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40・働き者にはメイドが来る

委員長×キキーモラのお話

後書きに新キャラの容姿設定とか載せてあります

夏休みが終わるまで、残りわずかとなった今日この頃。僕が部活の練習終わりから家に帰ってくる頃には時刻は夜の11時を少し過ぎていた。


「っはぁー」


今、両親はロンドンに旅行中で姉さんはドラマの撮影だから、今、家には誰もいない。こういう日はたまにある。というか、たまにじゃなくて、両親が旅行に行っている間はこんな日が続くことがある。そんなことを思いつつ、僕は、家に帰ってくるなりバスケの服やらシューズを放り投げ、汗だくの体でソファに突っ伏した。風呂に入らないといけないことは分かってるけど、その前に一言、言わせてくれ。


「練習、鬼畜すぎるだろ!」


今年のインターハイで、火ノ江高校は良くもなく悪くもない結果を出した。つまり、微妙な結果。そのためか、というか、当たり前だけど厳しさと練習量が鬼のようで、しかも部長はバスケ部には女子マネージャーがいないとか言い始めて、その怒りの矛先がなぜが僕に当たり、余計に疲れた。差別だ、これはただの部長の八つ当たりだろ。


「ふっ!」


疲れた体を無理やり起こし、リビングの電気を付けた時、ポケットに入れた携帯にメールの着信音が鳴った。送り主は姉さんからだ。多分、雑用的な内容だろうな。内容が大体、予想出来たところで一応、メールを開いてみる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【委員長へ】

今日はドラマの撮影があるから、帰りが遅くなるね。夕飯はドラマの撮影が忙しくて食べれないから家で食べるよ。だから、夜食作っといて〜。


ついでに、夜食はチャーハンとたまごサンドとレバニラ炒めだったら嬉しいな〜。あとは、も食べたいかも。あっ、もちろんたまごサンドにはたらこソース塗っといてね。これ常識だよん


追記、洗濯と私の部屋の掃除もよろしくぅ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


チャーハンにたまごサンド、レバニラ炒め、って炭水化物ばっかりだな、おいっ!そんな夜中に炭水化物ばっかり食べて良いのか?いくら食べたいからって、少しは時間を考えろよ。太るぞ!それに、なんだ、たまごサンドにたらこソースは常識だよんって。そりぁ、いつも姉さんはたまごサンドにたらこソースを塗るのは知ってるけど、流石に、常識じゃぁなくて、それはただの姉さんの好みだからな!


「はぁ」


僕は姉さんのマネージャーか何かか?最近、は水戸部や姉さんから主婦だなとか言われるし、もうなんだ。


「ギブアップ」


練習で疲れた上に、料理や洗濯物と姉さん部屋の掃除。しかも、それを姉さんが帰って来るまでにやれって、部活の練習よりも鬼畜なんじゃないか。いっそのこと、やらないでいようか。あーでも、後からの姉さんの機嫌が悪くなるのは目に見えてるか。そんな事を考えながら僕は、またソファに横になる。


機嫌がどうのこうのよりも、今はただ、疲れたんだ、寝かしてくれ。やることは後でやるから、今だけは眠……い。







* * *







ザー

台所から聞こえる水の音に目が覚めた。どうやら、寝ていたようだ。しかも、部屋の電気がいつの間には消えている。まだ、ぼやける頭で台所の方を見ると、誰かが台所で食器を洗っていた。誰かと言っても姉さんだと思うけど。


ん?待てよ。姉さんが、食器を洗う⁉︎そんな事は天地がひっくり返ってもあり得ないぞ。だってあの人は、皿を洗うことすら出来ないし、その前に手が荒れるとか言ってやった試しがない。もしや、心を入れ替えて真人間になったとか。いや、それはそれで良いことなんだろうけど、いつもの姉さんと違って反対に怖いな。


「姉さん?」


恐る恐る言った僕の呼び掛けに台所にいる影が反応した。でも、声はない。泥棒か、いや泥棒だったら食器洗いはしないはず、じゃぁ誰だ?僕は素早く部屋の電気を付けて、台所の方を見る。


「あっ」

「君は?」


台所にいたのは、健康的な肌色で大人びた顔立ちに、腰まである長い薄茶の髪と綺麗な黄色の瞳。濃紺ワンピースに白いエプロンを組み合わせたエプロンドレスに同じく白いフリルが付いたカチューシャと白いニーハイで、どこからどう見てもメイドオーラが出ている女の子。背丈は宮川さんと同じくらいかな。


