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89・夜の攻防戦 ~ソウキ~

オレがまず最初に思った疑問は、何でいぬがみの電話番号とアドレスを知っているのか。その事を萌香に話してみると驚かれた。


「それには、まず私のバイト先である我楽多屋の説明からしましょうか」


萌香が書いた日記にもあったけど、どうやら萌香はオレが『どうして今まで、視えないフリをしてきたのか』と質問してくると予想していたらしい。


まぁ、一応それも気にはなるんだけど。でも優先順位はいぬがみの件の次の次。


「この際だから紅坂(あかさか)高校に入ってからの事を話すよ」


と言うことで、オレは萌香を抱きしめながら話を聞いた。説明するの上手いなとか思い聞いていると、どこか話を濁す場面が多々ありそれが気になった。


「本当にそれで全部(・・)?」

「全部だよ」


振り返ってオレをしっかりと見ながら笑顔で答えるけど、その笑顔が嘘くさかった。萌香と接して少し分かったことは嫌な場面があると笑って誤魔化す。誤魔化されたことが無性に苛立ったオレは、萌香は耳が弱いと推測した上でわざと囁いた。


「ねぇ…本当?」

「〜っ!本当ですからっ!お願いっ耳元で、その甘ったるい声で囁かないで下さい!」


ビンゴ、萌香が風邪を引いてオレが濡れたタオルで首筋を拭いた時、可愛い声を出したから直感的に耳も弱いと言う考えに辿り着いた。それにしても、ここまで過敏に反応されるともっとやりたくなるのは本能か?


「もしかして耳、弱い?」


自分の唇を萌香の右耳たぶに触れるようにして話しかければオレから逃げようとし身を捩らせた。この体勢だとちょうど真下にはくっきりと浮かび上がった綺麗な鎖骨が見えたり、緩まった襟の隙間から女性らしい部分が見えそうで見えないこのギリギリのラインがそそられる。後、抵抗しているのか抱きしめている腕を弱々しくペチペチと叩いているところもかわいい。


「弱くないもんっ!」


その瞬間、オレは衝動的に萌香の首筋を舐め上げた。潤んだ瞳に熱くなった身体。しかも語尾が『〜もん』はっきり言ってこれは誘っているようにしか聞こえない。舐め上げた時に出た萌香の声は今まで聞いたこともないような高くて甘いかわいい声。と言うか、いちいち身体が反応することろが煽られているような気がする。


「ソウキは一体何がしたいのですか⁉︎」

「耳が弱いなら首筋も弱いと思って試してみた」


嘘、首筋と耳が弱いことなんて前から知ってる。

弱い箇所があるなら攻めなきゃダメだろ?


「はぁ、この前と言い今日と言い鬼さんってこんな性格でしたっけ?」

「オレは元々こんな感じだけど」

「一人称も僕からオレに変わってるし、メンズ物の甚平を渡しても何の疑いもなく着てたし、リモコンで角ツノを叩いても、普通に喋ってこっちがバレたと思っても鬼さんは気付かなかったから、今まで鈍感な性格だと思ってた」

「やっぱあのリモコンはわざとだったのか」


オレは萌香の耳から離れ頭の上から話した。


「まぁ、旅先で色々と変わったんだ」

「あっ、9月の半ばのあれか。確か天竺に行きたかったんだよね?」

「天竺?いやいやっあれは違う」


萌香を探しに海や山、川、砂丘にまで行った。その中でオレは自然の荒波に揉まれ、その色々と変わろうと思っただけなんだ。


そう、言おうとしたら。どうやら、萌香を抱きしめる力が弱くなっていたらしく、これ幸いとばかりに萌香はオレの腕の中から逃げ出そうとした。


オレは反射的に萌香を逃がさないようにと強く抱きしめた。ついでに、逃げ出そうとした罰として、萌香の弱い首筋を舐め上げ耳を食む。ただ単に食むだけじゃなく、耳の淵や裏側を舌先でそっと舐めたり息を掛けたりした後でだ。


「ひゃっ!…あっ…んぅ」

「誘ってる?」

「誰が、誘うもんですか!この鬼がっ!」


今思ったけど、萌香は普段、オレの事を鬼さんって呼ぶけど焦ったり真面目な時になると名前で呼ぶんだな。まぁ、今は鬼だったけど。


オレがこうやって萌香を抱きしめたり弱い箇所を攻めたりスキンシップが激しいのはきっと、今までは近くにいるようでどこか遠くにいた萌香との距離を早く縮めたいという気持ちと萌香の事が知りたいという気持ちがあるからと思う。


「もう、これ以上やったら私、家から出て行く!」


しまった、やり過ぎたか!萌香の反応が可愛くてついやり過ぎてしまった。


「それだけは嫌だ。と言うか逃がさない」


今にもこの部屋から出て行きそうな萌香を逃がさないように強く抱きしめた。はぁ、今度からは耳攻めのやり過ぎには注意しないと。その前に自分で自分を止められるかが問題だ。

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