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77・カッパはメリーさんのファンになりました

久しぶりに

語尾が〜ッスのカッパが登場します

最後にカッパが出てきたのは51話ですね


あとはメリーさんも

昨日の夜は鬼さんが私のベッドで寝ていたため、どうしようかと悩んだ挙句、床に敷物を敷いて寝ました。が、次の日の朝、目覚ましの音で目を覚ますとなぜか、私がベッドで寝ていました。ついでに鬼さんも隣にいます。


「くふっ!」


朝起きてすぐ、まつ毛が長く麗しい鬼さんの寝顔を見てしまった私は変な声を出してしまいました。そうだった、鬼さんは腐っても顔立ちが整っている方だった。あっ、腐ってると言う表現は失礼か。


「うわぁー、朝から心臓に悪いよ」


前までは朝起きて寝顔を見ても見慣れていたから何ともなかったけど、久し振りに不意打ちで鬼さんの寝顔を見たから、今の私の心臓は暴れています。それに、背中に手を回されているし、私の脚と鬼さんの脚は絡まっていて抜け出そうにも抜け出せない状況。


「これって」


脱出するのに時間がかかるパターンのやつだよ。




* * *




案の定、鬼さんの腕の中から脱出するのに20分以上掛かりました。本当はもっと早くに抜け出せるはずだったけど、鬼さんを起こさず尚且つ昨日の体育祭の筋肉痛もあり、その痛みに耐えながらだったので遅くなりました。


「ゆいちゃんには連絡したからオーケー」


私はゆいちゃんに今日は遅れるというメールを送りながら全力疾走で学校に向かっています。すると、ゆいちゃんからすぐに返事が来ました。内容は先に行ってるね、と言うこと。


「りょーかい」


だって、私のせいでゆいちゃんを遅刻させたくないもん、出席日数は大事だよー。そんなことを思いながら黒沼池付近の林道を走っていると前方から緑色の物体が弾丸のような速さでこちらに向かってくるではありませんか。


「何あれ?」


目を凝らすと見覚えのある顔と体つき、あれは夏休みに入って間もない頃に出会ったカッパさんでした。あっ、そう言えばお礼にキュウリと鮎を渡してくれるって言う約束があったよね。未だに貰ってないけど、忘れてるのかな?


「よっめさーん!!」

「くふっ!」


物凄い勢いでお腹に飛び付いて来たカッパさんを私の非力な体は受け止められることが出来ず、背中から後ろに倒れました。しかも、なぜかカッパさんの体が濡れてる。


「やっと、やっと会えたッス!」

「わ、分かったから濡れた体で抱きつくのはやめて制服が濡れる!それに今から私、学校なの」

「おぉ『濡れた体』響きがエロいッスね」

「ちょっと!」


全然聞いてない。このカッパ頭大丈夫?


「ワシ、あの時のお礼をするために嫁さんを捜して世界中を回ったッス。アイルランド、ベルギー、ネパール、カナダ、キューバ、オーストラリア、ケニア、ハワイとか」

「ごめんなさい」

「謝らないで下さいッス。ワシ嫁さんに出会えただけで良いんッス」


私はてっきり、あの時のお礼は宇宙の彼方に忘れられていると思ったから、わざわざお礼のために私を捜して世界中を回ったカッパさんに申し訳ないです。


「実はそのお返しの品がッスね…」

「あれ?それは」


私はカッパさん言葉を遮って甲羅に付いているミニチュアメリーさんのストラップに気付きました。


「今、甲羅に穴を開けてストラップを付けるのが流行りッス!それに、このストラップは数量限定物ッスよ」

「そうじゃなくて、メリーさんのストラップ!」


私は起き上がると同時にお腹に乗っているカッパさんをひょいっと退かします。そして、メリーさんのストラップをまじまじと見てしまいました。茶色いギターを持って音符のエフェクト付きストラップはメリーさんの可愛さを存分に引き出しています。うん、確かにこれは数量限定と呼んでも良い感じのストラップだね。


「嫁さん、メリーさんを知ってるんッスか⁉︎」

「うん、知ってるよ。ギターガール」


そう言うとカッパさんは甲羅の中から大量のメリーさんグッズを出してきました。メリーさんが描かれたハッピやタオル。あとは本やキーホルダーやストラップやCDや会員ナンバーが1桁のファンクラブカード。


「カッパさん、メリーさんのファンなんだね」

「そうッス!いやー、まさか嫁さんもメリーさんを知ってるとは驚きッスね。またどうして」

「何かの縁だよ」


私はカッパさんの甲羅に驚いたよ。よくもまぁ、そんな大量な物が甲羅に入っていたね。


「あっ、この本読んでも良い?」

「もちろんッス」


私はなんとなく気になった『ギターメモリーズ』と爽やかなロゴで書かれた少し分厚い本を手に取り読み始めました。


「その本はッスね。メリーさんがギターガールになったきっかけの話とか仕事風景とかが書かれてるッスよ」

「おぉ、メリーさんの仕事場ってこんな感じなんだ」

「ちなみに、メリーさんがギターガールになると決心したのは人間の女の子の一言らしいッス」


あっ、本当だ。本文の26ページを読んでみると。

『私を影から支えてくれた人間の女の子に「決め付けるのは、やってからにしなさい!そもそも、無理って言っている時点で無理ですよ?本気なら、たとえ掛け持ちだろうが、何だろうか、やってのけるはずですっ!」と言われ、私は〜 (以下省略)』

