43・いつもの日常に戻って来ました
夏休み明けのテストの教科数は、現代文と数学と日本史と世界史の4つ。今の所自分の中で、テストの出来は世界史を除いて自信を持って良いと言えます。特に現代文には、かなりの自信があるかな。
そして、今日の帰りのHR中、早速、担任から現代文と世界史のテストが返却されました。1年の現代文と世界史の教科担任の仕事の早さは紅坂高校で有名ですよ。でも、仕事が早い理由は、ただ単にめんどくさいことは先に済ませちゃおうというポリシーが2人にあるからと言う理由。
でもさー、よりにもよってなんで一番自信のない世界史が早く返却されるのかな。
そして、一番自信のある現代文の点数は92点。クラスで5位以内に入りました!やったね。で、お次は一番自信のない問題の世界史、テスト用紙なんて見たくないよと思いつつ返却されたテストを恐る恐るみると、名前の横に58点という数字を発見。うーん、微妙な点数だな。
「もえちゃん、見て!」
「あっ、現代文の点数が」
「うん!56点、赤点じゃないよ」
ゆいちゃんはキラキラとした笑顔でテスト用紙を高らかに掲げます。ついでに今回の現代文の平均点は60点。ちらりとゆいちゃんの視線が私の現代文のテスト用紙に向けられました。
「9…2点だと!」
「目標は高く持つべしってね」
目標は高く持つと言って全教科90点以上を目指したけど、やっぱり苦手な世界史はダメだった。日本史は得意だけど世界史が悪いってアンバランスだよね。
ドヨドヨッ!
席の後ろの方でどよめきが聞こえました。ゆいちゃんと一緒に後ろを振り返ると、委員長の席の周りに人集りが出来てしました。もしかして、委員長の点数が良かったからみんな騒いでいるのかな。どうやら、その考えは当たりで委員長の点数は現代文が97点で世界史が98点。どこをどう間違えたらそんな点数になったのって聞きたいよ。
「委員長、バスケ部でレギュラーだし、おまけに頭良いよね」
「委員長ってレギュラーだったの⁉︎」
「そうだよ?でも、今年の夏のインターハイの結果は微妙だったけど」
委員長がバスケ部のレギュラーだって事、ゆいちゃんに教えてもらうまでは知らなかった。うわー、スポーツも出来て勉強も出来るだなんて凄いな。流石、委員長だ。
「お前ら、よーく聞け」
黒板の前で担任が大声で叫びました。一体なんの事かと驚いたクラス全員は一斉に担任の方へと目を向けます。そして、大きく深呼吸して。
「テストが人生の全てじゃない。大事なのはここだ!」
担任が自分の胸を左拳で叩き、ドヤ顔で名言っぽい事を言いました。おぉ、背景に大波が見えるのは気のせいかな。ザッパーン。
「先生〜。今の録画しましたからね」
「そうか、俺の名言が残るのか」
うんうんと感慨深く唸る担任を横目に録画した張本人、委員長の友達の水戸部さんが、裏がありそうな笑顔で笑ってしまいた。あの録画した物は一体、何に使うのかな?なんだか、考えただけで恐ろしくなってきたかも。
「それと、そのテスト用紙は明日の授業で使うらしいから忘れずに持って来いよ」
「「「「はーい」」」」
「それじゃぁ、解散」
* * *
いつも、ゆいちゃんと一緒に帰っているけど、今日は学校が終わったすぐに塾があるから、学校に親さんが迎えに来て、そのまま塾へ行ってしまいました。そして、私は9月入って初めての我楽多屋でバイトです。
我楽多屋の裏口から入って、制服である腰巻のエプロンを付けた後、店内へ向かいます。すると、我楽多屋の中にはいつも以上にお客様で賑わっていました。ちなみに、妖怪とか幽霊ではなく人間のお客様ですよ。
「今日は混んでますね」
「なんでだろう」
「蓮が作ったアンティークが良かったから?」
「そうかもしれないね」
「いやー、それは違うんじゃないかな」
あっ、いつもの常連さんに呼ばれました。3人の奥様からコーヒーとカプチーノとカフェラテ。それから抹茶のロールケーキと3種のマカロンセットとはちみつレモンのシフォンケーキのご注文を受け、店の奥から持っていきます。
「お待たせしました」
3人の奥様にご注文された品を持って配り、今度はレジ打ちです。その次はアンティークの補充っと。ほんとに今日は忙しいな。
「ありがとうございましたー」
最後のお客様をお見送りして、今日のバイトは終わりです。はぁ、なんだかこの感じだと夏休みボケが一気に解消されるな。
「萌香ちゃん、ご苦労様。今日は忙しかったね」
「確かに、夏休みの時よりも人が入っていて驚きましたよ。私が来る前もこんな感じだっんですか?」
「いいや、萌香ちゃんが来る前も夏休みと同じくらいの人数しか来なかったよ」
「めっずらしぃー」
まぁ、我楽多屋が繁盛することは良い事に違いないから、この忙しさはありがたく思わなくちゃいけないね。




