夜盗再び
○月×日
今日は色々大変だった。
冒険者ギルドにいくと、珍しく騒がしかった。
話を聞いてみると、この間捕まえた野盗に逃げられたらしい。
昨日、引き取りに来たやつらも同じ野盗で、まんまとだまされたようだ。
今日、正式に引き取りに来た衛兵に受付女は怒られていた。噂話ばかりしているからだ。
さらに、その野盗達は今日来るはずだった商人たちを襲って、アジトらしきところに連れて行ってしまったらしい。仕事熱心な野盗だ。
この件は、一人逃げ出した商人がここまで逃げてきて発覚したそうだ。
ここから二時間ほど歩いたところにある洞穴をアジトにしているようで、明日にでも討伐に出かけるとのこと。
手伝ってくれと頼まれた。面倒くさい、と答えると、払うはずの報奨金を倍にするといわれた。まず、前回分を払え。
魔族だけど良いか聞くと、顔をしかめられた。ただ、村長や受付女の説得で、問題ないことになった。
報奨金は魅力的ではあるが、自分では判断できないので、魔王様に相談した。
やっちゃっていいよ、と言われた。言い方が軽い。
魔王様も来てくれるか聞いたら、畑仕事があるから、と断られた。さらに、殺さないようにね、と言われた。
魔王様はすぐ無茶を言うが、その後、魔王様が、正面から両手を私の両肩において、信じてるよ、と言った。
頑張ろう。死ぬ気で殺さない。
衛兵達に手伝うことを伝えた後、支度金をもらったので明日の準備をした。
素手だと殺しかねないので、攻撃力の低い武器を使うようにした。なので、宿屋の親父さんに黙ってモップを貸りる。
折れないように耐久力を上げる魔力を付与したら、モップから、魔モップになった。言いづらい。
ユニークアイテムになったので名称もついた。索敵必滅と言うらしい。なんだこれ。
モップにはスキルとして、汚れ発見率上昇、洗浄速度上昇がついた。
念のため、雑貨屋で薬草を購入しようとしたら、薬草なんて置いてない、と言ってきた。
お前の店は何を売っているのだと思ったが、どうやら薬草を煎じて、ポーションにしているらしい。
人族すごい。塗り薬を飲み薬にできるのか。あとでやり方を教えてもらって魔界に連絡しよう。
とりあえず、そのポーションとやらを買った。瓶が割れそうで怖い。
久々にものが売れて、雑貨屋の女は嬉しそうだ。
お前も討伐に参加しろ、といったら、武器も魔法も使えないとぬかした。
その辺の石ころに魔法を付与して投げれば良いだろ、と言うと、そんなことできない、と返答された。
また、話がかみ合わない。こいつは何を言っているのだろう。
準備を整えたのでウェイトレスの仕事をした。
衛兵達もこの宿に泊まるようだが、数人は見張りで村の周囲を守っているそうだ。
明日、討伐だからということで、おかみさんが腕を振るってくれた。
まかないがすごいことになった。うますぎる。
仕事を終えて部屋に戻ると、魔王様が待っていてくれた。
一緒には行けないけど、気を付けるんだよ、と言われた。
この前の野盗なので、心配いりません、と言うと、野盗を殺さないように気を付けて、という意味だった。
ちょっともやっとする。今日はもう寝よう。
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