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9・夏休み開幕

夏休みの終業式が終わって、只今、クラスで最後のLHR(ロングホームルーム)


「特に川とか海で遊ぶ時は気を付けろよ」

「先生は奥さんとどこかに行きますか〜?」

「水戸部うるさい。はいじゃぁ、委員長、あいさつ。お前ら、これが最後の委員長の言葉だぞ。心残りのないようにちゃんと聞けよ」

「先生、僕の扱い酷くないですか?」

「じゃぁ、夏休み楽しめよ。解散っ!」


結局、最後のあいさつは先生の言葉で締まった。なんだか最近、先生の委員長の扱いが雑になってきた気がする。なんでだろ?


配られたプリントをカバンの中に入れていると、目の前に誰かが立った。顔を見上げて前を向くとそこには。

長い黒髪をポニーテールにして、身長が高いのが特徴な友達、ほのかちゃんが立ってました。ついでにテニスラケットを持っているから、今から部活なんだろうな。今日は終業式なのに大変だね。


「今から部活?」

「そんなんだよ。顧問とコーチがさ、終業式の後は夏の大会に向けて特訓だ、とか言い始めて」

「終業式の後なのにね」

「本当、そこ、終業式の日くらい休ませろよな。萌香からも顧問に言ってやってよ。絶対に萌香の言うことなら顧問は効くと思うんだよね」


私が言っても状況は変わらないと思うんだけどな。


「それじゃ、バイバイ。夏休み、絶対に遊ぼうね」

「うん、遊ぼう。部活頑張ってねー」


ポニーテールを揺らしながら颯爽と歩く姿はかっこいいな。なんかモデルさんみたい。そうか、夏休みだもんね。夏祭りとかプールとか、いっぱい遊ぶ時間はあるし、みんなで遊びに行きたいな。


「萌香ちゃん、夏休みの宿題は任せたからな!」


後ろから話しかけられて振り向くと、つり目で明るく茶色いショートカットが特徴な、めいちゃんが、親指を立てながらドヤ顔で話しかけてくれた。というか夏休みの宿題は人に任せるもんじゃぁないでしょ。


「特に現代文と数学と科学と英語と日本史と世界史と、あとは」

「それって、全部だよね!」

「えへへへ」

「えへへへ、じゃなくて、もう」

「私もこれから部活があるから、夏休みは風引くなよー!」

「風邪ネタはもういいから」


確か、めいちゃんはバレー部だよね。そう言うなりほのかちゃんと同じく颯爽とクラスから出て行ってしまった。


「もえちゃん、帰ろー」


ほのぼのとした声が聞こえてきたと思ったら、ゆいちゃんでした。しかも、最近はよく抱きついてきます。なんとも、抱き心地がいいとか言って、なかなか離れてくれません。今も背後から抱きつかれています。


「もえかちゃん、ちょっと待って!」


私の腕を引っ張ってきたのは、私よりも少し身長が高めで肘まである髪を右耳のしたで結んでいる赤いフレームのメガネを掛けた、あやのちゃん。と言いますか、さっきから私に話しかけてくれたクラスの子はみんな友達です。


「どうしたの?」

「もえかちゃん、この前バイトを探してるって言ってたよね?」


親にアパート代を支払ってもらっているから、せめて生活費でも何とかならないかと思ってバイトを始めようかと、あやのちゃんに相談したんだよね。私がいつもいるグループの中でバイトとかに詳しいのはあやのちゃんだから。


「もしよかったら……ううん、違う。あのね。私の家のお店でバイトしてみない?あっ、じゃなくて。是非、バイトして下さいっ!」

「そんな丁寧な言い方しないで。というか、あやのちゃんの家って何かのお店なの?」

「うん、二階堂って言う和菓子屋なんだけどね」

「えっ!あの有名な二階堂のっ!」


突然、話に加わったのは、ゆいちゃん。


「私もそこでバイトしたい。させて下さい」

「もちろん、ゆいちゃんにも手伝って欲しいんだけど、この前の中間考査で赤点3つ取っちゃったよね?」

「ふぐっ!」

「確か、この学校って中間考査で赤点を1つでも取ると、バイト禁止だよね。それに夏休み補習があったり」

「あやのちゃん、それは聞きたくなかったよぉ〜」


あやのちゃんの攻撃にゆいちゃんはマイナス50ダメージ。あー、そう言えば4月くらいに担任から言われたかも。


「だから、ごめんね」

「うぅ、暗記パン欲しい」


暗記パンが欲しいのは私もわかるよ。テスト前、どれだけ願ったことか。そう言えば、あやのちゃんの名字は二階堂だったよね。今更、気付くだなんて。私の一生の不覚。


「この前、もえかちゃん達が私の店に来てくれて帰った後、おばあちゃんが言ってたの。あの子、うちの店で働いて欲しいわぁ。って」

「店主の千代(ちよ)さんが!うわぁ、嬉しいな」


千代さんとは、ゆいちゃんと一緒に50円引きの水羊羹を買い食いした時に快くお店に迎え入れてくれた。シワがたくさん入った優しそうな顔でつぶらな瞳か可愛い、80歳のおばあちゃん。


