第十話:無口な男爵
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「・・・・・で、どうするんだ?」
鵺が怒り心頭のまま去った後にフォカロルが俺に向き直った。
こいつ、絶対に鵺で遊んでるな。
「どうするとは?」
「ユニエールとか言う童話の騎士気取りの馬鹿天使をどうするんだ?」
「酷い言いようだな」
童話の騎士気取りとか言い方が酷いぞ。
「本当の事だろ?相手の実力も知らずに挑むなど馬鹿もいい所だ」
「俺も童話の騎士気取りで死にかけたから傷つくぜ」
「お前の昔話はどうでも良い。殺すのか?」
「逆に俺が殺されるかも知れないぞ?」
「お前が?ミカエル達を叩きのめした奴が殺される訳ないだろ」
俺の言葉を冗談としてフォカロルは取った。
「まぁ、その話は置いといて子爵令嬢に言うかどうかだ」
「言わない所で何れは分かるだろうな。こういう奴は真っ正面から挑むからな」
呆れ果てた口調で喋るフォカロル。
「はぁー、面倒臭いな」
フォカロルは溜め息を吐いて額を抑えた。
「・・・・・・・・」
俺も小さく溜め息を吐き天井を見上げた。
一緒の部屋に移されたエリアス、リナと談話していると部屋のドアを叩く音がした。
「どちら様ですか?」
フレアなら名を出すはずだから別だと判断しドア越しに尋ねた。
「・・・・・・・・」
しかし、返答はせずにドアが開いた。
中に入って来たのは夜叉王丸男爵だった。
「男爵様っ」
私とリナ、エリアスは狼狽した。
男爵は無言で近づいて来ると数歩の所で止まった。
「・・・・・・・・」
男爵は何も言わずにずっと立っているだけだった。
「・・・・・あの、男爵様?」
私が問い掛けても男爵は無言だった。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
沈黙が流れていたが少しすると
「・・・・・くっ」
急に男爵は口端を吊り上げて笑った。
「・・・・・やはり駄目だな」
くくくくっと笑い出した男爵に私達は首を傾げた。
「・・・・・あのー、男爵様?」
再度、尋ねると男爵は腹を抑えながら
「・・・・・いや、何でもない。後でフレアから言わせる」
それだけ言うと男爵は部屋を出て行った。
「・・・・・・何だったのかしら?」
私達は首を傾げるばかりだった。
男爵の意図が解らない。
一体、何を話しに来たのかが?
それから数時間後にフレアからユニエールが来ると聞かされた。