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第六話:遠くない未来

「・・・・あいつに何を吹き込んだ?」


俺はベルゼブルの胸倉を掴んで尋ねた。


正午にフレアからヴァレンタインの様子がおかしいと聞かされベルゼブルと朝食を共にしたと分かった。


直ぐにベルゼブルが何かしたと感づいて着替えを済ませて執務室に押しかけ今に至る。


「乱暴な聞き方だな」


ベルゼブルはニヤニヤしていた。


こいつが笑う時は自分の思い通りになった時だ。


「俺はただ子爵令嬢に狸公爵の悪行を伝えただけだ」


両手を上げるベルゼブル。


「嘘つけ。何か他にも言っただろ」


ギリギリと締め上げる。


「そこまで怒るとはかなり重症だな」


ベルゼブルはニヤニヤと笑いながら俺を見て来た。


ちっ。むかつく奴だ。


「・・・・けっ」


俺はベルゼブルから手を放すと背を向けドアに向かった。


「なんだ?帰るのか?」


「・・・・お前が知った事じゃないだろ」


苛立った口調で答えると乱暴にドアを開けて部屋から出た。


くそっ。気に食わねぇ。


あいつの手の平で踊らされているようで・・・・・・・・


実際、本当にあいつの思惑に事が進んでいるのかも知れない。


あいつは、ヴァレンタインを天界に帰す気は無いだろう。


瞳の中に隠してあった純粋な欲望が映っているのを俺は見逃さなかった。


だが、あいつの思い通りになるほど馬鹿でも従順でもない。


「・・・・あいつは天界に帰してみせる」


例え、この身があいつをどんなに欲しようと心が手に入らないなら手放す。


「・・・心が手に入らないなら、ただの人形を抱くのと同じ事だ」


そんな女を抱く位なら自分の手の届かない所に放った方がマシだ。


「つくづく悪になり切れない男だぜ」


自分の情けなさに心底、呆れながら俺は自室へと足を運んだ。














「・・・・果たして本当に悪になり切れていないかな?」


飛天が廊下で言った言葉を水晶玉で見ながら俺は執務室で煙草を蒸かした。


「お前自身が思っているほど、お前は自分の悪に気づいていない」


奴は好きな女の心まで手に入れたいと言っている。


それは貪欲なまでの恋心。


天界のくそ神は罪だと言っているが、俺は間違っていると思う。


見かけだけの恋などより欲望溢れる恋の方が素晴らしく本当の恋だ。


あいつはヴァレンタインを天界に帰そうとしているが、ヴァレンタインの方は帰りたくない様子だった。


朝食の時に俺が少しかまを掛けたら動揺した。


あれは恋をした乙女特有の反応だった。


朝食の時に言った噂は本当だけど誰も大して気にしていない。


事実、何人かの悪魔も天使と恋仲で堕天して夫婦になった奴らもいるし。


飛天を暗殺しようとしている奴らは数百年も前にあいつが全員を皆殺しにして片を付けたから心配する事はない。


あるとしたら、あいつとヴァレンタインを


「・・・・・これからどうやってあの二人をくっ付けるかだな?」


心配するのはそれ位だ。


あの二人なら良い夫婦になるだろう。


飛天の捻くれた性格もヴァレンタインの力で何とかなるだろう。


あいつ変に捻くれて優しいからな。


しかもヴァレンタインみたいなお嬢様育ちには滅法世話焼きだから大丈夫だろう。


後は、元気な孫を作ってくれれば文句なしだ。


出来ればヴァレンタインに似て可愛い女の子が良いな。


あいつみたいな男の子は入らん。


まぁ飛天が何か言って来るかも知れないが、あいつの望み通り心も手に入れられるようにしてやるから問題ないだろう。


「・・・・はぁー、俺って息子思いの良い父親だよな」


飛天が聞いたら間違いなく


『誰が息子思いの良い父親だ!?』


と怒るだろうな。


「くくくくくっ。これからが楽しみだ」


二人が結婚するであろう遠くない未来を思いながら俺は紫煙を吐き出した。


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