「えーと」


それと、この子は人じゃないことは確か。その理由は、エルフのように耳が横に尖っているからだ。見たところ襲って来ることもないし安全かな。というか、プルプルと震えてる。よしっ!まずは、話してみよう。


「君は誰かな?」


その瞬間、女の子は大きな黄色の瞳から大粒の涙をこぼし、スライディング土下座しながら謝ってきた。


「すいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいません〜」

「ちょっ!顔上げて、君が謝る要素はないから」


僕は何かやらかしたか!いや、普通に話し掛けただけだよね?おぉ、どうしよう。泣いている女の子はまだ、土下座したままで、僕はその隣でオロオロするばかり。まず、ここは落ち着かせるべきかな。でも、どうやって声を掛ければ良いのか分からない。えーと、あぁ、もうそのままで良いか。


「立てるかな?とりあえず、イスに座ろうか」

「うぅっ」


よかった、差し伸べた手を取ってくれた。僕は、女の子をイスに座らせて、冷蔵庫から麦茶を出した。ついでに、涙を拭くタオルも渡して、女の子が座る向かいのイスに座る。


「どうぞ」

「いいのでずが」

「うん、いいよ。よかったらお代わりもあるからね」


女の子は頷くと、コップに入った麦茶を一気飲みして、ごしごしと強く顔を拭く。ようやく女の子が落ち着いたところで、僕は改めて聞いてみる。


「君は人じゃないよね。えーと何者かな?」

「うぅっ」

「あっ、言えないなら無理に言わなくてもいいからね」


また、泣きそうになる女の子。もしかして、何か複雑な事情があるのか。それだったら、無理に聞くのはダメだ。


「あの」

「はいっ!」


突然、声を掛けられたから声が裏返った。女の子の声は少し高め、でも、今は泣いた後だから声が濁っていた。


「勝手に家に押し入ってすいませんでしたっ!」


また、土下座しそうになったから、慌てて止める。確かに勝手に入るのは良くないけど、この様子からだと分け有りっぽそうだな。まずは、何の妖怪か聞いてみよう。


「いいよ」

「本当ですか!」

「うん。あっ、そうだ。君は何の妖怪かな?」

「私はキキーモラです」


キキーモラ?どこかで聞いたことのある名前だな。確か、日本の妖怪じゃなくて、海外系の奴だった気がする。キキーモラ、キキーモラ、うーん出てこないな。


「みんなからはキィと呼ばれています。ですので、キィとお呼びください」

「分かったよ。ん?みんなって言うことは他にも仲間がいるの?」

「はい、実は」


そこからの話はこうだった。

キィはもともと、ベリトと言う悪魔に仕えていたメイドだったらしい。でも、数週間前、そのベリトが、とあるメイドのミスを見て、執事やメイド、コックの全員クビにした。

そして、キィは次の就職先を探すため各国に訪れたが就職先は見つからず、フラフラと日本に来たところ。僕の家の掃除や洗濯物や昼間に姉さんが食べた後、そのまま台所のシンクに置いてあった皿や箸を洗っていた時に僕と会った。


「でも、クビになって良かったと思います」

「えっ、何で?」

「ベリト様はメイドや執事の扱いが酷くて、気に入らないことがあるとすぐに、皿を投げつけたり、暴言は当たり前だったのです」

「そんなところ、早く辞めれば良かったのに」

「辞めたかったですけど。今の時代、仕事を辞めても次の就職先が無い可能性が高くて」

「他のメイド達も仕事先に困っているの?」

「いいえ、私以外は全員、決まったそうです」

「仕事探しか」

「仕事探しに困っているのは事実ですが、本当に辞めて良かったと思ってます」


キィの目は真剣だった。それ程までに、前の職場が大変だったんだろうな。


「でも、何で僕の家に来たの?」


他の家とあるからさ。もしかして、偶然とか、気まぐれとかで来たのかな。多分、そうだと思うけど。


「キキーモラは働き者の所に行くのです!」


背筋を伸ばし笑顔でビシッと敬礼してみせる。そうか、働き者か。確かに庭の草むしりとか掃除や炊事、買い出しとかやったな。あっ、そうだ、思い出した。キキーモラってロシアに伝わる、働き者に味方の謎の多い幻獣だったはず。姉さんが出た映画にキキーモラが出て、気になったから何となく調べた事があったな。


