表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/150

8・萌香の夏風邪

夏休みの終業式まで残り2週間となった今日の朝、なぜか目覚ましよりも早く起きてしまった。鬼さんはベッドから少し離れた場所で寝ていた。珍しい、いつもなら目覚ましが鳴っても二度寝するのにな。

そういうことで、ベッドから起き上がろうと体に力を入れたんだけど。


「痛っ」


体の節々が痛くて力が入らない。おまけに頭も痛くて、視界もぼやけてる。あれ、もしかしてこれは、風邪?携帯の時計を見ると朝の5時前、学校にいくまでには十分すぎるくらい時間はある。それなら今のうちに体温計で熱を図ろう、微熱でありますように。

ピピピピ、ピピピピ

恐る恐る体温計を見ると、そこには38,8分と表示されていた。マジかー!


「はぁ、通りで体が痛いわけか」


後で、大家さんのところに行って病院に連れて行ってもらおう。はぁ、夏風邪かな?早く治るといいんだけど。








8時前。鬼さんがまだ寝ていることを良いことに、私は楽な服装に着替えて1階の101号室に住む大家さんのところに行った。ここ最近、鬼さんが起きていると着替えを見られるから注意。


「おはようございます。大家さん、あの」

「萌香ちゃん、熱あるだろ!そんな体で、電話掛けてくれれば飛んで行くのに!」


インターホンを押して出てくるなりすごく心配されて、私は大家さんの家に招き入れてもらった。部屋の造りは同じなのにも関わらず、中は私の部屋よりも実に簡素だった。まぁ、大家さんは独身だもんね。


「学校には休みって伝えといたから、それじゃぁ、今から病院に行こうか」

「お忙しい中すいません」

「だから、そんなに(かしこ)まらなくてもいいんだよ」


と言うわけで、フラフラしたまま大家さんの車に乗って近くの病院に直行。









病院から戻る車の中で私は大家さんとこの後について話していました。医者の診断によるとやっぱり、夏風邪だそうです。大家さんは仕事を休んで私の看病を診ると言ってくれましたが、流石にそこまで迷惑は掛けられないし、熱を移したくはないかな。


「風邪引いてるのに1人にできないだろ?」

「ありがとうございます。ですが、最近、大家さんは仕事の方が大変だと聞きました」

「俺、萌香ちゃんに仕事の話なんてしたことなかったよな……?」


大家さんの背後にいる背後霊さんが教えてくれました。でも、そんなことは言えなくて。


「遅い時間に帰ってくるので、仕事が忙しいのだと思って」

「そんなことは良いさ。仕事なんて休めば」


チャララーララ、チャラララララー

大家さんの声を遮って、どこからか、チャルメラの着信音が聞こえてきました。これは、大家さんの携帯からかな。それにしてもチャルメラって。


「ちょっとすまんな」


すぐさま電話に出る大家さん。


「もしもし、八幡です。」

「今日は休むつもりで」

「何っ!森川がミスった⁉︎」

「でも、今日は休もうと」


というか、大家さんの仕事ってなんだろ?今は熱があって、聞いても覚えられないから、熱が下がったら聞いてみよう。携帯を切った大家さんはものすごく申し訳なさそうにしながら、私を見てきました。


「あの、萌香ちゃん」

「仕事ですよね。大丈夫です。安静にしますから」

「本っ当に申し訳ない!」

「そんなっ!私こそ、熱を出したばかりに仕事を遅らせてまで病院に連れて行って下さり申し訳なっゴホッ、ゴホッ」

「大丈夫⁉︎」

「すいません」

「部屋まで送るからな」





* * *




「帰りに何か軽く食べられる物、買ってくるから。あっ、俺の電話番号は」

「この前、教えてもらいました」

「そうか、何かあれば電話してくれ。すぐに駆けつけるからな」

「でも、仕事が」

「んなこたぁ、どうでもいい。そのために俺がいるんだろ?」

「すいません、本当にありがとうございます」


そう言って、大家さんは私の頭を軽く撫で私の部屋の玄関から出て行った。なんか今日は、謝ってばかりだな。これも夏風邪のせいか。夏風邪のせいで気持ちも塞ぎがちになってるのかな。


とにかく、薬はもらったから、それを飲んでから寝よう。部屋のドアを開けると、鬼さんが驚いたようにこちらを見てきた。あっ、11時からやっている30分の再放送アニメ見てたんだ。もう25分は経っているから、あと少しで終わるね。


テレビから視線を鬼さんに移すと、まだ驚いているのか鬼さんはこちらを向いたまま動こうとはしません。私が学校に行ってないから不思議に思っているんだろうな。そりゃそうだよね。普段いない人が急にいたら驚くよね。

