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習作

【習作】運命の道

作者: さとう

2年ぐらい前には書き終わってたもの。いろいろあって忘れてた。

「それは神話の時代から受け継がれてきた、人の世が終わる敗北の道だ。かつての英雄も、すべての救世主も同じ道を見、辿って行った。そして救われることのない道だ。彼らの顛末を知るなら分かるだろう。残されたのは彼らの犠牲の上に成り立つ世界の平和だけ。彼らは己を殺し、世界に広がる暗雲を晴らすため、たった一人で暗く険しい、艱難辛苦のその道を歩み征服していった。君に見えるのはきっとそれと同じ道だ。

 同時に、それが正しかったなら、君は新たな英雄、或いは救世主になりうるかもしれないな」


 ――そうだとしたら、私が進むべき道というのは……

 すべてが終末へと向かい進んでいる。誰かが食い止めねばならない。その誰かは自分、しかいない。私が辿る一つ一つの軌跡の結末は知っている。また、目覚めるだけだ。それだけですべてが救われる。

 新たな結末として体験したこの世界は、同時に新たな物語となり、記され、終わらない調べとして歌い継がれ、人々に刻まれていく。この物語は時代の幕開けであり、歴史の糧となる。

 私の記憶は、歌とともに後世へ――未来へと繋がってゆく。

 

 何もかもが終わった。これで終わりだ――

 深い疲労が全身を覆い、眠くなってきた。もう、このまま眠ってしまおう。次の目覚めまで……

 繰り返される目覚め、破滅と再生。人々の言う『救済』は私の『破滅』であり、『終末』は『再生』である。それが私の徴なのだ。寄せては返す潮の満ち引きにも似て、二度として同じ形を持つことのない永遠を彷徨い続ける。


 混沌とした私の体験は、彼らに伝わらない。正しく伝わる必要なんかない。真実は私だけに、彼らには救いがあればいい。一つのすべてで、すべての一つが変わる。

 私がいたことで、暗い未来は明るく照らされる。たったひとつの意志でそうなるのならば、世界に祝福が訪れるまでひたすらに永遠を征こう。いつかきっと、私自身のすべてを征服することができる日まで。


 私の混沌、世界の未来。その混沌と未来の交接を、私自身の内腑で味わった時、古から続くものが流れてゆくのを感じた。それは、いつか敗北の道だと言われたもの。だが、感じたのはそれだけではなく〈不滅〉と、そして〈喜望〉だった。

 栄光と挫折、繁栄と頽廃、豊饒と貧困……陰陽の成す契りがどこまでも続く、決して断ち切ることなど出来ない、連綿と続いてゆく〈運命〉。その中に見出した〈不滅〉と〈喜望〉。直観で確信した。この道の先に目指すべき世界が待っている、と。

 今に思えば私はそれを信じる、あるいは、信じるしかなかったのかもしれない。


 眠りとともに朽ちていく中で、ほんの少しだけ、今まで感じたことのない新たな世界への萠芽を感じた。私と世界を繋ぎ止める、いつも近くで感じていたものが消え、かつて私が失ったものが目指していた世界が開かれてゆく。

 虹色に輝く世界、幸福の到来、平和な時代、笑顔の咲き誇る未来。

 やっと、やっと私は超えたのだろうか。これで、私は本当の永遠の中へ……。

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