春
水曜の5時限目は体育の授業だった。
昼食を食べてすぐに運動なんて私はごめんだ。
しばらく日陰でぼうっと立っていると少し、肌寒くなってきた。まだ5月も始めなのでやはり半袖は寒かった。
得点板をちらりと見るが、未だに両チーム0点だった。
全く不毛な争いだ……
楽しそうにソフトボールをしていたクラスメイトがバットをもってこちらへやってくる。
「はい!次ははるちゃんの番だよ!」
元気に笑いかけてくるクラスメイトに笑顔でありがとうと礼を言う。
……上手く笑えてたかな?
バッターボックスに向かう途中、ふと、ただ一つ空いている窓を見た。
中から「そう」が私を見ていた。
たぶん、あの憮然な顔も、無理に作った笑顔も見られていたんだろう。
そう思うと少し気恥ずかしくなり、何もかも見透しているような目に自然と笑顔がこぼれてしまった。
せっかく上手く笑えたのに彼はすぐに目を反らしてしまった。
そうの真面目な横顔に、少し寂しい気持ちを抱いた自分に、気付かないふりをして、バッターボックスに立ちまっすぐと前を見つめる。
……あーあ、またそうの事考えちゃってるな……
いつもは緊張するバッターボックスもどこか懐かしく感じられ、小さな頃の草野球を思い出す。
そうの見事なホームランをただただ眺めるだけだった私は、今、同じようにバッターボックスに立っている。
そう思うといつの間にか緊張が解れ、自然に、力強くバットを振り抜く。
バットにかかる重みに、少し遅れて黄色い歓声が聞こえる。
私はなにも考えず、ただひたすら走った。
あの時のそうのように、青い空を飛ぶ鳥のように……
ホームベースに戻ると、クラスメイト達が笑顔で出迎えてくれた。
得点板に1点が刻まれ
私は彼に少しだけ近づけた気がしていた。
取り敢えず、完結です。
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