表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/150

52・メール&通話、それ以前の問題

とある9月の土曜日の朝

目覚ましよりも早く起きて、ベッドの隣を見るといつも、私の隣で寝ている鬼さんがいなくて珍しかった。まぁ、たまにはそういう日もあるか。


あっ、珍しいと言えばもう一つ。昨日は金曜日なのに、鬼さんの帰りが早かったんだよね。でも、その頃はメリーさんと通話していなくてベッドの中でうとうとしてたの。最近、メリーさんは仕事と音楽活動に忙しいらしく通話は月1にする感じかな。


で、鬼さんが部屋に入ってすぐ、ガサゴソという何かを探しているような雑音が聞こえてきました。その音が気になったけど、やっぱり眠さには勝てず、どうせ大したことじゃないだろうって思ったから、そのまま眠ることにしました。


さて、昨日のことを思い出すのはこれくらいにして朝ごはんを作りますか。


「は?」


寝起きのぼやけた視界から覚醒して、はっきりとした視界に戻った私の目に映ったのは、物があちこちに散乱し荒れ狂った部屋とベッドから少し離れたところで私の携帯を持って床に突っ伏し寝ている鬼さん。

ここまで部屋が酷く汚くなるなんて、もしかして泥棒が入った?何か盗られていないか不安になって部屋の中をチェックしました。


「全部ある」


日用品から大事な物まで、ちゃんとありました。良かった、安心したよ。と言うことはこの部屋をここまで悲惨に荒らした犯人は鬼さんですね。だから、昨日の夜ガサゴソって、何かを探している雑音が聞こえたんだ。探し物を探すのは良いけど後片付けをしなさい!後片付けをっ!


このまま、荒れ狂った部屋で過ごすのは嫌なので、さっさと片付けます。床に寝ている鬼さんに関して言えば、寝ていると言うよりも疲れてぶっ倒れてる感じがする。部屋を荒らした罰として踏んでやろうかな。

ガシガシ、起きない。


「何してたのよ」


しかも、手には私の携帯をしっかりと持ってるし。鬼さん、寝ぼけて私の携帯と自分の携帯を間違えてるの?とにかく、私の携帯を返せ!


「ていっ!」


粘りに粘ってようやく、鬼さんの手から私の携帯を奪還したところで、電源を入れますが。


「あれ?」


何度、ホームボタンを押しても電源はつきません。もしかして、鬼さんが強く握ったから携帯が壊れたとか。携帯を叩いてもホームボタンを押しても、変化は無し。一応、充電してみるか、カチッとな。


「あっ動いた」


電源がついて、パスコードを入力したら完璧です。ん?ちょっと待てよ、なんで充電の残りがあと3%しかないの?昨日は充電を100%にして電源を落として寝たはずなのに。


しかも、朝になれば携帯は鬼さんの手の中。一体どうなってるの?まぁ、今はそんなことを考えるよりも朝ごはんの用意をしないとけいないね。




* * *





和菓子屋二階堂のバイトと我楽多屋のバイトが終わって帰宅し部屋の電気をつけると、なんと!私が愛用しているね小型座布団に俯いて三角座りして明らかに負のオーラが出ている鬼さんがいました。びっくりしたー。一瞬、新たな妖怪が出たのかと思ったよ。うわ、鬼さんの周りの空気だけ淀んで見えるのは気のせいかな。


負のオーラが出ている鬼さんを見ていると、こっちも負のオーラが出そうなので私お得意の見えない振りをしましょう。さてさて、お風呂焚いて、夕飯を作らなきゃ。


「銀杏ー、銀杏ー。」


昨日、大家さんから大量に貰った銀杏を素揚げにして多めに鍋に入れておいたら、鬼さんがタッパーに詰めて、持って行きました。それでも、銀杏はまだまだたくさんあります。


昨日は素揚げにしたから今日はどの調理法で食べようか考えていると、私が愛用する猫型座布団の上で鬼さんが座り、私の携帯を唸りながら弄っているのが見えました。


「これも、違う」


『これも、違う』って。何、勝手に人の携帯を弄っているのよ!


「またダメか」


本当はすぐにでも鬼さんから私の携帯を取り上げたいところだけど、何をしているのかが気になって、もう少し辛抱して鬼さんを観察してみることにしました。


「誕生日でもないし」


台所からじゃ、携帯の画面が見えなくて鬼さんが私の携帯で何をしているのか見えません。どうしよう、そうだ、ここは何気に鬼さんの後ろを素通りして画面を見てよう。


私が鬼さんに近づいても、鬼さんは全く私の存在に気がついていないみたいで、真剣に携帯とにらめっこしています。そして、鬼さんの後ろを通り過ぎる瞬間。

チラッ

見えました。どうやら鬼さんは私の携帯のパスコードで悩んでいるようです。私の携帯は使う時、必ず4桁のパスコードを入力しないと使えない設定にしてあるります。

ちなみに4桁のパスコードは4625(しろねこ)。


成る程ね。これで今日の朝、携帯の充電残量が3%しか無かったのも、鬼さんが疲れたように床に突っ伏して寝ているのも、バイトから帰って来た時、負のオーラを出しながら三角座りしていたのも、全て謎は解けました。


まず、鬼さんは何かしらの理由で私の携帯を覗こうとした。でも、覗く前パスコードが出てきて携帯の充電がなくなるまで考えた。結果、パスコードを解除することは出来なかったので疲労困憊(ひろうこんぱい)で床にぶっ倒れるようにして眠った。そして、私の携帯を覗くことが出来なかったのがショックで私がバイトから帰ってきたら、鬼さんが負のオーラを出しながら三角座りをしていた。


どうだ!でも、携帯にパスコードを設定して良かった。やっぱりパスコードは大事だね。それにしても、なんで鬼さんは私の携帯を使おうとしているの。不思議だ。


「これもダメか」


まだ、鬼さんはパスコードに悩んでいます。理由はともかく、人の携帯を勝手に使おうとするのは良くないよね?彼女の携帯を彼氏が勝手に見る感じでさ。ここは一つ、鬼さんに仕返しをするか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