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71・体育祭②

あやのちゃんと一緒に走った二人三脚は怪我をすることもなく、無事に走り終えました。そして、今回の結果は1位が4組、2位が6組、3位が2組という感じ。総合成績は1位が赤団、2位が青団、3位が黄団と現在2位です。


1年生の二人三脚が終わったら次は3年生の綱引き。しかしここでアクシデント発生。それは1組と6組が綱引きをしている時、なんと縄が真っ二つに千切れたのです!元々、()せてたのが原因なのか分かりませんが、縄が千切れたので、スペアの縄を使って競技を再開しました。


最終決戦は6組対5組。どちらも、同じ団ですが1位を争うとなるとやはり団なんて関係ナッシング。仁義なき戦いですよ。くわばら、くわばら。


『これで、午前の部は終わります』


6組が勝った後、放送委員の子が午前の部が終わったことを知らせます。ここまでの総合成績は前と変わらず1位が赤団、2位が青団、3位が黄団。


さて、これからどう変わって行くのか気になりますね。私はもうリレーと二人三脚で体力を使い果たしているので、休みたいのが本音です。



* * *



午前の部と午後の部の休憩時間にお昼ご飯を食べて栄養補給。そして、体育祭午後の部が始まりました。親御さんによる紅花(べにばな)も生徒達も休憩時間にがっつりと休んだようで、みなさん元気です。


「若いもんは良いねぇ。私はもう限界だよ」

「萌香、なに年寄りみたいなことを言ってるの」


ほのかちゃんに一喝されました。あと、1年生の残った競技は借り物競争だけ。隣に座るあやのちゃん曰く、今回の体育祭の目玉は午後に行われる先生達によるリレーと3年生による障害物競走と各運動部のリレーが見ものだそうです。


なぜ、詳しいかと言うと、あやのちゃんは体育委員だから。9月に体育委員となった生徒は体育祭の裏方をやらなくてはいけないのです。例えば、3年生の玉入れの籠や玉を出したり綱引きの縄を用意したりするのが仕事。


また、体育祭の後片付けも生徒会や他の委員会と一緒にやらなくてはならない大変と言っていました。


「私も手伝うよ」

「ありがとう〜」


新学期が始まって役員決めの時に、友達が役員やってるなら出来る限り手伝うと誓ったからね。だから、体育祭の前日もテント張りの手伝いをしたし、グラウンドに白いラインを引いたのも実は私なんですよ!


『続きましては1年生による借り物競争です』


3年生の騎馬戦と2年生の台風の目が終わった後、ようやく最後の競技がきました。縦一列に各クラスが並び、それぞれ約10mくらい離れたところに3年生の体育委員さんが、白くて四角い箱を持っています。6クラスあるから6人ですね。


放送委員さんの合図と共に各クラス1人づつ体育委員さんが持つ白くて四角い箱からお題の書かれた紙を取り、そのお題に沿った物を借りて、グラウンドの中央に立つ放送委員さんの人にお題の紙と借りた物を見せて次の人へバトンタッチ。その際に、放送委員さんは誰が何のお題で何を借りたのかをマイクで発表します。


『いちについて、よーいどん!』


私達のクラスは順番を決めるのが面倒くさかったので、順番は出席番号順です。私は宮川だから、最後の方。


「宮川さん」

「あっ、水戸部さん。どうしたの?」


宮川と水戸部さんは同じ『み』から始まる名字なので出席番号は水戸部さんが前で私が後ろと近い。それに、水戸部さんとは9月から席が隣同士になったこともあったのか、よく話します。と言っても、あやのちゃん程ではないけどね。


「見てみ、あそこで委員長が戸惑ってるよ」


水戸部さんが(ゆび)を指した先には、3年生用のテントの下で委員長と火ノ江先輩にフられた先輩がいました。あれは、戸惑ってるって言うよりも口論しているって言葉が似合うね。委員長、あなたは一体どんなお題を引いたのですか?


