42・新学期の始まり
9月の初日
目覚ましの音と暑苦しさで意識がうっすらと覚醒しました。そうだ、今日から新学期が始まるんだった。なんだか、まだ夏休み気分で新学期に入った実感湧かないな。
目覚ましを止めて、寝ぼけた目を開くとそこには、鬼さんの寝顔が間近にありました。間近と言っても口と口が、ってうわぁ!朝から何ですかこの展開は!一気に目が覚めたよ。それに、顔が熱くなって、心臓が痛い。あまりの近さに驚いて咄嗟に離れようとしたけど、少ししか動けない。
えー、それはなぜかと言いいますと、簡単に言ってしまえば、鬼さんが私を抱き枕にしていたんですよね。しかも、私の脚と鬼さんの長い脚が絡んでるから余計に動けない。だから暑苦しかったのか、成る程ね。
じゃなくて、どうするんだ私。このままだと起きられないし、まだドキドキで心臓が痛い。もう、朝から刺激的だなおいっ!とりあえず、まずは深呼吸で落ち着こう。
スーハー、スーハー、スー
あれ、ちょっと待てよ。確か昨日、鬼さんは、私が愛用している猫型座布団を枕にして床で寝てたはず。それが、朝になったら私のベッドっておかしくない?それにいつの間に私のベッドに入って来たんだ?
あっ、そう言えば、前にも鬼さんに抱き枕にされたことあったよね。あの時は友達のゆいちゃんと一緒にホラー映画を見に行った日の朝だったような気がする。その時はなぜか唇をなぞられ。って、なぜ今そこで思い出したのだ私。うわぁ、また顔に熱が上がっていくのが分かるよ。あの思い出は思い出すたびに顔が熱くなるから、思い出さないようにしていたのに、何と言うミス。
「うわぁ〜」
当分は、熱が冷めないだろうな。あーぁ、やっちゃった。それから暫くまだ、ドキドキが鳴り止まない心臓をなんとか落ち着かせ、もう一度、鬼さんの抱き枕から抜け出そうとチャレンジしてみました。
まずは脚から。なんだこれ、どうなってるの?ただ、脚が絡んでいるわけではないらしく、とても複雑です。いや、抜け出そうと、もがくたびに脚が余計に絡まってしまい、さらに私の脚を鬼さんが逃がさないように力を込めている様にも感じ取れます。まぁ、これは私の思い過ごしだと思うけど。そんなこんなで、絡まった脚から抜け出そうとするのは保留にしておき、次は鬼さんが私の背中に回している腕をなんとかしなければなりません。
「よいしょっと」
おぉ、これは簡単にできま
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せんでした。
なんで?ただ鬼さんの腕を動かせば良いだけの話でしょ。最初はそんな風に思っていたけど、意外にも鬼さんが私を抱きしめる力が強くて、非力な私の力では無理。
もう、なんでこうなるの。私は出られない怒りの矛先を鬼さんに当てることを決めました。まずは、人差し指を鬼さんのほっぺに、ぷすっと指します。うわ、ほっぺ柔らかいな。そんなことを思いつつ、私は指したままの指を上にあげたり下にさげたり、ぐるっと回って真ん中寄せっ!
「ふふっ」
されるがままの鬼さんを見ていたら、なんだか面白くて笑っちゃいました。それに、今までに見たことのない変顔。
「んっ」
おおっと、鬼さんから声が聞こえてきました。一瞬、起きたかなって思ったけど、どうやら起きていなかったみたい。危ない、危ない、危うく鬼さんが目覚めるところだった。というか、これだけ遊べば普通は起きるよね?それでも起きないから、これは熟睡だ。それなら、油性ペンで落書きしちゃおうかな。でも、油性ペンを取りに行くにはここをから抜け出さないといけないから、どの道ダメか。
「起きてよー」
鬼さんの耳元で小声で言ってみました。でも、熟睡している鬼さんには聞こえてないだろうな。あーぁ、かれこれ目覚ましが鳴ってから15分は過ぎたよ。新学期早々、遅刻は嫌だよね。
「ん。萌…香?」
鬼さんとは少し離れていると言っても、間に握りこぶしが1つ分だけある感じだから、ほぼ近い。うぅ、鬼さんの吐息がくすぐったい。あっ、でも今が抜け出せれるチャンスじゃない?ちょうど、鬼さんの抱きしめる力が弱くなったし、私の脚と絡まる力も緩くなりました。
私は、鬼さんの言葉をスルーして起き上がりました。やった、やっと出られましたよ教官!って、私は誰に向かってやっているんだよ。自分でボケツッコミをしながら起きます。
「ふぁーぁ」
カーテンを開け、朝日を浴びて今日も一日、頑張ろうとエネルギーチャージ。さて、朝ごはんの用意っと。
「今、話し掛けた?」
寝ぼけながら、鬼さんは質問して来ますが、鬼さんに捕まっていた分の時間を埋め直すため急いで朝ごはんの用意に取り掛かります。聞こえないフリ、聞こえないフリ〜。
* * *
始業式が始まって簡潔に終わり、いつも通りの授業をした後、只今、全クラスでLHR中。その内容は、後期の役員決めだった。
「やっぱり、後期のクラス委員長は委員長でいいでしょー!」
委員長の友達の水戸部さんが委員長を激しく推薦しています。それと、『委員長でいいでしょー』って言うセリフ、あれはギャグかな?あまりの寒さに、クラス全員が冷めた目で見下ろしているんだけど。
「水戸部、この状況をなんとかしろ」
「すんません」
担任にまで、言われちゃったよ。それで、結局、クラス委員長は前と変わらず委員長に決定しました。その他の役職は、希望制になり、私は図書委員も掃除委員も、体育委員も全てやらないことに決めました。本当はやってみたいけど、委員会は放課後に集まりがあったりでバイトに支障が来たすかもしれないから。と言う理由でパスです。
一方、私の友達のゆいちゃんは図書委員になり、あやのちゃんは体育委員になりました。でも、体育委員って後期が一番忙しいんだよ。だって、後期には体育祭があったりするからね。で、ほのかちゃんとめいちゃんは部活で忙しいからと言う理由で私と同じくパス。でも
「私も手伝うからね」
「もえちゃんありがとう」
「もえかちゃんありがとう」
友達がやっているなら出来る限り手伝うよ。
「あたしも手伝うから!忘れるなよ」
「私もだからね」
ほのかちゃんとめいちゃんも手伝ってくれるそうです。それに、後期は体育祭や文化祭や修学旅行とか、行事が詰まってるんだよね。楽しみだなぁ。
「よし、決まったな。それじゃぁ、明日のために今日はしっかりと勉強しとけよ」
担任の言葉で思い出した。そう言えば、明日は夏休み明けの大きなテストがあったんだ。でも、少し自信はあるな。だって夏休みの間、毎日こつこつと勉強して来たからね。
「もえちゃん、今回は自信あるからね!」
「おっ、やる気だね」
ゆいちゃんも自信満々です。自信があることは良いことだよ。私も明日は本気で頑張るか。
目指せ、全教科90点以上!えいえいおー!




