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87・今ならなんでも答えられます

月曜日の放課後、2人しかいない教室で、私は同じクラスの月島(つきしま) 隼人(はやと)さんと一緒に日直の仕事をしていました。と言っても後は日誌に今日の出来事を書くだけ。


「これからは月島委員長って呼んだ方が良いのかな?」

「いや、別に今まで通り委員長でも良いし、宮川さんが呼びやすい方でいいよ?」


そう、今更だけど今日の黒板に書かれた日直の名前のところを見ると、宮川 萌香と月島 隼人という文字が書かれていたのです。最初は月島っていう名字の人なんてこのクラスにいたかな?と疑問に思っていたのですが、隣の席の水戸部さんに月島という名字が誰なのかと聞くと、委員長と答えられました。


「委員長、月島委員長、隼人委員長。うーん、どれにしようか」

「委員長は外さないんだね」

「もちろんです!」


親指を立てて笑えば委員長も笑ってくれます。と、ここで日誌を書いていた委員長の手が止まりました。どうやら、書き終わったらしい。


「もえ……宮川さん、今日も我楽多屋のバイト?」

「そうだよ。あっ委員長、顔赤い。まだ熱があるんじゃないの?」

「いやもう治ったから、それに宮川さんのメイド姿かわいかったよ」

「あ、ありがとうございます」


照れながらかわいいと言ってくれる委員長の表情は初めて見ます。委員長の照れが移ったのか私の頬も熱くなってきました。あれあれおかしいな、しかも自分の口調がおかしくなってるし。あっ、そうか!ストレートにかわいいと言われて嬉しかったのか。


「そうそう文化祭の出し物のキャラで前から聞きたかった事があるんだけど」


多分、このままだと顔が赤くなった者同士、この先なにも言えずに空気が気まずくなるパターンになると思うので、私は前から聞きたかった事を交えつつこの場をなんとかしようと考えました。


「なんで、ハロウィン風お化け屋敷なのに座敷童のキャラがあったの?座敷童ってハロウィンに関係ないよね」

「あれは、当たりクジみたいな物だよ」


そうですか。じゃぁ、私はその当たりクジを引いたというラッキーガールですね。でも、もしもあの時、あやのちゃんからメイド服を貰っていなかったら周りが西洋なのに私だけ和風とか浮いていただろうな。




* * *




委員長と一緒に職員室にいる担任へ日誌を渡した後、部活に行く委員長と別れ、バイト先である我楽多屋でしっかりと働き、我が家に到着。玄関を開けて一歩、中に入ると香ばしさを越えた焦げ臭い匂いが鼻の奥まで入ってきました。


「大丈夫だよ。鬼さんが料理下手なのは前から知ってるからね」

「萌香、可哀想な子を見る目で見ないでくれ」


部屋に入りキッチンを見ると鬼さんが真っ黒な料理を作っていました。イカ墨かなー?違うねー、これは(すみ)じゃなくて(すみ)だよ。


「料理は私が作るから鬼さんはそこら辺に座ってていいよ」

「遠回しに何もするなって言ってるよね?」

「気のせい、気のせい」


台所のシンクでささっと手を洗い、鬼さんを台所から退かし冷蔵庫の中にある材料で料理を開始。


「炭はどうしよう」


文化祭が終わり、横断歩道で鬼さんに助けられた後、色々あり主にキスまがいなものとかキスまがいなものとか、キスまがいなものとか、うわっ!思い出すだけで恥ずかしいからやめよう。


で、そのまま家に帰ってきた後、質問攻めかなとか思っていたけど。ただ単に私を大きなテディベアのように抱きしめながら頭を撫でられたり首筋に顔を埋められたり、もうベタベタベッタベッタして正直うっとおしかった。


「でも、なんであの時タイミング良く鬼さんが来たんだろう」

「何か言った?」

「後で聞くから」

「ふーん」


話している間に料理が出来たので、鬼さんに温かい品を簡易テーブル運んでもらいテレビを見ながら食べました。あの炭はちゃんと鬼さんの皿に乗せてあります。と言うか元の形は何だったんだろう?冷蔵庫にあったキャベツとニンジンが無くなっていたから多分、野菜炒め的な品を作ろうとしていたんだと思う。


「ねぇ、この前の横断歩道の時、なんでタイミング良く来たの?」

「これ見た後、萌香の学校に行こうとしたんだ。その途中に萌香を発見して、あぁなった」


鬼さんが私のベッドの下から取り出したのは、鬼さんの観察日記。なるほど、それを読んだのか。まぁ、別にアウトな内容は書いてないから良いか。


「それと、食事中に読むのはマナー違反ですよ?」

「いやー、色々書いてあるなーと思って」

「あっ、そうだ。後でいぬがみさんに連絡しないと」


我楽多屋でいぬがみさんと出会った時、一応連絡先を交換したんだよね。それからというもの、毎日のようにソウキには話したか?とメールで聞いてきた。まるで子供を心配するような感じで微笑ましかったけど、毎日はやめて欲しかったな。


「いぬがみさんって見た目は怖いけど性格は心配性なおかんだよね。あっでもタヌキの時はもふもふで柔らかくてかわいいよ」


あれ?部屋の空気が冷たくなったような気がする。


「あのー、ソウキさん?」

「いぬがみの事もそうだし、日記の事もそうだし」

「疑問に思うことは後で受け付けますから。まずは部屋の温度を元に戻して下さい」


この土日、質問攻めが無かったから別に良いのかなって思ってたけど、やっぱりあるよね。

さて、お腹は満たされたし今ならなんでもばっちこいです。

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