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63・メイドの仕事探し ~蓮さん~

18・夏休みのタヌキ ~委員長~

34・悪魔の依頼

40・働き者にはメイドが来る

のお話が関係します

あとは飛頭蛮(ひとうばん)も出て来ます

今回は初、我楽多屋の蓮さん視点!


とある木曜日の夜9時、我楽多屋にて


「いらっしゃい」

「こんばんはー!」


店のドアから入って来たのは夏祭りで萌香ちゃんと一緒にいた、委員長君と初めて見るメイドさん。基本的に夜の我楽多屋に人間は来ないから珍しい。


「あっ、夏祭りの委員長」

「えーと、ククリちゃんだよね」

「うん!そっちのメイドは誰?」

「私、キキーモラのキィと申します」


キキーモラか。昔、ククリと一緒にロシアに行った時に別のキキーモラを見たことがある。その時は、こんな若い子じゃなくて狐耳が生えた老婆だったけど。


「そうだ、あの解毒剤は効いたかな?」

「その節はありがとうございました」


いやー、萌香ちゃんから解毒剤を作って欲しいって連絡が来た時は驚いたよ。こうして見るに委員長君は元気そうだから後遺症とかなさそうだ。


「あの、宮川さんから聞いたのですが」

「うん?」


委員長君が言うには、キィさんの仕事探しを手伝ってほしいとのこと。確かに今までたくさんの依頼をこなしてきた。その大半は、仕事探しと物の修復作業かな。

懐から求人募集のメモが書かれた台帳をだして確認してみる。


「一応、メイドを募集しているところがあるんだけど」

「メイドならキィに合ってるな」

「はい!」

「うーん、でもあまりオススメはしないかな」

「訳ありですか?」

「そうだね。強いと言えば」


その時、店の入り口のドアが勢い良く開いて駆け込んで来たのは、ぐったりとした左目に縦に切られたような切り傷を持つ子ダヌキを抱えた、チャイナ服の若い子。


「蓮さん、蓮さん!いぬがみ様が倒れました」

「妖力切れだね。委員長君、ちょっと待っててくれないかな?」

「はい」


店の奥に行って、いつもいぬがみ君が買ってくれる栄養ドリンクを2つ持っていく。それをタヌキ姿に変わってしまったいぬがみ君に飲ませて体を少し揺さぶるといぬがみ君の目が開いた。


「う…蓮さん、飛頭蛮(ひとうばん)、すまなかった」

「ここに来ればなんとかなると思って、生きてて良かったです」

「飛頭蛮、いぬがみ君は生きてるから大丈夫だよ」


また、妖力の使い過ぎで倒れたんだから暫くは横になると良い。すると、いぬがみ君の目と委員長君の目がお互いに合った。


「お前、あの時の」

「また、あの時みたいに妖力切れなんですね」


どうやら、お互いに顔見知りのようだ。へぇ、2人が知り合いだなんて驚いたよ。委員長君が『また、あの時みたいに妖力切れなんですね』って言ったから、いぬがみ君は妖力が切れた子ダヌキ姿の時に、委員長君に助けて貰ったのかな。


「かわいい子ダヌキですね」

「そうなんですよ!でも、人間に化けている時は、ものすごーくヤクザみたいな厳つい顔になっていましてね」

「ギャップ萌え?」

「一部ではそんな感じて受けてます」

「かわいい〜」


キィさんは飛頭蛮に抱かれたいぬがみ君の頭を撫で回して楽しんでいるようにも見えた。あー、いぬがみ君のこめかみに青筋が立ってるよ。


一応、いぬがみ君の件が終わったから次は委員長君とキィさんの件について話し合おうか。


「で、キィさん。仕事についての話なんだけどね」

「はい」

「今、海外のお客様がメイドを募集していてキィさんにぴったりの仕事だと思うんだけど、その雇い主の性格に問題があるんだ」

「それでも私、やります!」

「イギリスに住んでいるベリトって言う悪魔がその雇い主で」


その瞬間、キィさんが悲鳴をあげた。


「断ります!」


即答で断った。僕としては断って良かったと思うけど。叫ぶキィさんを委員長君が何とか落ち着かせて委員長君からキィさんの事情を聞いた。まぁ、なんとも妖怪との関係は面白いもので、まさかキィさんとベリトが繋がっていたとは。これも何かの(えん)かな。


「だったら、俺の会社で働くか?」


提案したのはいぬがみ君だった。確かに、いぬがみコーポレーションは社員寮もあって設備は良いし、オススメしない雇い主の仕事よりは断然良いと思う。


「いぬがみ、良いのか?」

「もちろん。それに、委員長には夏休みの借りもあるからな。これで、チャラだ」

「分かった」

「いぬがみさん、よろしくお願いします」


どうやら、キィさんはいぬがみ君の会社で働くことに決めたらしい。


「働くなら私と同じ部署にしませんか⁉︎」

「飛頭蛮さんとですか」


こっちもこっちで、良い雰囲気だ。


「社員寮もあって住むところにも困らなくて良いんですよ」

「キィ、良かったな。仕事も生活場所もあって」

「私は……ご主人様の家で暮らしながら会社に勤めたいです!良いですか、ご主人様?」

「僕は別に良いけど」


キィさんが小声で『ご主人様の恋路を近場で密かに応援したいので』って言っていた。多分、この声が聞こえたのは近くにいた僕だけだと思う。


「良いね。この感じ」


妖怪の中には人間を毛嫌いする奴らもいる。でも、こうやって、人と妖怪が混ざり合って溶け込んで行くのは見ていて微笑ましいよ。

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