「先輩絡みのお題なんだ」

「大体、予想つくな」

「なんだろう?」


辺りを見回すと委員長と同じように3年生のテントの中に入ったり、親御さんのテントの中に入って行く生徒の姿が見えますね。とある男子生徒なんかは、親御さんによる応援団の紅花に行ってリーダーらしき人に何かを交渉していました。そして、リーダーから貰ったのは、黒い学ラン。


『4組、紅花のリーダーの学ラン』


あっ、委員長が先輩を連れてグラウンドの中央に向かいました。さて、お題は一体なんだったのでしょうか?


『2組、最近、フられた人』


あっちゃー。だから、さっき先輩と口論していたのか。先輩もよく行ったね。あら!先輩は放送委員さんのマイクを奪い取って何かを話し始めました。


「由紀子ー!好きだぁー!」


一方、火ノ江先輩は…言わずもがな真冬のような冷たい目で先輩を見ていました。こっちまで凍えそうだよ。そんな、先輩を放置して委員長は列に戻って来ました。


「委員長、お疲れ様です」

「お前、くじ運悪いな」

「でも、まだ変なお題よりかはいいだろ?」

「やっぱり、あるんだね」


その直後、グラウンドの中央に立つ放送委員さんが、『3組、校長のカツラ』と言い切りました。しかも、お題を引いたのは気の弱そうな女子生徒。あぁ、涙目になり震えた両手で校長のカツラを持ってます。


「誰だ!誰が校長のカツラなんて言うお題を考えたんだ!」

「「宮川さんが怒った!」」


私が怒ったことに驚いた委員長と水戸部さん。私が怒ることってそんなに珍しいかな?カツラを持った女子生徒は放送委員さんが言い終わった後、目にも留まらぬ速さで校長先生の元に行きカツラを返していました。


校長先生は隠し事がバレた子供みたいにバツが悪そうな顔で俯いていました。でも、可愛い生徒のために人肌脱いだ校長先生はとてもご立派だと思います。


そんなことを思っている間にも借り物競争の順番はどんどん近づいて行き、とうとう私の番です!


「まともなもの引けよ」


そう言う水戸部さんが引いたお題は『メイド服を着た女の人』だったね。メイド服ならキィさんがいるけど、人間じゃないし、私みたいに霊感がない人には視えないからダメ。それにしても、よくメイド服を着た女の人を見つけたよね。その前にメイド服を着て体育祭に来る人がいたなんて驚き。


「ついでに、あのメイド、委員長の姉さんだったぜ」

「えっ!」


水戸部さん、交代間際になんと言う爆弾発言!

もっと、詳しく聞きたかったけど私の番だし詳しく聞くのは後にしよう。今はまず借り物競争をクリアしないと!


心の中で、まともなお題をお願いしますと何度も唱えて体育委員が持つ白い箱から1枚の紙を取り出し開けます。

すると、そこに書いてあったのはーーー




* * *




20秒後

私は火ノ江先輩を連れてグラウンドの中央に立っていました。そう、私が引いたお題は。


『2組、職業が神社にまつわる人』


そのお題を見た瞬間、私はダッシュで火ノ江先輩の元に行き、有無を言わぬうちに2年生の大群から引き抜いて、こうして立っております。いやぁ、変なお題を引かなくて良かったですよ。


「火ノ江先輩、お騒がせしました」

「別にいいけど」


何食わぬ顔で、去って行く火ノ江先輩を見送り私は次の人と交代するため急いで列に戻りました。その後も、面白いお題や鬼畜なお題が出たり。


「宮川さん!」

「あれ、5組の」

「お願い、一緒に来て」


まさかの私が5組の同級生の女の子に借りられした。その内容は『部活に所属していない人』どそうです。ついでに、陸上部に入らないかとお誘いを受けましたが、やんわりと断りました。理由は前と変わらず、バイトがあるから。


ピピー!


