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76・喋ってしまいました

お話は過去から現代に戻ってきました


そして、これからは通常運転でほのぼのラブストーリー?を目指して行きたいと思います。今まで恋愛要素が少なかったかな…

私はもう二度と幽霊や妖怪などには関わらないと決めたのに、なんだかんだ言って関わっているよね。ククリちゃん、あーちゃん、河童、メリーさん、アンフィスバエナ、キィさん、飛頭蛮さん、あっ、泥田坊もいた懐かしい。うーん、それにしても矛盾しているな。


「ふむ、ここまで少ないとは」


自分の昔話を思い出しても、今、目の前で起こっている状態は変わらない。多分このまま行けば、土地神様に残り少ない私の寿命を盗られて終わりということになってしまう。


「ねぇ、土地神様?」

「なんじゃ」

「少ないものから何かを得ようとしても、結果は、お分かりですよね?」

「得る物は無い」


それに、私は自分の寿命が残りどれだけあるのか、奪った本人の夜叉から聞かされていないので知りません。だからこそ、私は残りの寿命を絶対に死守したい。そう強く願った時、震えた声が私の真上から降ってきました。


「これでは、足りん」


余裕だった土地神様の表情が苦々しいものに変化していきました。心なしか焦っているようにも見えます。私はその表情に昔、私を襲った時の女郎蜘蛛の表情を重ねてしまいました。だから私は『もしかして』と思い土地神様に聞きます。


「土地神様が私を狙う理由は、昔、土地神様と結ばれた火ノ江神社の神主様を生き返らせるためですか?」


息を飲む音がします。どうやら、私の予想は当たっていたようですね。すると、土地神様の態度が一変、心臓から手を離すと私の胸ぐらをつかんで泣き叫びました。


「なんで、お前がそんな事を知っておる!」

「土地神様と初めて出会った時、土地神様が言ってましたよね?江戸時代よりもはるか昔、火ノ江神社の神主様と夫婦になったって」

「言ってない」

「言いました。でも、土地神様。その神主様はあなたに生き返らせて欲しいと言ったのですか」

「うるさいっ!うるさいっ!うるさいっ!」


土地神様の大粒の涙が私の頬に落ちてきます。この反応、女郎蜘蛛の時と同じだ。確か、知り合いのお坊さんもさっき私と同じような事を言っていた記憶がある。


「減ったワシの妖力をお前の寿命で増幅させ、あいつを、あいつを」

「それは、土地神様のわがままだけなのではないのでしょうか?」

「お前にワシの何が分かるっ!ワシは大切なあいつを失って何年もの間どんな思いで過ごしてきたか…もう良いっ!お前の顔なんてもう見たく無い!」


突風が巻き起こったと思った瞬間、土地神様は桜の花びらと共にその場からいなくなりました。私はボロボロになった体操服の胸辺りを押さえて立ち上がります。


「失う気持ちか」


私は誰に言うのでもなく空に向かって吐き出しました。




* * *



流石にこのボロボロの服で家に帰ることは常識的に考えアウトなので、私は教室に戻り早着替えのような勢いで体操服から制服にチェンジ。


「もえちゃん、何があったの⁉︎」

「ううん、早着替えに挑戦してみたかっただけだよ」


クラスの全員が集まると担任が体育祭の褒美だとか上から目線でオレンジジュースの缶を配り始めました。本当は打ち上げをするとかみんなで言っていたのですが、水戸部さんが余計な発言。


「先生のおごりな」


と言ってしまったため担任が断固拒否。と言うわけでオレンジジュースの缶になってしまいました。あー、水戸部さんの余計な発言がなければ今頃は、どこかのお店で打ち上げをしていたと思う。


「先生のケチ」

「守銭奴ー!」

「器が小さいぞ」

「くっ、言いたい放題言いやがって。お前らはオレンジジュースで充分だろ!貰えるだけありがたいと思え!」

「3組は担任のおごりで焼肉屋行ってるけど」

「良いなぁー」


羨ましいです。なぜ、私の担任はこんなにもケチなのでしょうか?誰か知っている人がいたら教えてください。


「打ち上げをやりたかったら自分達だけでやれ」


これ以上、生徒に詰め寄られては無理やり奢らされると本能的に分かったのか担任は言いたいことだけ言ってさっさと、帰ってしまいました。


「まぁ、体育祭の打ち上げは文化祭の後でまとめてやれば良いか。ねっ!委員長」

「水戸部の余計な発言がなかったらな」

「ごめんなさい、口が滑りました」


そんな委員長と水戸部さんを見つつ私は体育祭が終わったと言うのにこれから部活があると嘆くめいちゃんとほのかちゃんに頑張れのメッセージを送ってゆいちゃんと帰ります。一方、あやのちゃんは部活ではなくこれから店の手伝いがあると言って担任が教室から出て行ったと同時に急いで教室を出て行くのを見ました。


