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第十七話:再開と告白

何十本もの火の蝋燭がステンドグラスや美術品に反射して煌びやかに輝く廊下を私は夜叉王丸を先導して歩いていた。


部屋に着くまで私の胸の鼓動は激しく動いていた。


『どうして夜叉王丸が来ているの?』


魔界からの和睦使者だと夜叉王丸は言った。


仮にも皇子である夜叉王丸が敵陣に数人の部下だけを連れて来るなど無謀もいい所だ。


あまりの無謀さに怒りを感じたが同時に無事である事と再び会えた事が嬉しかった。


一月前と変わらない様子の夜叉王丸に安堵の気持ちが出たが表には出さずに事務的な動きで客室まで案内した。


「・・・・・こちらが部屋です」


客室のドアを開け夜叉王丸を中に入れる。


「・・・・では、私はこれで失礼します」


本当はまだ居たかったが、長居すぎると変に思われると判断して退出しようとした。


恐らく私がこの部屋を出れば、もう会う事はないだろう。


『さようなら。夜叉王丸』


一礼して部屋から立ち去ろうとした。


しかし、腕を掴まれ振り向かされると唇を奪われた。


「・・・ッ!!」


一瞬だけ理解できなかったが唇が重なる感触で我に返った。


すぐに離れようとしたが回された腕に後頭部を抑えられた。


夜叉王丸の口から舌が出され無理やり私の口を割ると中に入ってきた。


「・・・・・・・!!」


夜叉王丸は貪るような動きで私の口の中を凌辱した。


貪る舌は情熱的に口内を動き回り私の舌を絡め取ると優しくなぞった。


「ッ・・・・!!」


ビクッ


と反応する私を夜叉王丸は瞳を細めて咽喉で笑った。


私は初めての経験で何の抵抗も出来ず彼にされるがままにいた。


呼吸が苦しくなり足に力が入らなくなり夜叉王丸にもたれ掛かると彼は力強い腕で抱き締めた。


私は彼の背中に手を回ししがみ着いた。


どの位の時間が経ったか分からない。


暫くしてからやっと解放された。


唇を離すと銀色に光る唾液の糸が橋を作っていた。


荒い息をして身体に力が入らない私を夜叉王丸は優しく横抱きにするとベッドまで運んでくれた。


ベッドに行くまで間近で夜叉王丸の顔が見えた。


美形とは違い逞しく男気に溢れていた。


ベッドに着くとゆっくりと降ろされた。


「・・・お前に会いたかったぞ。ヴァレンタイン」


ベッドに座る私を優しい瞳で見て微笑む夜叉王丸。


さっきの情熱で獣のような口付けをした男とは思えなかった。


「・・・・どうして・・・・・・」


私は唖然として言葉が出なかった。


行き成り唇を奪われ舌まで入れられたのだから・・・・・・・!!


呆然とする私に夜叉王丸は笑いながら言った。


「お前を迎えに来た」


「私を迎えに・・・・?」


何を言われているのか解らなかった。


私が天界に帰れるように身を費やしていたのに、何で私を迎えに?


「別れ際にあんな殺し文句を言われたら連れ戻したくなる」


くくくくっ、と咽喉で笑う夜叉王丸。魔界に居た時のように無表情か強張った顔ではなく愉快そうに笑っている。


これが本当の夜叉王丸の姿かも知れないと感じた。


だけど、ここで矛盾に気付いた。


夜叉王丸は私を天界に帰そうとしていた。


何で今更になって私を迎えに来るなんて真似を・・・・・・?


そして、さっきの口付けは何だったのだ?あの口付けは・・・・・まるで罪を咎めるような口付けだった。


私が何をしたというの?


「お前、自分の想いを気付かれてないとか思っているのか?」


私の考えを読んだように喋る夜叉王丸。


「俺はお前の気持ちを知っていた」


衝撃の事実を言われた。


夜叉王丸は私の好意を知っていた。


その事を聞いて我慢していた気持ちが爆発した。


「・・・だ、だったら、何で私を天界に返すなどと言ったのですか?!」


貴方が天界に返すなんて言わなければ、私も覚悟を決めて魔界に骨を埋める気だった。


私の気持ちを知りながらなんで私を・・・・・・・


「・・・・すまなかった」


涙を流す私を優しく抱き締める夜叉王丸。


「お前が天界に帰りたがっていたから、無理やり魔界に縛り付けるのは良くないと思ったんだ」


すまないと再度、謝る夜叉王丸。


これは私にも落ち度があると思う。


私が未練がましくしていたから、こんな事になってしまったのだ。


しかし、夜叉王丸は私を責めなかった。


暫く私を抱き締めていた夜叉王丸が不意に離れて私に視線を合わせた。


彼の黒真珠の瞳と私の緋色の瞳が重なった。


「今さら遅いかも知れないが・・・・・」


一度、言葉を切ると決心したように口を開いた。


「・・・・俺と一緒に魔界に帰ってくれないか?」


抱き締めていた手を私の肩に置き話し掛ける夜叉王丸に私は頷いた。


「・・・はい。貴方と一緒に行きます」


貴方と一緒なら地の果てでも平気。爵位も職務も故郷も全て捨てる。


貴方を愛する事が出来るのなら天に、神に弓を引いて“堕天”の汚名を被るのも厭わない。


だから、私をずっと貴方の傍に置いて・・・・・・

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