私も千代さんのことは大好きだ。何というか、馬が合うって言った方がいいのかな?とにかく、委員長と同じで話しているとつい長話してしまう。そんな方なのだ。


「それで、どうかな?」

「やらせて下さいっ!」

「やったぁー。きっと、おばあちゃんも喜ぶよ。じゃぁ、詳しいことは帰ったら連らくするね」


満面の笑みで答えると、あやのちゃんは猛ダッシュで行ってしまった。絵に描いたらきっと煙が出ているんだろうな。


「もえちゃん!」

「何って」


またも抱きつかれました。今日の天気は暑いのに、抱きつかれたら余計に暑くなるではないか。


「夏休み、川、海、プール、夏祭り、温泉、夜の街、とにかく遊ぼうね」


真っ正面からキラキラした笑顔を見せられて、私のHPはもう残り少ないです。やっぱり笑顔の破壊力は凄いな。あれ?今、夜の街とか言わなかったかい。


「うん、もちろんだよ。ほのかちゃんもめいちゃんもあやのちゃんも誘おうよ。でも、夜の街はダメだからね」

「引っかからなかったかぁー」

「村瀬 唯っ、お前ちょっと職員室に来い」


話が担任に遮られた。しかもゆいちゃん、フルネームで呼ばれたよ。


「もえちゃん」

「下駄箱と近くで待ってるからね」

「嫌だぁー!」

「村瀬、子供じゃあるまいし、駄々をこねるな」


担任に引きずられるように職員室に連行されるゆいちゃん。で、私はというと、下駄箱の近くで待ってると言ったので、ゆいちゃんの帰りを待つことにしました。



* * *



ゆいちゃんが担任に連行されて15分は経ったかな。一行に出てくる気配はない。というからゆいちゃんは何をやらかしたんだろう?やっぱりテストとか勉強の事とかで長話になっているんだろうな。

下駄箱には生徒が、ちらほらと何人かはいた。みんな夏休みの遊びの計画を立ててるね。さっきから、どこ行く、何するとか言ってる声が聞こえるもん。


「宮川さん?」


声を掛けられた背後を見ると、バスケ部のユニフォームや着た委員長がいました。委員長もこれから部活なんだ。運動部は大会が近いしこの頃は特にピークだもんね。


「委員長、今から部活だよね」

「大会が近いから。宮川さんは村瀬さんを待ってるの?」

「そうだよ。担任に呼ばれて行っちゃった」

「説教かな?」

「多分ね。そう言えば委員長って夏休みどこか遊びに行く予定とかあるの?」


興味本位で聞いてみた。委員長って堅苦しいイメージがあるからね。まぁ、それは名前だけであって、話してみると優しくて柔軟な考えの持ち主でいい人だよ。


「水戸部とか芹沢とか、いつもの奴らで遊びに行こうかって話しはあるな」

「私も、ゆいちゃん達と遊ぶよ!」

「でも、暫く宮川さんと話せなくなるのはな………」

「あっ、そうだ。まだ私、委員長の連絡先知らないんだよね。鬼さんのことで相談したいこともあるし、だから教えてもらっても良いかな?」

「連絡先を⁉︎」

「ダメだった?」


驚いた顔で聞かれたから、ついダメだと思ったんだ?でも委員長は快く教えてくれた、本当に良い人だと思う。


「委員長、ありがとう」

「いいよ。こっちも知りたかったし」

「これで、いつでもやり取りできるね」


今度は苦笑いされた。何だ、私はおかしな事でも言ってしまったのか?


「もえちゃん、お待たせー!って委員長は離れなさい」


これで何度目かの抱きつく攻撃。


「委員長にはもえちゃんを渡さないんだからねっ!」


指をビシッと委員長に向けて宣言しました。頭にはてなマークを付けている委員長、私もゆいちゃんの事がわからなくなって来たよ。


ともかく、こうして私の夏休みが幕を開けたのでした。

〜萌香の友達〜


市原(いちはら) 穂花(ほのか)

・ほのかちゃん

・軽くつり目

・身長162cm

・長い黒髪をポニーテールにしている

・テニス部

・太陽によって肌が薄黒く焼けている



平本(ひらもと) 芽衣(めい)

・めいちゃん

・身長157cm

・つり目

・明るく茶色いショートカット

・バレー部

・勉強は苦手、テストの成績は悪い方



二階堂(にかいどう) 彩乃(あやの)

・あやのちゃん

・身長154cm

・美味しいと有名な和菓子屋、二階堂の孫娘

・肘まである髪を右耳の下で結んでいる

・赤いフレームのメガネを掛けている

・家族、友達思いの優しい子

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