暫く鬼さんを観察。ではなく、何も考えず見つめていました。特に意味はないよ。ただ、ぼーとしていただけ、なのに鬼さんの方が急にオロオロしだして。


「僕のこと視えてるの?」


今は何も考えられないから、スルーしよ。いつもなら鬼さんがテレビを見ていたら、消すけど、今はそんな余裕はないかも。体がだるくて、動かすだけでも辛い。


「薬、飲まなきゃ」


そうだ、薬だ。危うく忘れるところだった。薬は粒状にしてもらったから、飲みやすくて良かったな。


「はぁ」


薬を飲んだ後は、そのまま、布団の上にうつ向きで倒れ込むように寝ました。あぁ、そう言えば着替えなきゃいけないのに着替えてなかったや。うーん、今は体を動かすのが辛いし、体は熱くても寒く感じるから動くのやーめた。もう、このまま寝よう。







* * *






「ゴホッ」


自分の咳で起きてしまった。というか、いつの間にうつ伏せの状態から仰向けよ状態で布団の中に入って寝ていたんだろう?


ポフ


私の頭から膝に白い濡れたタオルが落ちてきた。それと、右隣を見ると水の入った洗面器と私の右手をしっかりと握ってベットに凭れて寝ている鬼さんがいた。


「ぅむ」


鬼さんを起こさないようにそっと手を抜いて、枕元にあった携帯を見ると、メールが1件と画面に表示してあった。すぐにメールを開くと、それは大家さんからでした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【萌香ちゃんへ】

熱の方はどうだい?

メールを見るのも辛いと思うから

手短に伝えるな。

本人の許可なく部屋に入るのは悪いが

入らせてもらった。

軽く食べられる物は冷蔵庫にあるから

体調が良くなったと思ったらたべてくれ

俺はまだ仕事が残ってるから

一緒に居てやれることはできない

心細くさせてすまないな。

それじゃぁ、お大事に

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



メールを読んで大家さんが買ってきくれた物を見ようと冷蔵庫に向かう。部屋はカーテンが開いてて満月の月明かりで明るかった。

鬼さんを踏まないようにベッドを降りる。そして、何気なくテレビの前にある簡易テーブルを見るとそのには、お茶碗とスプーンとお玉と、大きな土鍋が置いてあった。あの土鍋は私のやつだ。


なんで、こんなところにあるのか不思議に思って土鍋の中身を見ると、そのには白い液体が入っていた。


「これは、お粥?」


もはや、お粥のご飯の粒が残っていないほどお米が溶けていてスープみたい。とりあえず、大家さんにお礼を言わないといけないので、電話を掛けます。


プルルッ!


音が鳴ってから1秒も立たない間に大家さんから返事が返ってきました。


「もしもし、宮川です」

『萌香ちゃん熱はどうだい?』

「おかげさまで、少し良くなりました」

『そうかそうか』

「あの、冷蔵庫の物ありがとうございます」

『いや、それくらいしか俺にはできないよ』

「あと、お粥もタオルもありがとうございます」

『ん、お粥?タオル?俺は冷蔵庫の物しか買ってないけど』

「えっ!」

『もしかして、203号室の幽霊がやってくれたんじゃないのか?スマン、熱があるのに余計なこと言って、今のは不謹慎だったな。忘れてくれ』

「いえ、大丈夫ですよ。本当にありがとうございました」

「あぁ、それじゃぁお大事な、おやすみなさい」

「はい、大家さんもお仕事頑張って下さいね」


そこで、会話は終了。お粥もタオルも大家さんじゃないなら一体、誰がやったんだ?こういう時には大家さんは嘘つかないし。となると可能性は。


「鬼さん?」


私はまだ寝ている鬼さんに近づくと、鬼さんの長い指先が、幾つもの絆創膏で貼られていたのが見えた。やっぱり、お粥もタオルも鬼さんがやってくれたんだ。

それに今日は金曜日、いつもなら飲みに行くのに飲みに行っていない。それが意味するのは


「看病してくれたんだね」


覗きもするし、人の頭に顎を乗せてくるし、朝ごはんと夕ご飯はつまみ食いするから、そこら辺にいる幽霊や妖怪とおなじだけど、鬼さんはそう、悪くない奴かもしれないな。


「良い奴かも」


せっかくお粥を作ってくれたんだし、貰うか。私はドロドロに溶けたお粥をお茶碗によそって一口食べた。


「甘っ…」


これは、砂糖と塩を入れ間違えたな。それにお粥を作るだけなのになんで、指に絆創膏を張っているの?もしかして、鬼さんって料理下手なのかも。まぁ、色々不思議に思うところはあるけど。


「ありがとね」


私は気持ち良さそうに寝ている鬼さんの頭を撫でながらお礼を言った。さて、せっかく作ってくれたこの甘いお粥を食べるか。

指先に絆創膏を付けながら作ってくれたお粥を残すわけにはいかないからね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