第二話:エギュン王
魔界北部の都、ヴィルナール。
ここは魔王、エギュンが支配している都で鉱石出資率が一番だと男爵から教えられた。
私と男爵が戦った場所から差して遠くない場所で天界にも近い。
都を治めるエギュン王は男爵と年齢がさほど変わらず友人同士らしく天使である私の宿泊を快く了承してくれた。
皇帝と面会を済ませた私は与えられた客室で寛いでいたが皇帝から一緒に食事をしようと言われた。
断る訳にもいかないので現在、フレアにドレスや飾属品を選んで貰っていた。
「・・・・このドレスなど如何でしょうか?」
無表情で渡されたのは派手すぎず地味すぎないシンプルな緋色のドレス。
「えぇ。これで良いわ」
無難なドレスだと思い頷いた。
「では次に飾属品を・・・・・・・」
木箱に入った色とりどりの宝石類を見せるフレア。
「よぉ。飛天っ。元気だったか?」
俺が客室でフォカロルとチェスをしていると黒の礼服を着た同い年の男が入って来た。
「・・・久し振りだな。エギュン」
俺が片手を上げると奴も片手を上げて手を叩いた。
こいつとは酒を飲む仲でよく二人で城下に降りて酒場で酒を飲んでいる。
今回の件でもいち早く俺に協力してくれた。
「お久し振りです。エギュン王」
フォカロルは立ち上がって一礼した。
「お前が客人を連れて来るとは珍しいな」
エギュンがソファーに座りながら見てきた。
「しかも、あんなに毛嫌いしていた天使の娘を、な」
どこか含みのある笑みを見せるエギュン。
「・・・・まぁ、色々とな」
言葉を濁すとエギュンは何も言わずに肩を竦めた。
「お前も難儀だな」
「まぁな」
二人で苦笑し合う。
「・・・・・食事の準備ができました」
フレアが入って来て食事の準備ができたと伝えてきた。
「もう時間か」
懐から懐中時計を取り出して時間を見る。
「思ったより時間が掛からなかったな」
「何がだ?」
エギュンが首を傾げた。
「ヴァレンタイン令嬢の着替えの時間ですよ」
フォカロルがニヤリと笑いながら説明した。
「なるほど。そういう事か」
エギュンがフォカロルの表情で理解したようだ。
「お前もどうして中々・・・・・・・」
「何の事だ?」
首を傾げてみせる。
「くくくくっ。とぼけやがって」
エギュンは愉快そうに笑いながら部屋を出て行き俺とフォカロルも慌てて後を追った。