上位の魔法も付与できると教えてやった。
うんうん、と泣きながら頷いていた。鼻水とか涙が色々と汚い。
その後、『魔法行使不可』を『魔法無効』にできるが、するかどうか聞いた。
『魔法無効』にはデメリットもあるのでしっかり教えてやった。
『魔法行使不可』と同じように魔法を行使することはできないこと。
あらゆる魔法を無効化するので、回復系や能力向上系の魔法も無効化されること。
自分の意志で無効化できるわけではなく無条件に無効化すること。
とくに回復系の魔法が無効化されるのは大変なので、魔法に頼らない回復手段が必要なことを伝えた。
ほとんど考える間もなく、『魔法無効』にすると言ってきた。
なので、軽く闇魔法をぶつけた。
それだけで『魔法無効』になった。
なぜかと思ったら、魔法学校に通っていたとき、魔法でいじめられたらしい。
闇魔法以外はほとんど受けたことがあるそうだ。
その話を聞くと、また、おかみさんが抱きしめていた。また鼻水がついた。
最後に、おまえは魔王様と私に借りができたからいつか返してもらう、と言った。
なぜか、雑貨女はうれしそうに、わかった、と言った。
その後、雑貨女は練習すると言って、一人で残った。頑張るが良い。主に魔王様のために。
おかみさんと一緒に宿屋に帰ってウェイトレスの仕事をした。
まかないではなく、普通に料理がでた。雑貨女の件のお礼だそうだ。うますぎる。
今日は商人がいないので人が少なかった。楽で良い。
親父さんが、なんとかしなくては、と言ってた。やめろ。
部屋に戻ると魔王様がいたので、雑貨女のことを説明した。
この調子で人族と仲良くなっていこう、と言われた。
別に仲良くしたいわけではないが、魔王様がおっしゃるなら従うまでだ。頑張ろう。
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