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49・巫女と土地神様②

声や見た目からやっぱり土地神様は女性のようです。でも、顔立ちが中性的だから声さえ低くすれば男性にも見えますね。


「小娘、反応薄いぞ」

「はぁ」


えー、今はどういう状況かと言いますと、土地神様と出会った後、またも桜の花びらが私を囲うようにぐるぐると渦巻いて、次第に収まったかと思ったら、次の瞬間そこは図書館ではなく火ノ江神社の本殿の中にいました。多分、土地神様の妖力かなんかで、私をここまで運んだのかな?


そして、現在私は静まった大きな本殿の真ん中、土地神様との間を(たたみ)6(じょう)程空け、正座しながら(めん)を向き合っています。一方、土地神様は正座ではなく、私よりも少し高い位置であぐらをかきながら、ふわふわと宙を浮いて煙管(キセル)を吸っています。煙から甘い匂いがするー、嫌じゃないけど独特の匂い。


「妙に落ち着いているな」


えぇ、妖怪に拉致られるのは今日が初めてじゃないからですよ。私が小さい頃なんて、知り合いのお坊さんのお寺で暮らしていた時、週に1回は必ず妖怪に拉致られていたから。その度に知り合いのお坊さんには助けてもらったなぁ。


由紀子(ゆきこ)は泣いて叫んでいたが」


由紀子?あっ、火ノ江先輩のことか。確か図書館で火ノ江 由紀子(ゆきこ)って言ったよね。


「火ノ江先輩にも、私と同じことをしたのですか?」

「あぁ、由紀子が6歳の頃、遊び半分で」


そりゃ、泣くわな。何してんのこの土地神様は、しかも遊び半分って火ノ江先輩、大変だったね。


「火ノ江先輩、怒るでしょうに」

「怒るも何も、由紀子はワシのことは視えんぞ?」

「視えない⁉︎巫女さんなのに」

「先代も、その先代も、ワシが視えんのじゃ」


土地神様の目はどこか寂しそうな感じがしました。先代も、その先代も視えないとはどうしてでしょう?


「ワシの血が入っておるのに」


血⁉︎ちょっと待って。今、土地神様ワシの血が入っておるのにって言ったよね。しかも、さらっと。危ない聞き逃すところだった。


「火ノ江先輩は土地神様と人間のハーフですか?」


だから、髪の色が土地神様と同じ綺麗な白色なのかな?


「知らん」

「知らんって…」


バッサリ言い切られてしまいました。ですがその後、土地神様は話を続けました。その昔、江戸時代よりもはるか昔、土地神様と火ノ江神社の神主が恋に落ちて子供ができました。そして、その子から代々、火ノ江神社を継ぎ今となります。そのことを聞いて考えられることは1つ、もしかして、土地神様の血が薄れてきたんじゃないのかな。


例えるなら、カルピスの原液と水。ここではカルピスの原液を土地神様として、水を人間としようかな。その2つを混ぜ合わせたものにもう一度、水を加えるとカルピスの味は薄くなるよね。それが、何回も続くと結果的にはカルピスじゃなくて水の味になる。それに、途中でカルピスを継ぎ足すこともなかったそうです。


こんな感じで火ノ江家は代々、後を継いできたから火ノ江家は土地神様が視えなくなってしまったのではないかと思いました。でも、髪の色は土地神様と同じ白色だから、少しは血の名残りがあるかな。


「今の由紀子も先代も、なんの力もない」

「あれ?でも、夏祭りの時、火ノ江先輩の神楽は幽霊とかを成仏させていましたけど」

「あれは、鈴に宿った付喪(つくも)神の力じゃ」


そう言えば、火ノ江先輩は神楽で、鈴を使ってたな。へぇ、あれは九十九神の力だったんだ。九十九神にもいろいろな使い方があるのね。


「そこでじゃ!」


突然、土地神様は弾んだ声で手を叩くと晴れた空みたいな爽やかな笑顔で提案してきました。


「小娘、火ノ江神社の巫女になってワシに一生を捧げてみないか?」


土地神様がおかしなことを言い出しました。

【火ノ江 由紀子(ゆきこ)


紅坂(あかさか)高校2年生

・図書委員

・長い白髪に赤色が混じった黒目

・身長167cmくらい

・キリッとした顔立ち

・つり目

・かっこいいって言葉が似合う人

・火ノ江神社の巫女さん


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