7・イワシ&柊の葉で実験
商店街の片隅にある本屋で料理本を立ち読み。そこでふと目に止まった項目、それは『イワシの料理』
そう言えば、イワシって節分の時に柊の葉と一緒に魔除けとして置いてあるよね。
節分=鬼。
鬼の苦手な物=イワシ&柊の葉
もしかして、家にいる鬼さんもイワシが苦手だったりするのかな?
「ゴホンッ、ゴホンッお嬢ちゃん。立ち読みはお断りしててね」
「すいません」
* * *
はい!ということで今日の夕飯はシンプルにイワシの梅生姜煮とイワシの蒲焼を作ってみたした。
イワシは家の帰り道にある商店街で2尾、購入。ついでに魚屋のおじさんから、いつも買ってくれてありがとうって事で、7月の旬の魚であるアジ・サバを2尾ずつもらった。明日の晩御飯はアジの南蛮漬けにしようかな。
「よしっ、完成」
いつも当たり前のように、晩御飯を摘まんでくる鬼さんは、果たして今日のイワシの梅生姜煮と蒲焼に食いつて来るのでしょうか?
そして、私は物陰に潜み。鬼さんの行動を実況するのです。
私が物陰に潜んでから数分、私のベッドに寝転がってテレビを見ていた鬼さんが、どうやら私がいなくなったことに気付いたみたい。
同じ部屋に居るのに気づかれないよう、うまく隠れる私も凄いでしょ?こういうの昔から得意なんだ。だって、小さい頃、幽霊とか妖怪から逃げてたからね。
「イワシ?」
まず最初にイワシの梅生姜煮が入っている鍋に手が伸びた。蓋を開けて中身を確認、それから蓋を閉めた。食べないの!いつもなら箸か何かを使って食べるくせに、やっぱり鬼だからイワシが苦手なんだ。
と思ったら、また鍋の蓋を開けて中を見ている。この様子からだと食べようか食べないか迷ってるみたい。
開けて
閉める
開けて
閉める
開けて
閉める
開けて
閉める
・
・
・
・
えぇいっ!食べるか食べないかはっきりしろ、見てるこっちがもどかしいわ。もう、食べないと判断して物陰から出て行こうとした時、鬼さんがやっと箸を持って鍋の中にあるイワシの梅生姜煮に手を付けた。
そして食べた。少しだけどね。どうだろう、箸で持ってる残りのイワシも食べきれるかな?そわそわして事の最後を見守っていると
なんと、最後までイワシを食べたのだ。さらにもう1つと鍋の中のイワシを食べる。
うわー、にんじん嫌いな子が、にんじんを食べられた時の親の感情と似てるかも。というかあのペースだと、私の分までなくなりそう。
あっ、次は蒲焼に手を伸ばしたか。これもまた鬼さんの胃にどんどん消えていく、マジックみたいだな。さて、そろそろ出て行かないと本気で私の分の夕飯がなくなりそう。
* * *
夕飯を食べ終え、見たい深夜アニメを録画して、後は今日配られた明日提出の日本史の宿題プリントをやるだけ。早速、勉強机とにらめっこ。
①鎌倉幕府の成立からの問題
Q源頼朝や木曽谷にいた源義仲をはじめ、各地の武士団が挙兵して、ついに内乱は全国的に広がり、5年にわたって争乱が続いた。これをなんというか?
問題の横にはご丁寧に源頼朝の顔写真が載っていた。ネットから拾ってきた画像だと思う。
「へぇー。頼朝、有名人になったなー。あの頃はそこら辺にいる子供と変わらなかったのに」
独り言を言いながら鬼さんは、椅子に座っている私の背後から肩に手を掛けて頭に顎を乗せてきた。しかも、体重を掛けてきて。これ、霊感ない人からすれば『あれっ?急に頭と肩が重くなったぞ、なんだこれ疲れかな。いや、その前に何かに掴まれてる感がハンパないんだけど』ってなるよ。
ん?ちょっと待てよ。今、鬼さんは『あの頃は』って言ったよね、と言うことは鬼さんって鎌倉幕府の頃からいたんだ!
「おー、懐かしい奴らがいっぱいだ」
分からないところがあれば、探そうと出していた教科書を勝手にペラペラと捲って先を見る鬼さん、だから本当、霊感ない人からすれば部屋から出ていくレベルの行動だよ。
「喧嘩両成敗法とか久しぶりだ。いぬがみに言ったら懐かしむだろうな」
独り言を言うのはいいけど、人の頭の上で話すのはやめてくれるかな?しかも、つむじに顎が当たって痛いんだけど。
あっ、そうだ。まだ鬼さんにやってないことがあるんだった。
「この葉っぱなんだろうな〜(棒読み)」
「うわぁ!」
私はペンケースの中から道端に落ちいてた柊の葉があることを思い出して、それを鬼さんが見えるように机の上に置いたの。そしたら案の定、鬼さんは素早く私から離れてベットにある布団の中に潜った。
効果は抜群、でも何で私のベッドを使うのかな?前からテレビを見ている時もベッドの上でだし、最近は私が寝ている時でも入ってくるんだけど、1つのベッドに2人?は暑いんだよね。
だから毎回、ベッドから押し出して床に落としてるんだ。じゃないと暑苦しくて寝れないよ。
さて、鬼さんはベッドの中だし、さっさと宿題を終わらせちゃいますか!それと、最近付け始めた鬼さんの観察日記に、イワシは食べられる。と、柊の葉は効果抜群って書いておかないとね。
ちなみに、日本史の問題の答えは
A.治承・寿永の乱
です。