88・夜の攻防戦
ごめんなさい、ほのぼのじゃないです。
むしろ、色々アウトで少々過激なお話です
Rタグいるかな…
電気を全て消し、カーテンを開け、月明かりだけで部屋を明るくしている。そんなシチュエーションにしたのは私でなく鬼さんです。なぜ、妖力を使いそんな風にしたのは知りません。誰か知っている人がいたら教えて下さいという気分です。
「なんで、いぬがみの電話番号とアドレスを知ってるの?」
それが、まず最初に鬼さんが聞いてきた質問でした。いや、まさか最初の質問がいぬがみさんについてだとは思ってもみなかったよ。てっきり私は『どうして今まで視えないフリをしてきたのか』と言う質問が最初に来ると思っていたからさ。
「それには、まず私のバイト先である我楽多屋の説明からしましょうか」
私は一から我楽多屋の事について説明しました。この際だから紅坂高校に入学した時から今までに出会った人達や人ではない者たちについてもぜーんぶ話しましたよ。
でも土地神様に襲われた事は話していません。その件に関しては土地神様と和解してから鬼さんに話すつもりですからね。後は、知り合いのお坊さんと私の残りの寿命の件。お坊さんはまぁ別に良いとして寿命については言いたくないな。
多分だけど、もし寿命について言ったら鬼さんはきっと何かをしでかすと思う。これは、あくまでも私の勘だけど、こういう勘は当たりやすいことを私は知っている。
「本当にそれで全部?」
「全部だよ」
首を右上斜め後ろに捻り、鬼さんをしっかりと見据え笑って答えました。すると、鬼さんの大きな右手が私の顎に添えられ、くるりと正面を向かされました。つまり、首を捻る前の元に戻されたというわけ。
「ねぇ…本当?」
「〜っ!本当ですからっ!お願いっ耳元で、その甘ったるい声で囁かないで下さい!」
現在、私は鬼さんの膝の上に座り後ろからガッチリとホールドされています。なぜこうなったのかと言いますと、夕飯を食べ終え鬼さんと一緒に食器を洗い、鬼さんとは別々にお風呂を済ませ、いざ質問タイムだ!さぁ、ばっちこい!と意気込み、3分間しか動けないヒーローのようなポーズで構えていたら猫のように軽々と抱き上げられ、気が付いたらベッドに座る鬼さんの膝の上に乗せられていました。
「もしかして耳、弱い?」
さっきのお返しとして100発くらい殴りたいけど体に力が入らず、鬼さんの腕をペチペチ叩くくらいしか出来ない。しかも、こっちは抱きしめられているから逃げるにも逃げられない。もう、なんですかこの拷問は⁉︎これは今まで私が視えないフリをしてきた罰なのでしょうか?
「弱くないもんっ!」
その瞬間、首筋に熱く湿った何かがゆっくりと這い上がってきた。思わず、仰け反ってしまい、自分でも恥ずかしくなるような甘くて高い声が出てしまった。今、初めて知ったけど、どうやら私は耳と首筋がすごく弱いらしい。
わぉ!新発見。って、そうじゃなくて。
「ソウキは一体何がしたいのですか⁉︎」
「耳が弱いなら首筋も弱いと思って試してみた」
演繹法ですかーいっ。
「はぁ、この前と言い今日と言い鬼さんってこんな性格でしたっけ?」
「オレは元々こんな感じだけど」
「一人称も僕からオレに変わってるし、メンズ物の甚平を渡しても何の疑いもなく着てたし、リモコンで角を叩いても、普通に喋ってこっちがバレたと思っても鬼さんは気付かなかったから、今まで鈍感な性格だと思ってた」
「やっぱあのリモコンはわざとだったのか」
今度は耳元からじゃなくて頭の上から鬼さんの声が聞こえてきました。
「まぁ、旅先で色々と変わったんだ」
「あっ、9月の半ばのあれか。確か天竺に行きたかったんだよね?」
「天竺?いやいやっあれは違う」
おっと、今がチャンス!何に動揺したのか分からないけど、私を抱きしめる力が弱くなった。このまま、鬼さんに抱きしめられ続ければまた、弱いところを弄られる可能性大!だから、私は緩くなった隙に何とか抜け出そうとしました、その結果。
「ひゃっ!…あっ…んぅ」
「誘ってる?」
「誰が、誘うもんですか!この鬼がっ!」
首筋を舐められ耳を食まれ、私の背筋に電撃が走ったような感覚が襲い、腰辺りがもやもやする。また、腕をペチペチ叩いても身を捩っても鬼さんは痛がらず離さず無駄な抵抗のようで効果ナッシング。流石にやられっ放しは嫌なので、私はしっかりと意思表示をしました。
「もう、これ以上やったら私、家から出て行く!」
熱くなった体のせいで目には涙が溜まっているけど、そんな事は関係なし。嫌の時ははっきりと嫌と言わないと後から大変なことになるんですよね。
私の言葉を受け取った鬼さんは泣きそうな表情の後、更に私を強く抱きしめた。
「それだけは嫌だ。と言うか逃がさない」
泣きそうな表情までは予想通りの反応をしてくれたけど、その後の強く抱きしめるのは予想外だったな。
一体、鬼さんの性格を 変えた旅はどんな旅だったのでしょうか?
【次回、ソウキ視点のお話】




