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98・名前で呼んでほしい

お風呂上がりの後、楽しみにしていた牛乳プリンを食べようと冷蔵庫を開けたら、目的の品が姿を消していた。


「牛乳プリンが無いだと」


私がお風呂に入る前までは確実にあった。だって、ちゃんと確認したんだもん。それが無いと言うことは?私はゴミ箱の中を見てみると、そこには空になったプリンの容器があったのです。


「食べたな」


無いと分かるとどうしても牛乳プリンが食べたくなるけど無い物は無い。仕方ない、ホットココアで我慢するか。私のホットココアの作り方は温めた牛乳を多めに2欠片のチョコを入れる。


「よし、完成」


でも、ホットココアを飲んだだけでは大切に残しておいた牛乳プリンを食べられた恨みは完全に消えていない。この恨みはいつ晴らそうか。そう思いながら私は台所からベッドの前に座る鬼さんを見てみると。


「鬼さん?」

「うーん」


私のお気に入りの猫型座布団にあぐらで座り、頑固親父の如く腕を組んで唸っていた。あの姿に白い捻じりハチマキをしたら、完全に頑固親父決定だよね。


「鬼さんどうしたの?」


私が声をかけても反応なし。なんだか無視されたような気がして心がもやもやする。


「ん、何?」

「さっきから唸ってるよ」


あっ!やっと、反応してくれた。すると、さっきまでの心のもやもやはいつの間にか晴れていました。ついでに私は出来たてのホットココアを持ちながら鬼さんの隣に座ります。


「あー、萌香に名前で呼んでほしいなって考えてた」

「名前?別に鬼さんでもソウキでもどっちでも良くない」

「えー」

「えー、って」


名前かぁ。私は普段から萌香とか宮川さんとかもえかちゃんって呼ばれているから別にどんな呼び方でも良いんだけど、鬼さんの場合そうもいかないみたい。そこまで考えて私はホットココアを冷ましながら飲む。あー、おいしいおいしい、でも牛乳プリン…


「そんなに名前で呼んでほしいの?」

「さん付けが嫌だ。何だか他人行儀みたいで距離があるって感じがする」

「そうかぁ〜。じゃぁ、それなら」


仕方がない名前で呼んでみるか。あっ!思い付いた。ただ単に名前を呼ぶだけじゃつまらないよね。だから、名前プラスαで言ってみよう。そうだね、付け加える言葉ならやっぱりあれが一番良いかな。


「ソウキ、好きです」

「なっ!」

「どうしたの?」

「えっ、名前の後、何か言わなかった?」

「言ったけど」


珍しく鬼さんが動揺しています。へぇ、こんな表情は初めて見たかも。


「オレの事、好きなのか」

「何を今更改まって。あっ珍しくソウキの顔赤いね。もしかして照れた?」


顔を真っ赤にした鬼さんを見たらちょっとかわいくなと思わず笑ってしまった。いつもなら赤面するのは私ばかりだからこういう逆バージョンは新鮮です。あと、私が鬼さんの事が好きのは前から。


「あっつ」

「ちょうど、ココア冷めたし飲む?」

「飲む」


鬼さんの言葉を聞いて私は空になったマグカップを鬼さんに渡しました。なぜ、中身のないマグカップを渡したのかと言うと、それは私の牛乳プリンを食べたから!その仕返しとして私からの細やかなる嫌がらせを受けてくださいな。


「入ってない!」

「では、鬼さん。一つ聞きますよ?冷蔵庫にあった牛乳プリンを食べたのは一体どこの鬼ですか?」

「それ、もう答えが分かっているよね」

「うん、だからちょっとした嫌がらせをしたの。食べ物の恨みは怖いんだからね」


しかも、あの牛乳プリンには『カルシウム100パーセント、これを食べればお子様の身長はぐんぐん伸びる!』っていう魅力的な文字が書かれてあったんだからね。あれを食べれば身長が伸びるかもしれないんだから。その可能性を鬼さんは私から奪ったわけで、私の腹の虫は収まりません。


「美味かったよ。でも、身長を気にして牛乳プリンを選ぶ萌香もかわいいね」

「目潰しっ!」

「ぐはっ!」


何が美味かったよじゃ!私から牛乳プリンを奪った上に、更に身長の事までも言ってきますか!本当に信じられない。それに、かわいいっていえばなんでも許されると思っているの!それは大きな間違いだから!


「やっぱり鬼さん嫌い。もう、名前で呼ばないだから」


牛乳プリンを食べられ挙げ句の果てに気にしている身長について弄られた私はちょっとした反抗として鬼さんに背を向けました。すると、鬼さんの大きな手が私の脇腹を通り抜け、気が付いたら鬼さんに抱えられ体が宙に浮き、膝の上に乗せられ後ろから優しく抱きしめられていたのです。


「ごめん」

「〜っ!」


抱きしめられたと思った次の瞬間、私が最も苦手とする甘い声に私の一番弱い部分である耳元に囁きながら謝ってきたのです。あぁん、その声はダメ、嫌いじゃないけれどその声で囁かれると背筋がゾクっとする変な感覚になるのでやめてほしい。


「またっ耳攻めか!」

「怒るのやめてくれたら、耳攻めもやめてあげるよ?」

「分かった、もう怒らないからやめて」


やめてと言いつつ、本当はその甘ったるい声で、もっとたくさん囁いてほしいと言う思いもあって、今の自分はすごくもどかしい。こんな気持ちを鬼さんに知られたらちょっと恥ずかしいな。


「あと、名前で呼んで」

「分かったから!」

「毎日キスしたい」


そう言われると私も毎日キスしたくなるよ。でも、毎日するのは私の方が()たないかも。その…もっとやってほしいっていう思いが強くなり過ぎて止まらなくなりそうで怖いんだ。うわわわ、誰か助けて、知り合いのお坊さーん、ヘルプミー!


心臓は暴れるし、耳の裏の舐められたところに息を掛けられれば、自分でもゾクっとするような声が出る。どうしよう、どうしよう頭の中がぐるぐるしてもう考えられない無理だよ。


思考が完全に停止した私は、気が付いたら鬼さんに軽いキスをしていました。自分でも驚きです。だって私がこんなにも積極的になるのは初めてだから。


「毎日は嫌だけど、たまになら良いよ」


言っちゃた、すごく恥ずかしい。


「じゃぁ1日置きにね」

「多いわっ!」

「痛っ!」


多いわっ!じゃなくて私が()たないです。それと、いつの間にか牛乳プリンを食べられた事に怒っている私がいなくなっていたのが不思議でした。

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