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74・桃ケ丘高校はフリーホラーゲーム

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とある日の事。私は寮に帰るため廊下を歩いていると突然、背後から親衛隊の人に羽交い締めにされ、簡単に屋上へと拉致されました。


今、目の前には親衛隊のリーダーである3年生の一条先輩が仁王立ちでいます。前にも屋上に拉致された時、一条先輩は仁王立ちをしていましたが、今回違う点は、私の両手首が後ろに回され、荒縄でキツく縛られているの事。しかも、両サイドには親衛隊の人が私が逃げないように腕を掴んでいるのです。


「痛っ」


どこぞのお嬢様だからと言って、やって良いことと悪いことがあるでしょ!もう、なんなの、この古臭い王道ベタベタ乙女ゲームな感じは!


「一条先輩、私に構っている時間を西園寺先輩にアピールする時間に回せばいいと思いますけど」

「なんで、お前みたいな奴が西園寺様に好かれるのよ!」


お嬢様らしからぬ言葉遣い、それに、勝手に嫉妬されても困ります。だって私、西園寺先輩に媚なんか売ってないし向こうから近づいてくるんだ!


「知りませんよ、変わるなら変わって欲しいくらいです」

「そんなこと言って、本当は西園寺家の財産を狙ってるんでしょ?」

「は?」


そんなこと微塵も思っていないです。一条先輩はふくよかな胸の谷間から数枚の紙を取り出し辺りにばら撒きました。そして、高笑い。


「あなたのこと調べたのよ」

「これは」


足元に舞い落ちた紙には私の情報が書かれてありました。どこの小中学校に通っていたのか、両親のことや知り合いのお坊さんのお寺まで。


「あなたの母親、詐欺の罪で今、刑務所にいるのね。しかも、多額の借金を父親とあなたに残して。最低な母親を持ったのね」


最低な母親?自分の中で何が切れることがしました。


「そんな悪女の娘が西園寺様の隣にいて良いはずがないわ!」

「ハハ、一条先輩の妄想には聞き飽きました。悪女の娘?最低な母親?何それおいしいの?」


確かに、お母さんは罪を犯してしまった。でも、お父さんが単身赴任中の時、女一人で私を育ててくれたし、愛情が無かったいうわけでもない。だから、私は今の今まで最低な母親だなんて、思ったこともないし、ましてや、赤の他人に言われる筋合いなんてない!


「最低な母親って言うのは一条先輩みたいな酷い性格に育て上げた母親のことですよ!」


流石に言い過ぎたかなと思ったけど、散々、私に嫌がらせをしたから、これくらいのことは言ってもいいと思う。すると、一条先輩は早歩きで私の元へ来ると胸ぐらを掴み右手をグーの形にして思いっきり振り上げました。私の両手は縛られているし両サイドから腕を掴まれているから逃げれない。


あっ、そうだった。今の私は囚われの姫だった!なーんて悠長な事を考えている間にも一条先輩の重たそうな拳は今にも落ちそう。


「うっ」


拳が当たる直前、目の前にいる一条先輩が顔を青くして震えだしました。それに続き親衛隊の皆さんも寒さに耐えるように震えています。そして、崩れ落ちるように膝をつき、気を失ってしまいました。


「寒っ!」


肌を刺すような寒さ、これは尋常ではない。今は春だしこの寒さはおかしいと思う。それに、私以外の全員が気絶しているって言うのもおかしいです。


「この寒さは妖気?」


知り合いのお坊さんのお寺にいた時、よく灰坊主(あくぼくず)と女郎蜘蛛が妖気をぶつけ合って喧嘩をしてたのを覚えています。この寒さはその時の妖気によく似ている。


プチんっ


私が寒さに耐えていると、何かが切れる音と共に荒縄で縛られていた両手が自由の身となりました。それと同時に寒さがピタリと止まったのです。突然、寒くなってすぐに消える、もしかしてこれは⁉︎


「お前も大変だな」

「その声は西園寺先輩!」


ドアの方に振り返ると、そこにいたのは真っ黒な髪に泥水のような濁った目をした西園寺先輩がいました。ですが、普通の西園寺先輩ではありません。こめかみ部分から闘牛のようなツノが生え制服ではなくて和装、極め付けは右手に刃がボロボロになった日本刀を持っていることです。


「西園寺先輩が鬼になってる⁉︎」

「あぁ」


あっさり肯定されちゃったよ。えっ、どう言うこと?実は西園寺先輩は人間に化けていた鬼でしたー (キラッ)って言うことかな?うん、今はそれが一番あってるよね。


「西園寺…先輩?じゃなくて、鬼?あぁもう、呼び方面倒くさいから西園寺先輩のままで良いですよね⁉︎」

「何逆ギレしてんだよ」


そりゃするわさ。嫌がらせを受けていましたからの突然の妖気を当てられ私以外の皆さんが気絶するわで、ラスボス的に登場したのは西園寺先輩だと思っていた人が実は鬼でした!何これ頭の中がぐちゃぐちゃだよ。


