よころさん。
「ねぇねぇ、よころさんの都市伝説知ってる?」
放課後の教室で同級生の美香がいきなり私に聞いてきた。
「よころさん?何それ?知らないわ」
都市伝説に興味がない私は即座にそう言った。
「それじゃあ教えてあげる。これ、友達の友達から聞いた話なんだけどね、昔この近くの踏み切りで遮断機が下りているのにワザと踏み切り内に侵入した男がいたの。そして、その男は電車に引かれてしまったの。
首の部分だけ…。
男は首と胴体が切断されてしまったの。
胴体はすぐ発見されたわ。
でもなぜか首だけ見つからなかったの…。
なぜかというと、どうやら電車に衝突した衝撃で首だけどこかに飛ばされてしまったみたいなの。
よころさんは今でも自分の胴体を探してるらしいわ…。
首だけで
コロコロ…。
コロコロ…。と転がりながら…。
「ふーん、そう言えばなんで名前がよころさんなの?」
「それはね。横から突然コロコロと転がってくるからなの。そしてよころさんはこう言うの…。お前の胴体オレにくれ!!!って…」
「ちょ…。やめてよ美香。怖いじゃない…」
「フフッッ…。やだっ美雪ったら怖がりすぎだよ!この話作り話よ!」
「もう…!ほんとにビビったじゃない。あとでジュースおごってよ!」
「嫌よ!あっ!美雪ごめん、私そろそろバイトに行かないと…。また明日!」
そう言って美香は先に帰って行った。
「もう…。本当に勝手なんだから…私も帰ろう」
そうつぶやくと私は学校を後にした。
校内にいた時は気づかなかったが、辺りはすっかり暗くなっている。
私は怖いという気持ちを抑えて早足で歩きだした。
家へと続く曲がり角を曲がった時だった。
ボトッ…。
コロコロ…。
塀の上から何かが落ちて転がってきた。
暗くてよく見えないがサッカーボールみたいだ。
私はそれを拾った。
このサッカーボールなんかやけに柔らかい。
そして温かい。
まるで人間の首のようだ。
ん……??
首……??
ん……??
え……!?
首……!!!!
「お前の胴体オレにくれ!!!」
よころさんは鬼のような形相で私にそう言った。