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94・ジョブチェン

今日、夕飯を食べている時、鬼さんから告白されました。いや、告白みたいなラブコールは毎日のようにされているし、告白って言っても恋愛とかあの甘々なものではなく。


「オレ、仕事クビになった」

「突然言うのはやめて!前置きとかちょうだい」


危うくご飯を喉に詰めそうになったよ。えーと、まずは鬼さんの話を詳しく聞こうか。どうやら、クビになったわけじゃなくてただ単に今のホテル業から旅行業に移動することになったらしい。


「だったら、クビって言わずに移動したって言ってよ!びっくりしたぁー」

「ごめん、ごめん」


軽いなぁーもう!私は頭を抱えて困っているジェスチャーをしていると、鬼さんがなんで移動したのかを教えてくれました。


「ホテル業の研修中、いぬがみから旅行業の方に行ってくれって頼まれたんだ。なんでも、旅行業に関わる部署の人数が少ないんだって」

「なるほど、別に鬼さんが皿を割るヘマをして移動させられたわけじゃないんだね」

「オレ、料理は下手だけど流石に皿を割ったりとかそんなヘマはしないよ」


あらら、鬼さんの眉間にしわが寄ってしまいました。




* * *




夕飯を食べ終え、食器洗いや何もかも全て終わり、鬼さんと一緒にのんびりくつろぎながらテレビを見ていると、隣から小さな白い紙が差し出されました。


「何これ?」

「名刺」


名刺には鬼さんの顔写真といぬがみコーポレーション28部署・蒼鬼(ソウキ)と書かれてあるだけ。


「ソウキって(あお)い鬼って書くんだ!もしかして鬼さんは青鬼なの?あっ、でも目の色とか少し赤っぽいし、青鬼要素ないよね」

「血が蒼いから」

「…………」

「冗談だからっ!冗談だから引くなよ!」


只今私はベッドの隅で縮こまっています。鬼さんが慌てていることから、きっと私の表情は青ざめて引きつっているのでしょう。


「でも、鬼さんは妖怪だし血が蒼くてもおかしくはないよね。うん、そうだよ別に血が蒼いのは驚くことじゃない。むしろ、妖怪にとって血が蒼い事は普通なんだよ。だから、気持ち悪いとか思っちゃダメなんだ、引いちゃダメなんだ、それは偏見なんだよ」

「萌香、戻ってこーい!」


と、鬼さんをからかう事はここまでにして、そうじゃないと鬼さんがバカな事をしてまで血が赤いことを証明する勢いだからね。あと、もう引かないから強く抱き留めないで下さい。


「苦じぃ」

「ご、ごめん」

「私は人間だよ。鬼さんみたいに強く体が出来ていないからね?」


鬼さんの胸を叩いて痛い事を教えるけど抱きしめる力が弱くなっただけで私を抱きしめることには変わりはない。しかも、また何気無く鬼さんの膝の上に置かれ、向かい合って座っているこの状況。本当にスキンシップ激しいな、おいっ!


「骨、折れた?」

「大丈夫だよ。これくらいで骨なんか折れないって。だからそんな悲しい顔しないのっ!」


私は鬼さんの両頬をびよーんと伸ばし上に吊り上げる。ほら、これで笑った顔になった。自分でやっておいてなんだけど今の鬼さんの顔、変な顔。


「ふふっ!」

「いひゃい (痛い) 」


長い時間伸ばしていると頬が痛くなるので、すぐに離す。痛いのは鬼さんも人間もおなじだからね。と言うか今の行動って子供っぽかった。私は15歳なのに、童心に戻ったのか。


「萌香、顔赤いよ?」

「歳に合った行動は大切だよね」

「別に今の子供っぽくて可愛かったけど」

「エスパーか!」

「そうやってコロコロ変わる表情とかオレ好きだよ」


頭を跳ねるように撫でられ、鬼さんのキラキラスマイルを直視してしまった私は熱を持った顔を覆い鬼さんの胸板に勢い良く顔を押し付けた。うわー、絶対に今、私の方が変な顔になっているよ。


「照れた?」

「照れてないっ!」


頭の上で鬼さんの笑いを(こら)えた声が聞こえてきた。こうして、顔を押し付けていると自然と鬼さんの心臓の音とか温もりとか直に伝わってくる。それに、匂いとか…って!


「地雷踏んだっ!」

「うわっ、どうした」

「もう嫌だぁ〜」

「よしよし」

「よしよしするなぁ〜」

「はいはい」


良い匂いとか思った私って変態か。鬼さんは駄々をこねる子供をあやすような笑顔で頭を跳ねるように撫でてくるし、もう顔も体もあっつい。自分が自分じゃなくなるみたいで嫌だ。何これ、どうしよう、本当にどうしよう。今、まともに鬼さんの顔を見れない。


「萌香」

「今は無理です。顔を上げたくありません」

「上げられないの間違いじゃない?」


うわっ、意地悪だ。声のトーン的に、鬼さん私が顔を上げられない理由を分かってる。それがなんだか悔しくて、私は嫌々だけど顔を上げた。


「上げられますけど」


顔を上げた瞬間、まるでタイミングを合わせたかのように鬼さんが私の前髪を優しく払い除け、額に唇を落とす。


「よく出来ました」

「んぅ!」


額の次は流れるような動作で私の唇を軽く塞ぐ。


「ななななな!」

「キスマークは付けてないから良いだろ?」


意地悪そうに微笑む鬼さんに私は手で口を隠し、顔を赤くするだけで何も言えなかった。


いぬがみコーポレーション28部署には

メリーさんと飛頭蛮とキィがいます

62話と63話が少し関わりあるかな

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