「助けてもらったことには感謝してますが、その格好で来ると言うことは何かあるんですよね?」

「ほぉ、物分りが良いな」

「えぇ、昔からこう言うパターンをなんども経験したことがありますから」


人間の姿で私に近づいて、油断したところで一気にパクリと。その度になんども知り合いのお坊さんに助けてもらったことか。


今回も知り合いのお坊さんに助けてもらいたいのですが、何せお寺から桃ケ丘高校は車で12時間かかるとても遠い場所です。今から助けを呼んでも来れない。


「単刀直入にお前の寿命をよこせ」

「断る!」

「大丈夫だ。少しは残してやるから安心しろ」

「どこが大丈夫ですか!残すも何もそんなのは嫌だよ」

「人間ごときが、黙って俺の言うことを聞け」


西園寺先輩が大股でこちらに向かってきたので私は一歩、二歩と後退りをします。そして、西園寺先輩の右手が伸ばされた時。


「えいっ!」

「うっ」


西園寺先輩の体にタックルして、ドアに向かって走り出しました。思いつきで考えた事が成功してちょっと安心したけど、この後のことは全く考えていません。

後ろで西園寺先輩の不気味に笑う声が聞こえたけど聞こえない振りをしてドアから3階に繋がる階段を一気に駆け下ります。


「はぁ」


西園寺先輩がなんだもしつこく私に近づいたのは、このためだったのか。そのおかげで親衛隊に目をつけられたんだからね!全く迷惑な話だよ。


「俺から逃げ切れると思っているのか?」

「うわっ!」


外に逃げるため2階から1階に繋がる階段を下りていると、どこからともなく西園寺先輩の姿が私の目の前に現れました。このままここに突っ立っていれば私の寿命を盗られることは間違いなし。だから、私は回れ右で違うルートから外に出ようとしました。


「今度は逃がさねぇ」


私はただ廊下を走るだけです。1階につき玄関の扉を開けようとしましたが開かない。窓から外に脱出を試みたのですが、それも無理。鍵を開けても窓が開かないことから、これは意図的に西園寺先輩が妖力で何かをしたんだなと思います。それに、ここまで廊下を走ってきた中で生徒の誰一人と出会わなかった事から、その可能性が強いでしょう。


「フリーホラーゲームか」


カツカツカツカツ、足音が聞こえてきました。

逃げないと!どこへ?学校から出られない以上、私には安全な逃げ道がない。それでも、私の足は動きます。






* * *





「どうしよう、どうしよう」


今、私は桃ケ丘高校の校舎3階にある図書室のカウンターの後ろに隠れています。


「このままだと、私の方がダメになる」


既に私の体力は底を尽きかけて、走るのが難しい状況。

あーもう!本当に何なのこの体質。昔から(たち)の悪い幽霊や妖怪に寿命を狙われて襲われ死にかけたり、中にはさ良い奴もいるけどそんなのはごく稀。


「嫌だよ…」


なんで私がこんな目に合わないといけないの?私何もしてないじゃん!ただ普通に暮らしているだけでさ。ねぇ、誰が教えてよ。俯くと目から大粒の涙が図書室の綺麗な白い床に落ちました。


全部が嫌

この体質が嫌

この視える目が嫌

もう、私を襲うこんな奴らとは関わりたくない


「見つけた」

「っ!」


顔を上げると不敵に笑う西園寺先輩がいました。その瞬間、私は西園寺先輩に押し倒され心臓辺りに違和感を覚えました。目線だけで下を見ると、なんと私の心臓部分に直径10センチくらいのブラックホールのような穴が開いていたのです。


「これは」


その穴に西園寺先輩の片手が突っ込まれ、青白く光る綺麗な玉が取り出されました。これが、私の寿命ですか。その綺麗さに自分が襲われている状況を忘れてしまいます。


「それを、どうするつもりですか!」


両手首は頭の上で押さえつけられお腹には西園寺先輩が乗っているので動けません。


「勝つためだ」

「は?」

「俺は昔、戦いで奴に負けた。次は俺があいつに勝つ」

「奴?よく分かりませんけど、要は相手に負けて悔しかったってことですか…考え方がお子様ですね」


ミシッ。押さえつけられていた両手首から嫌な音が聞こえてきました。それに、じんわりと痛みがきます。これは私が西園寺先輩を怒らしたと言うことらしい。


「だが、今の俺ではあいつに勝ち目はない」

「それとこれになんで私の寿命が関係するのですか⁉︎寿命なんか奪ってもなんの役にも立たないでしょ!」


そもそも私の寿命が西園寺先輩の何に変わると言うのですか。あっ、思い出した。確か、霊力の強い人から寿命を奪うと妖力が最大限に引き上げる事が出来るんだった。


今まで私の寿命を狙って襲って来た奴の理由も弱まった妖力を取り戻したいとか、妖力を最大限に引き上げ、とある儀式で死んでしまった人間を生き返らせたいとか様々だったな。


「妖力=強さだ」

「そのために私を利っ!」


話している途中に鳩尾に殴られたような強い衝撃が来たと思った瞬間、自分の意識が遠のく感じがしました。霞む視界の中、辛うじて西園寺先輩の顔が見えます。


「もう、俺の目的は達成された。だから、お前はもう用済みだ」


もうその時点で私の目は閉じていました。最後の最後に聞こえたのは地を這うような低い声。


「まだ足りない」


と言うことは、これからも西園寺先輩は私と同じようなことを他の人にもするのでは⁉︎そこまで考えた私はお腹の痛みとともに深い眠りにつきました。

いぬがみさんの目の傷…

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