第四話:魔界での朝
朝日がカーテンの隙間から入って部屋を照らした。
「・・・・・・・」
ここが魔界だなんて信じられない。
普通に太陽が昇るなんて知らなかった。
何時も夜の世界としか聞かされてなかったから。
だけど、魔界にも太陽がある。
作ったのは神ではなく、かつて神の右腕として名を馳せた堕天使ルシュファーの力で造り上げたのだ。
そして何もない荒野だった世界を草木が生え太陽もある世界へとルシュファーと一緒に魔界に堕ちた天使たちが造り上げた。
信じられなかった。
ルシュファーがどれだけ凄くても神と同じ物を作り上げるなど出来ないと思っていたのに、彼は・・・・彼らは成し遂げたのだ。
暫くの間、余韻に浸っているとドアを叩く音が聞こえた。
ドアが開き中にフレアが入ってきた。
「・・・・起こしに来ました」
私が起きているのを確認してもフレアは無表情だった。
「・・・・昨夜はよく眠れましたか?」
「えぇ。とてもよく眠れたわ」
「左様ですか。それは何よりです」
フレアは無表情だったが、声には親しみの色が混じっていた。
最初の頃に比べてフレアとは仲良くできたと思う。
無表情なのは変わりないが、それでも仲良くなった。
「今朝も皇帝陛下が食事に誘っています」
私の脱いだ衣服を折り畳みながらフレアは喋った。
「皇帝が?」
「昨夜の会食で貴方の淑やかな態度と男爵が熱を上げるのに興味を惹かれたそうです」
淡々と理由を述べるフレア。
「ちなみに男爵様とフォカロル将軍、エギュン王はまだお休み中の為、皇帝と二人だけです」
皇帝と二人だけ・・・・・・・・・・
昨日の会食で皇帝と眼が合った時の幻影が浮かんだ。
何も汚れを知らない純粋で綺麗な色をした瞳。
今まで戦った悪魔のように禍々しさも狂気も無かった。
あるのは・・・・・・ただの純粋さ。
ただ純粋に欲望に忠実な瞳だった。
だから、怖かった。
損得で動く悪魔よりも、ただ純粋に罪を犯す悪魔の方がずっと怖い。
そう感じた。
そして、だからこそ皇帝は全悪魔を支配できるのだ。
純粋だから、純粋に攻撃するから、純粋に相手を殺すから、罪と思わないから・・・・・・・
「・・・・ヴァレンタイン様?」
「・・・・は!!」
フレアが心配そうに見てきた。
「大丈夫。何でもないわ」
間を置かずに答え皇帝との会食を了承した。
「・・・・宜しいのですか?」
ここで断ったら、何かされるかも知れないと考えて出した結果だ。
「えぇ。皇帝に伝えて下さい」
「・・・・畏まりました」
フレアは一礼して一度退室した。
「・・・・・・・」
一人のこった私は自分で言った言葉の重さに後悔したが、諦めて覚悟を決めた。