第四話:寝起きのギャップ
少しコメディが入りました。
「・・・・・ん」
私は額に温かい感触を感じ目を覚ました。
「・・・・ここは・・・・・・・・?」
周りに目を回すとさっきまでいた客室のベッドの上だと分かった。
窓から見える太陽は既に空高く上がっていた。
「・・・・・お目覚めになりましたか?」
フレアがずれた濡れタオルを直しながら私を見た。
「・・・・・私は一体・・・・・・・?」
「刺客に毒が仕込まれた短剣で背後から刺され三日間うなされていました」
フレアに言われ改めて思い出した。
部下が助けに来てくれて屋敷を出て小船に乗ろうとしたのを後ろから男に刺されて部下達が男に襲い掛かって、そこで意識を失ったんだ。
そうだ!部下だ!!
「ぶ、部下は?!私のぶ・・・・・・・・・・・」
ベッドから立ち上がりフレアに詰め寄ったが最後まで言う前にフレアに頭を押されベッドに強制的に寝かされた。
「慌てなくても貴方様の部下は全員が傷を負っていますが無事です」
「・・・・・・本当?」
私は疑う眼差しをフレアに向けた。
「本当です。貴方様が疑うのも無理ありませんが、この屋敷のフォカロル将軍も男爵様も捕虜に無慈悲な行いはしません」
私の疑う眼差しにもフレアは真面目に答えてくれた。
「貴方様の部下達の中に女性が二人いたので傷が治りしだい此方よりも大きい客室にご案内します」
フレアは一礼して部屋を出ようとした。
「待って!」
「・・・何か?」
首だけを動かし尋ねてくるフレア。
「ここまで私を誰が運んだの?」
「・・・・男爵様です」
少し間があったがフレアは答えてくれた。
「男爵様が毒で手当てを急ぐ貴方様を抱いて屋敷まで運んでくれたんです」
男爵が私を?
「男爵様は貴方様の思っている程、恐ろしい方ではありません」
それだけ言うとフレアは頭を下げ部屋を出て行った。
「・・・・・・・・・・・」
後に残された私はフレアが言った言葉が頭から離れず寝付けなかった。
「・・・・男爵様」
フレアはフォカロルから与えられた部屋で眠る夜叉王丸のドアノブを叩いた。
「・・・・・・・・」
しかし、部屋からの返事はなかった。
「・・・・失礼します」
断ってからドアを開け部屋に入るとベッドで小さな寝息を立てながら眠る夜叉王丸に近づいた。
「男爵様、起きて下さい」
夜叉王丸を揺さ振ってみるが夜叉王丸は身じろぎをしただけだった。
「男爵様っ。起きて下さい。もう昼ですよ」
少し力を入れて揺さ振ってみる。
「ん〜、後、五分だけ〜」
普段の姿からは信じられない可愛らしい声がフレアの耳に入った。
「だ、駄目ですっ。将軍が呼んでいるんです」
一瞬、許そうとしたが心を鬼にして夜叉王丸を起こしに掛かった。
「ふぁー、まだ寝足りないなかったんだがな」
今度は打って変わって目付きの鋭い怖顔になり声も渋く低い何時もの声に変った。
『本当に寝起きのギャップが激しいわよね』
夜叉王丸が起き上がり乱れたシーツなどを直しながらフレアは思った。
この男爵は眠っている時と寝起きのギャップが激しいと思う。
彼と夜を共にした女性達は彼のギャップに戸惑ったがそのギャップが何とも良いと絶賛していた。
「ふぁー、フォカロルは?」
「中庭でコーヒーを飲んでいる所です」
「わふぁかった」
欠伸交じりに礼を言うと夜叉王丸はドアに近づいた。
しかし、寝巻き姿のまま部屋を出ようとする夜叉王丸をフレアは慌てて止めた。
「服を着替えて下さいっ」
「んー、面倒臭いー」
愚痴を溢しながら夜叉王丸は寝巻きを脱ぎ始めた。
「髪の手入れは私がするので着替えてもいて下さいよ」
脱ぎ散らかした寝巻きを拾いながら洗面所に向かう夜叉王丸に言った。
「・・・・・ふぁーい」
「はぁー」
気の抜ける返事をする夜叉王丸にフレアは小さくため息を吐き寝巻きを畳みベッドに置いた。
これからも精進します。