「打ち上げはなさそうだね」

「そうだね。ゆいちゃん、帰ろうか」






いつもの分かれ道で、ゆいちゃんと分かれ、通学路を一人で歩きます。ふと、道端を見ると彼岸花が咲いていました。近くにお墓は無いけど、お墓に彼岸花って似合い過ぎて怖いなー。なんて考えながら私の住む八幡荘の花壇の隣にも彼岸花が咲いているのを思い出しました。


「もうすぐ10月か」


そう言えば、鬼さんがいなくなってから半月が経ってるよね。たった半月なのに、私にしてみれば長い時間のように感じます。


「疲れた」


今日は色々な意味で疲れましたよ。体育祭で肉体的に疲れ、土地神様に襲われ精神的に疲れ、あと自分の残りの寿命がどれだけあるのかも気になりますね。


「んっ?誰」


八幡荘を目の前にしたその時に、木の棒を持ってボロボロになった蓑笠(みのかさ)を着た人が八幡荘の門の前でうつ伏せに倒れていました。今時、蓑笠って思ったけど目の前で倒れている人を無視して家に帰る事は私には出来ません。


「大丈夫ですか⁉︎」


笠を被っているのでどこの誰かと言うのは分かりませんが私は慌ててその人に駆け寄り体を揺らします。すると、指が動きました。


「あなたは誰⁉︎」


指が動くだけであとは反応なし。こうなったら笠を取り外して顔を見ないことには誰だか分からない。八幡荘の門の前で倒れているんだから、きっと八幡荘に関わる人だよ。大見た目から家さんでもなさそうだし、もしかしたら他の部屋に住む住人さんかも⁉︎


「ていっ!」


私は思いっきり笠を取り、うつ伏せから仰向けに寝転がしました。所々汚れていますが、この整った顔立ちに黒髪、そして極め付けは額から生える小さなツノ。おぉ、この顔は見覚えがあります!と言いますか。


「鬼さん!」


鬼さん。本名はソウキですけどって今はそんな事どうでも良くて、えぇ⁉︎どうしたの、何でここにいるの、私の頭の中は驚きでいっぱいで混乱中。あぁ、頭が上手く回らないやぁ〜。


と、ここで鬼さんの目がゆっくりと開きました。


「ここは」

「あっ、喋った」

「ここは、天竺(てんじく)か」

「天竺?何言ってるの?ここは八幡荘だよ。もしかして鬼さん天竺に行きたかったの?」

「そうか…ここは八幡…荘…か」


そう呟いた瞬間、気絶したように目を閉じ、すやすやと規則正しい寝息を立てて寝てしまいました。


「えーと、天竺ってインドだよね?」


いや、その何と言いますか天竺?なぜ天竺?鬼さんは天竺を目指すあの集団に憧れていたのか。疑問が疑問を呼び私の頭の中は更に混乱中。


「とりあえず、運ぶか」


私の頭の中は大混乱中ですが、改めてよーく鬼さんを観察したところ、かなり衰弱しているように見えます。このまま見捨てて部屋に戻るのは私の良心が痛むので私は203号室まで運ぶことにしました。蓑笠と木の棒は運ぶ時に邪魔なので取り外してポイっとな。


「重いから引きずろう」


鬼さんの足をズルズルと引っ張って、何とか階段を登り切りました。その間、鬼さんは何事もなかったかのようにぐっすりと寝ています。いやー、引きずられても寝続けるってある意味凄いよ。


「でも、天竺って」


鬼さんを部屋まで運んで私のベッドに寝かせましたが、私の頭の中では天竺と言う言葉がぐるぐると回っております。もう、メリーゴーランド状態。


「あっ」


メリーゴーランドが止まります。

今更だけど私、さっき普通に鬼さんと話してた!頭が回っていない状態だったから反射的に返しちゃったんだ。これは、絶対に気付くよね?

視線をベッドで寝る鬼さんに向けると。


「スースー」


当のご本人は寝ているので分かりません。でも、あの時、すぐに突っ込まなかったから多分、気付いていないのかな?


「鬼さんの鈍感は筋金入りだからね」


私はベッドの隣に膝をついて寝ている鬼さんの頬を指で軽く押すと、鬼さんは柔らかい表情を浮かべ、私とは反対の方に寝返りを打って再び眠りにつきました。


「ふふっ」


そんな鬼さんの表情に今までの疲れや気に掛けていた残りの寿命の事をすっかり忘れて思わず笑ってしまいました。

鬼さんの何気ない仕草に笑ってしまう萌香でした。

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