表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王様観察日記 設定集  作者: ぺんぎん
魔王様観察日記(原型、日記バージョン)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/53

遭難

 〇月×日

 人界に来て3日目、魔王様は相変わらずワイルドボアを狩ってきた。


 朝昼晩、3食ワイルドボアの肉だった。不満だ。


 もしかして魔王様は肉が好きなのだろうか。


 文句は言えないが、明日、ちょっとくらい申告しておこう。ワイルドボアの肉はもう嫌だ、と。


 あとは、何故この森でさまよっているのかを聞いておきたい。


 3日前、森に入るとき、迷子にならないでしょうか、と聞いたら、魔王様は、大丈夫と言っておられた。しかし、大丈夫ではない気がする。


 魔王様は木に目印をつけていたが、もう、あちこちにある。


 私には区別がつかないが魔王様には区別がつくのだろうか。


 もしかして迷子ですか、と聞いてみたら、迷子じゃない、と答えてくれた。ただ、目を合わせてはくれなかった。


 魔王様を信じてはいる。それは間違いない。だが不安だ。


 ――――――――――


「だからワイルドボアの肉は……」


「うるさい、黙れ」


 ルゼがフェレスを静止した。フェレスは口をパクパクさせていたが、素直に従った。


「森で遭難しとるのう」


「遭難中に森の中で日記を始めましたの?」


「ま、まあ、始めるきっかけは人それぞれですから」


「あのー、よくわかりませんが、森って迷うものなのですか?」


 リアが首を傾げながら聞いた。


 聖女の称号を持つ彼女には、常に聖人教の護衛がつく。一人で出歩くことがない彼女にはわからないことなのだ。


「聞いた話ですが、かなり昔はそうだったらしいですわ。今は魔石と呼ばれるものを、町などの要所に置いていますから、探索系の魔法で大体の位置は把握できますわね。かなり正確な地図もありますし、遭難することはほとんどないはずですわ」


「そうなのか? いつも変なところに着くけど」


「そりゃ、おっさんだからだ。『方向音痴』のスキル持ちだろ」


 フェレスはどちらかというと役に立たないスキルの持ち主だ。ただ、そういったスキルを持つ者は、別の役に立つスキルを持っていることが多く、全体で見るとプラスになることが多い。


「そういやそうだった。そういえば、このスキル、この間レベル上がった」


「ダメなスキルのレベルを上げんなよ」


 スキルはレベル制だ。レベルが高いほど効果も高い。スキルを使用するほどレベルが上がると言われている。


「しかし、木に目印をつけているということは、探索魔法を使っていないということになります。魔石がない時代とは、どれくらい前になるのでしょう?」


「……魔石を設置し始めたのは、いまから300年ほど前だ。設置が終わるまで20年は掛かったといわれている」


「あら、くわしいですわね」


「……学者ならだれでも知っている。そもそも魔石が見つかったのが1000年ほど前で――」


「教授、長くなるならやめてくれ」


「……分かった。聞きたくなったら言ってほしい」


 皆、それはない、と思った。エルミカに歴史的なことを聞くと止まらないのだ。


「この魔王や筆者が魔石の存在を知らないという可能性は?」


「ないと思うがの。人界に疎い儂でも、魔石に関しては知っとるよ。そもそも魔石の設置には魔族が協力しておるはずじゃ。そうじゃろ、学者の嬢ちゃん」


「……その通りだ。そもそも、ただの石と思われていたものが、特定の魔力に反応するということを発見したのが魔族だ。その発見には――」


「ふーん、じゃあ、この日記は少なくても300年以上前のものってことか?」


 ルゼがエルミカの説明を食い気味に遮った。エルミカはそれ以上の説明はつづけなかったが、ちょっとしょんぼりしている。


「創作日記でなければ、ですけどね」


「創作だったとしても、アビスにあったというだけで価値はありますけどね。コレクターもいますし」


 アビスで見つかるものは、それだけで価値がある。これまでも、アビスで見つかった武器や防具、魔法書や技術書等は、すばらしい性能や内容だった。


 そのため、たとえガラクタのように見えても、何かしら価値がありそうだ、という風潮がある。


「ところで、この日記って誰が書いたか分かるか? ダンジョンの製作者か?」


「アビスの製作者は分かっていませんが、1000年前にはダンジョンがあったといわれています。筆者をダンジョンの製作者として考えると300年前ではなく、1000年前の日記になりますが……」


「……アビスの最下層に誰かが住んでいた様子なのだろう? もしかしたら、この魔王と筆者が踏破して、しばらく住んでいたのではないか? そもそもダンジョンは――」


「なるほど! では、ダンジョン探索の内容が、日記にあるかもしれないのですね」


 スタロは嬉しそうに日記を見た。


 迷宮都市は、アビス内で見つかるものを、売買することで多くの富を得ている。


 利用価値の高いアビスの情報が得られるのは、今後の探索を容易にしてくれる可能性があるのだ。


「魔王がアビスを踏破したという記録は魔界にないのじゃが」


「記録に残らないほどのお忍びだったのかもしれませんね」


「まあ、誰でもいいけど、最下層に日記を置かなくても良いんじゃねぇか? 魔法書とか置いとけよ」


「いや、そこは魔剣だろ。ここはゆずれん」


「うるせぇ。というか、ただの希望ぐらいゆずれよ、この武器オタクが」


「お前だって魔法書マニアじゃないか」


 ルゼとフェレス以外も、最下層に置いてあってほしいものを思いついたが、絡まれたくないので何も言わなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