「仕事探しで、見つからない。うーん」


見ず知らずの土地で彷徨いながら、仕事を探すのは、厳しいものがある。せめて、僕に出来ることは何かないか。あっそうだ。


「仕事が見つかるまで、僕の家で住みなよ」

「ふぇっ!」


変な声が聞こえた。どうやら、驚いたらしい。でも、良い案だと思う。彷徨うよりも住処を決めて探した方が、帰る場所があって安心するんじゃないかな。それに、事情を聞いてこのまま、放っておくのは人としてどうかも思う。


「僕はキィが視えるけど、姉さんは視えないんだ。それでも、良いなら家にどうかな?」

「うぁぁあぁああ」

「ちょっ、大丈夫⁉︎」


また、大粒の涙をこぼしたから、慌ててタオルを渡した。この家住むのは嫌だったかな。余計なことをしたとか。


「良いのですか?」

「えっ、もちろん」

「タダで住ませてもらうのはキキーモラの名に反します。なので、掃除や炊事はお任せください!」

「それなら、僕も一緒にやるからね」

「はい」


涙を拭いて、大きく深呼吸。それから笑顔になった。さっきの涙は嬉し泣きだったみたい。焦った。


「改めて、よろしくお願いします!」

「こちらこそ、よろしく」

「では、ご主人様」

「ゴホッ!ゴホッゴホッ」

「だっ、大丈夫ですか⁉︎」


ご、ご主人様って、しかもメイド服。予想してなかったから、()せてしまった。なんだか、恥ずかしいぞ。というか、僕にも名前がちゃんとあるんだけど。


「あの、ご……ご主人様じゃなくて名前で呼んでもらっても良いかな?」

「それは、ダメです。ご主人様はご主人様なんです!」

「えーと」

「あっ、ご主人様ではなくて、『おにいちゃん』の方がよろしかったでしょうか」


ちょっと待て、なぜそっちに行ったー!

やめてくれ、ご主人様も嫌だけど、おにいちゃんの方がもっと恥ずかしい。何だ、僕には名前は言わせてくれないのか。このまま、他の案を出したら、もっと変な方向に行きそうだから、ここでストップ。


「あだ名とかは」

「ダメですよ!ご主人様かおにいちゃん、それとも」

「ストップ、ストップ。ご、ご主人様で良いから」

「かしこまりました。ご主人様」


恥っずかしいー!うわー、今すぐやめてほしい。って言いたいけど、キィは嬉しそうだから、言いにくい。それと、決して僕はそんな趣味はないからな。メイド喫茶に行ってご主人様とか言われた経験なんてないし、おにいちゃんもない。あっでも、近所の子供達からは言われた事があったな。


「あっ、ご主人様。まだお風呂に入っていないのですか」

「えっ、あぁ眠かったから」

「お風呂の用意はお任せよ!それではお背中を流しますね」

「えっ!」

「ほらほら、こんなに汗を含んだ服で寝ては体に悪いですよ。ささ、お風呂にレッツゴーです」


待て待て待て。それは、ダメだろ。これはダメだ。なんとか阻止せねば。


「キィ、風呂は自分で入るから」

「ダメですか?」


身長的に、僕よりもキィの方が小さく、キィは目線を合わせるために上を向く、そうなると、自然に上目遣いになる。しかも涙目で断りにくい。でも、ここは、はっきりと言わないと。


「うん、ごめんね。その代わりと言ってはなんだけど、実は姉さんから頼まれ事があって」

「はい、それはなんでしょうか、ご主人様」

「姉さんから夜食にチャーハンとレバニラ炒めとたまごサンドを作ってくれっていうメールが来て」

「成る程、了解しました!」

「頼めるかな」

「もちろんです。ご主人様」


ご主人様って言われるのは恥ずかしい、でも、これは慣れかな。いな、当分は慣れないな。とにかく今は風呂に入ることが先だ。


「では、作ってまいります」

「頼むね」

「あっ、でもお背中は」


キィの声が言い終わらないうちに、僕は素早く風呂へと向かった。


宮川さんも一緒に住む鬼とはこんな感じなのかな?あっ、そう言えば、視えない振りをしているんだった。そんな事を考えつつ、僕はシャワーを浴びに風呂へと入った。

【キキーモラ】


・愛称は 【キィ】

・身長は150cm

・少し大人びている顔立ち

・腰まである薄茶の髪

・綺麗な黄色の瞳 (金色に近いかな)

・性格は温厚

・得意技、土下座

・ご主人様に尽くすのがモットー


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