第三話:助けに来た部下達
早い展開になってしまいました。
「フォカロルの野郎、何を言いたかったんだ?」
フォカロルとチェスを終えた後は夕食を終え風呂に入り貸して貰った部屋で煙草を蒸かし思考していた。
『本当にそれだけか?』
フォカロルの放った言葉には何か意味が含まれていた。
俺はただあの天使の娘が一人帰還を許されずに落ち込んでいたから出来るだけ力になってやろうと思っているだけだ。
何で一人だけ帰還を許されなかったのか?
先ず仮にも貴族である者を一人残す理由が無い。まぁ、内輪揉めで何かあったかも知れないが・・・・・・・・・・・
俺やフォカロルを殺す為に残されるという考えも浮かんだが態々、貴族を使わずとも使い捨てを使えば良いから消えた。
過去に俺を暗殺しようと刺客が送られたが全てが使い捨てだった。
しかし、ヴァレンタインが刺客ではないという考えは捨て切れない。
ヨルムから送られた資料に目を通した。
あいつには戦後処理ではなく何故、ヴァレンタインが天界に帰れないのかを調べさせていた。
『名前:ヴァイクトリア・レオノチス・ヴァレンタイン。
性別:女。
所属部隊:死天使。
天使階級:能天使。
貴族階級:子爵令嬢。
百八十歳(人間で十八)の時に死天使の対化物部隊に入隊し女性で唯一、部隊体長になるも厳し過ぎ理想主義の為に上層部の受けは悪く今回の作戦でも必要な装備を用意されずに出撃され捕縛されたもの。
天界にいる婚約者のユニエールという主天使が彼女を天界に戻すべく上層部に願っている模様ですが、その他にも何やら裏がありそうな模様なので引き続き調査します。
しかし、部下からの人気は高く彼女を奪還するべく作戦が練られている模様なので警戒するようにお願いします』
資料を読み終えると机に置き吸い終えた煙草を四角形の灰皿に捨てた。
「・・・・・警戒ねぇー。もう遅いな」
せっかくヨルムからの忠告も無駄に終わりそうだ。
俺の放っておいた風の精霊達が耳元で囁いていた。
『侵入者が入っております』
「やれやれ。せっかく早く寝ようとしたのに・・・・・・・・・・・・」
ため息を吐きながら壁に立てていた同田貫を持ち部屋を出た。
ただあいつを天界に帰すなら問題は無い。
それ所か無事に帰れるように手回しをしてやる。
だが、一人だけ上手く隠しているようだが殺気がある奴がいる。
「面倒くせぇな」
ぽりぽりと頭を掻きながら廊下の道を早足に動いた。
私はフレアが用意した夕食を取り部屋にあった浴室に身体を洗うと急激な眠気に襲われベッドに入り眠っていた。
暫らくすると人の気配がして目を覚ますとベッドの端に武装した黒染めの服を着た帰還した部下達がいた。
「お迎えに上がりました。隊長」
副官だった部下が私に頭を下げた。
「お前達・・・・・・・・・・・・」
私は感動のあまり何も言えなかった。
「さぁ、長いは無用です。ここから脱出しましょう」
私は直ぐに頷くと着ていたネグりージェの足まで伸びた裾を破くと部下に渡された剣を持った。
「では、こちらへ」
部下に案内され部屋を出た。
ドアの近くには気絶したのか二人の兵が倒れていた。
廊下に出ると侵入した窓から出て用意された馬に乗り屋敷の壁を越えて屋敷を後にした。
暫らく進むと川の近くに小さな小船が用意されていた。
「この船で沖まで行きそこからは用意した船に乗ります」
馬から降りた部下が命令して小船に近づいた。
「これで天界に帰れる」
私は湧き上がる涙を抑えながら小船に近づいた。
小船まで後数歩という所で背中に衝撃を受けた。
一瞬だったが、その後は生暖かい感触と力が抜けて地面に倒れた。
後ろを振り返ると血塗れの短剣を握り薄ら笑う見た事も無い男がいた。
・・・・・・・誰?
薄れ行く意識の中で私は部下達の声を聞いた。
ごめん。せっかく助けに来てくれたのに天界に帰れないで・・・・・・・・・・
部下達は涙を流していたが、直ぐに怒りの表情になり私を刺した男に斬り掛かって行った。
私は剣のぶつかる音を聞きながら意識を手放した。
出来るだけ長い作品になるように努力します。