44・女優の弟
とある夜9時
9月から始まった新ドラマをリアルタイムで鬼さんと一緒に見ていました。話の内容は学園物で教師が不良が集まる問題クラスを改善していくお話。
「かっこいいな」
「おおー!」
主人公の女教師が生徒に熱い言葉を投げかけています。そして、ドラマは最終場面へと変わり、ここで、新しい登場人物が出てきました。その役は、女教師の副担任の役です。
「「綺麗な人」」
あっ、鬼さんと同時に言ってしまいました。それにしても本当に綺麗な人だな。モデルさんかな?
『今日からこのクラスの副担任になった藤島 茜だ。よろしく』
ん?この声と言い、背の高さと言い、足がプリッツみたいな細さと言い、もしかして、この人、委員長のお姉さん⁉︎そう思ってよく見てみると、まさにその通り、委員長のお姉さんでした。
「ええー!」
「うおっ!」
突然、大声を出したから鬼さんが驚いてしまいました。でも、今はそれどころじゃありません、私はすぐに電話帳を開いて委員長に電話を掛けました。ちなみに委員長とは電話番号も交換してあります。
「もしもし、委員長。夜遅くにゴメンね」
『ん?良いよ。どうしたの?』
「もしかして、委員長のお姉さんって女優さん⁉︎」
『女優じゃないよ、ただの脇やっ痛っ!何するんだよ姉さん』
電話の向こうから雑誌が落ちる音と委員長のお姉さんの怒り声が聞こえてきました。どうやら、脇役と言われそうになって委員長に雑誌を投げつけたらしい。
「委員長、大丈夫?」
『大丈夫、大丈夫!委員長なら元気にしてるよ』
「あっ、委員長のお姉さん!こんばんは」
『萌香ちゃん、委員長とは上手く行ってる?』
委員長とは?もしかして、喧嘩していないとかの話かな。
「はい、委員長にはいつもお世話になっています」
『あー、まだそこかぁ。全然、進んでないじゃないの〜』
えっ、私、お姉さんの機嫌を悪くするような事を言ってしまったのだろうか。
『萌香ちゃん、ここだけの話、委員長についてどう思ってるの?』
「えーと」
『大丈夫、今、委員長には席を外してもらってるからさ。ねっ、聞かせて』
そう言われてもなぁ。私が携帯電話を片手に唸っていると鬼さんの耳が私のすぐそばまで来ていました。会話の内容が気になるのかな。
「委員長とは友達です」
『友達だけ?』
えっ、なんだろうその疑問系の終わり方は。
「はい、友達ですよ」
『じゃぁ、萌香ちゃんの好きな人のタイプは何かな』
「そうですねー」
今まで考えたこと無いから、どうやって答えれば良いのか分からないや。
『宮川さんっ!ゴメン姉さんが変なこと言わなかった?』
お、どうやら委員長と変わったようです。それに、電話越しだけど息が荒かった。今まで何をしていたのかな
「ううん、なんにも」
『本当?』
「強いて言えば、委員長の事をどう思ってるのって聞かれたかな」
『僕のこと?』
委員長はだいぶ驚いているようなので、暫く沈黙の間がありました。
「友達って答えたから変な答え方はしてないからね。安心して」
『そうだね。ありがとう』
あ、今更だけど通話料金のこと忘れてた。でも、委員長と私の携帯の機種は同じだから通話し放題だね。
「それじゃぁ、お休み」
『お休み』
そう言って電話を切りました。いつの間にかドラマは終わり掛けていたのがショックでした。そうだ、このドラマには委員長のお姉さんの名前が載っているはずだから最後のテロップで委員長のお姉さんが演じるキャラを見つければ、委員長の名字が分かるはず、そう思ってテロップを見ると藤島 茜という名前の隣に「水無月 奈々」と、表示してありました。そうか、委員長の名字は水無月なのか!
* * *
次の日
委員長に委員長の名字は水無月かって聞いたら、違うと言われました。どうやら、委員長のお姉さんは水無月 奈々という芸名で活動しているらしい
そうか、委員長の名字は違ったのか。
考えていた事と違ってショックだけど、ここは気持ちを切り替えて、1日を始めましょうか。