借り物競争が終わる合図の笛がグラウンドに響きました。今回の借り物競争の順位は、なんと3位。ですが、団の総合順位は午前と変わらず2位のまま。


と、ここで、得点板が体育委員の手によってどこかへ持ち去られてしまいました。理由を体育委員のあやのちゃんに聞いてみると、閉会式の優勝旗を渡す瞬間までどの団が1位なのか秘密にしておくそうです。


「1位だと何か貰えるのかな?」

「貰えてもボールペンだと思うよ」

「もえちゃん、知ってるの?」

「ん、勘だよ勘」


残りの競技は3年生の障害物競走だけとなりました。後は各部活のリレーと先生達によるリレーだけ。


『次の競技は先生達によるリレーです』


リレーを見ているとやっぱり、体育教師は走るのが速い!それに、私のクラスの担任も頑張ったのですが、足の速さは微妙。遅くもないし速くもない。明日、筋肉痛になってそうだな。


リレーが終わると生徒から先生達に拍手が送られました。応援団の紅花は拍手ではなく太鼓を叩いたり白いハチマキを振り回しています。


先生達が終わると次は3年生の障害物競走。すぐさま、体育委員全員はグラウンドに飛び出し跳び箱や網や障害物になる物をリレーコースに置き始めました。どうやら、障害物競走は1人半周。


この障害物競走だけは、体育祭当日にならないと、どんな障害物が出てくるのか知る事が出来ません。これは何が出るのかを知るっている体育委員にどれだけ聞いても教えてくれないらしい。体育委員のあやのちゃん曰く、びっくり箱みたいな物よ。だそうです。


「ゆいちゃん、パン食い競争があるよ!」

「本当だ」

「うわっ、ハードルもある」

「ほぼ、陸上競技じゃない⁉︎」


地面をよーく見るとピンポン球と卓球のラケットが置かれていました。あれは、ラケットの上にピンポン球を乗せて走れと言う意味だろうか?


その疑問は障害物競走が始まって分かりました。私が予想した通り、あのラケットはピンポン球を乗せて走れと言う意味でした。しかも、落としたらまた、スタート位置からやり直し、驚く事にここでピンポン球を落とす3年生は誰1人としていません。


「やっぱりパンは定番のあんぱんかな?」

「そうだよ。しかも、私の家があんぱんを提供してるの」

「あれ?でも、あやのちゃんの家は和菓子屋だよね」


ゆいちゃんの質問にあやのちゃんが答えて、更に私が気になったことを聞きました。確か和菓子屋二階堂はあんぱんなんて売っていなかったはず。


「えーと、あんぱんの中のあんこを私の家が提供しているの。言い方間違えちゃったごめん、ごめん」


そうか、和菓子屋だからあんこは提供出来るよね。それにしても、パン食い競争は楽しそうだな。


3年生の障害物競走が終わると得点を発表せず、次の種目へと移ります。そして、次の種目は体育祭最後の種目、各部活のリレー。


出場する運動部はサッカー部、バスケ部、陸上部、ライフル射撃部、柔道部、水泳部、などなど、特に応援されているのはサッカー部とバスケ部。まぁ、夏の大会でも、好成績を出しているしね。


グラウンドの方を見ると、各運動部が集まっている中に、バスケ部のユニホームを着た委員長が準備運動をしていました。それと、部長さんと副部長さんと水戸部さんと2年生らしい人もいます。


「見て見て、委員長と水戸部さんがいるよ」

「水戸部君が走るだなんて初耳だよ」

「あやのちゃんは知らなかったの?」

「うん」


もう一度、グラウンドを見ると委員長と目が合いました。なんと偶然な!私は、目が合った委員長に親指を立てて『頑張れ』と言う意味のメッセージを送信。すると、委員長も爽やかスマイルで親指を立てて返してくれました。


「よし、応援しなきゃ!」


しかも、委員長はトップバッターですから余計に応援する力が入りますね!

体育委員さんがスタートのピストルを打つまで残り。僅か、6、5、4

………3

……2

…1


スタートです!

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