第十六話:魔界への旅路
これで第一部は終了です。
ゴトゴトゴト
荒道を走る馬車に乗って私と部下達は魔界に向かっていた。
月見から三日して私は魔界行きを部下に伝えた。
それを聞き部下達も
『自分達も魔界にお供します』
と言ってくれた。
男爵に部下達も連れて行ってくれと頼むと二つ返事で許してくれた。
ユニエール侯爵は思っていたよりも軽傷で済み傷が治ると天界へと護送されていった。
護送される際にユニエールから浴びせられた罵声が頭を過ぎる。
『せいぜい男爵に可愛がって貰え!!この淫乱女が!?』
これを聞いた男爵が再び剣に手を掛けたのを私は見逃さなかった。
しかし、フォカロル将軍によって抑えられたのだ。
恐らく止めてなかったらユニエールを真っ向から斬っていただろう。
それ位、男爵から発せられた殺気は身も凍るような殺気だったのだ。
怖いと正直、思った。
しかし、それと同時に私の為にここまで怒る男爵の態度が嬉しかった。
敵である私を捕虜ではなく客人として扱い脱走したのに傷の手当てまでしてくれユニエールの剣からも護ってくれた。
何故、悪魔である貴方が敵である私にそこまで義理立てしてくれるのか分からない。
けれど、貴方の真摯な態度は心から嬉しいと思った。
それと同時に私の胸の中で何かが変化した。
男爵を見ると恐怖よりも情熱が湧き出る。
声を聞くと怯えるより陶酔してしまう。
この感情が何なのかは分からない。
この感情が恋だと気付くのにはまだ時間が掛かった。
次は4月の第二部で会いましょう。