これ、私のことだ。それに、名前は出てないけど飛頭蛮さんの事も書かれてある。


「話が変わるッスけど、実は今、嫁さんに渡すお礼の品が無い状況ッス。だから、このメリーさんグッズの中から好きな物を選んで下さいッス」

「別に良いよ。それ、カッパさんの大切な物でしょ?」

「いやでも、ワシとしては借りた恩は返したいッス」


このままだとカッパさんはお返しの品のことを気にし続けてしまいそうなので、私はこのメリーさんグッズを見て言いました。


「うーん、じゃぁ。この本とメリーさんのCDって貰えるかな?でも、大切な物な」

「了解ッス!本もCDもまだまだたくんあるッスから」


言い終わる前にオーケーを貰いました。そう言うことなので、私はカッパさんからあの時のお礼としてメリーさんの本とCDを貰います。実は私、メリーさんの歌声はまだ聞いたことないんだよね、帰ったらパソコンで聞いてみよう。


「そう言えば、風の噂ッスけど、メリーさん結婚したとかしてないとか」

「えっ、本当!」

「いや、あくまでも噂ッスよ」


その噂、すっごく気になる。よし、帰ってCD聞いた後にメリーさんに電話だ。と、その時、私の携帯に電話がかかってきました。かけてきた相手はゆいちゃんです。


「もしもし」

『もえちゃん!今どこ⁉︎あと2分で1限目始まるよ』

「うわっ!今行く」


なんと、カッパさんとメリーさんの話で盛り上がっていたら、こんな時間になってしまいましたよ!


「カッパさん。メリーさんグッズありがとう。それじゃぁ、バイバイ」

「ちょっと待つッス。これもあげるッス」


手渡しで貰ったのは、カッパさんの甲羅に付いているのと同じメリーさんの数量限定ストラップ。今知ったけどカッパさん、2個持っていたんだ。


「いいの?」

「もちろんッス。これでワシとお揃いッスね!」

「じゃぁ、携帯に付けようかな。カッパさんありがとう」

「これくらい、良いんッスよ」


体をくねくね動かしながらデレるカッパさんの頭の皿を撫でると更に体を動かして悶えています。正直に言って気持ち悪い…いや、色々くれたし、そんな事は思っちゃダメだよね。


「そ、それじゃぁね」

「バイバイッスー!」


本とCDをカバンの中に詰め込んで、私は筋肉痛で痛む体を無理やり動かしながら学校まで走って向かいました。




* * *




結局、学校は遅刻して担任に怒られ、体育の授業ではバスケットボールが顔面に当たったりと散々な一日でした。これは、何かの前触れか?


「よっし、メリーさんに聞いてみよう」


夕飯を食べ終え、パソコンでCDを聞いた後、私はメリーさんに通話してみました。もちろん、私の隣には背中をベッドに預けた鬼さんがテレを見ながら座っています。前までは鬼さんが部屋にいる時に通話をすると私が視えるとバレる可能性があったので通話はしなかったけど、もうそんなことを考えるのはどうでもよくなったので気にしない。と言うか面倒くさい。それに、今は早くあの噂を確かめたいのが先です。


「もしもし、夜分遅くにごめんなさい宮川です」

『こんばんはー。あら、萌香ちゃんから電話だなんて珍しいね』

「実は今日、風の噂でメリーさんが結婚したと言うのを聞きしまして」

『あっ、それね。うーん、結婚はしてないけど結婚を前提にお付き合いしている方はいるよ』


おぉ、結婚を前提にしたお付き合いですか!私の知らないところでメリーさんが幸せの道を歩んでいたとは。ぜひ、その時は結婚式に呼んでほしいな。


「やっぱり相手は芸能界の方ですか?」

『ううん、芸能界の方じゃなくて同じいぬがみコーポレーションで働く同期の方なの。しかも部署も同じよ』

「社内恋愛⁉︎」

『そうだね』

「今ってお時間あります?」

『もちろん、今は仕事場だけどそんなに仕事はなくて忙しくないし時間はたくさんあるよ』


私は女の子の本能なのか興味本位でメリーさんの恋愛事情を聞きました。結婚を前提にしたお付き合いって気になるよね。相手の名前とか、最初に告白したのはどっちかとかさ。


『最初はね』

「ふむふむ」




つい長話をしてしまい電話が終わったのは夜の12時前。メリーさんの素敵なお話が聞けたのは良かったけど、内容の4分の3は惚気だったかな。


「ん?」


ふと、隣を見ると鬼さんが困惑したなんとも言えない表情で私を見ていました。なんでしょうかあの微妙な表情は。


「あっつい」


メリーさんの砂糖たっぷりの甘々惚気を聞いたからかな、手足を触ると熱いのですがなぜか体感温度は寒いと感じます。それに節々も痛い。うーん、これは嫌な予感がする。


私は包帯や絆創膏が入っている救急箱から体温計を出して熱を測ってみました。ピピピピと音が鳴り終わり脇から取り出すと。


「38.9度」


もしかして、メリーさんの甘々パワーが強過ぎて熱が移ってしまった⁉︎


「まぁ、そんな事はないか」


もう、夜も遅いし今から病院に行くのは無理があるので明日、大家さんに頼んで病院に行かせてもらおう。とりあえず、今日は薬を飲んで寝るのが勝ち。


「コホッ」


風邪が酷くなりませんように。

徐々に鬼さんに対して気が緩み始めてきた萌香です。


次回、鬼さん視点でお話が始まります

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